結婚に向いているか悩んでいるなら、自分のDNAを調べるといいかもしれません。
2月3日に『Scientific Reports』に掲載された論文では、結婚の満足度がたった1個の塩基対よって大きく支配されていることが示されました。
しかし人間の塩基対は30億個もあるのに、どうして、たった1個の差が、結婚の満足度を支配しているのでしょうか?
結婚適正を決める「愛の蛇口」遺伝子が存在すると判明
残念ながら、結婚後に幸せでいられる可能性は高くありません。
先進国の多くで全体の半数近いカップルが離婚していることからも、結婚後の満足度の維持がいかに難しいかがうかがい知れます。
一方で、一部の幸運なカップルでは、結婚後も良好な関係がたもたれ、生涯に渡って高い満足度を感じることができます。
これまで、こうした結婚後の運命は環境や経済力など、主に外部的な要因に大きく依存していると考えられてきました。
しかし近年、一夫一妻制をとることが知られているハタネズミなどの研究により、特定の遺伝子が夫婦関係の持続に大きく影響していることがわかってきました。
そこで今回、アメリカのアーカンソー大学の研究者たちは、人間の夫婦関係もハタネズミと同じく遺伝子の影響を受けていると考え、調査をおこなうことにしました。
調査対象となった遺伝子は「愛のホルモン」オキシトシンの分泌を制御する「愛の蛇口」ともいうべきCD38です。
研究者たちは被験者となった142人の新婚カップルの遺伝子を収集すると同時に、3年間にわたる夫婦関係の追跡調査をおこないました。
結果、愛の蛇口遺伝子の内部に存在するたった1塩基の差が、結婚の満足度に支配的な影響を与えていることが判明します。
次ページでは、研究によって判明した満足度の差を具体的な図で比較しています。
CC型は結婚に強い満足を感じている
結婚満足度を決めている要因は何か?
その手掛かりは「愛の蛇口」遺伝子(CD38)の内部に存在する、個人差が多く存在する塩基対にありました。
上の図のように、この特定部分がCC型である人間は、他の型(AC・AA)に比べて結婚後の満足度が新婚の時点から既に高く、三年後の段階でも優位を保っていました。
またCC型は他の型よりもパートナーに対する感謝の念や信頼度が高く、さらにパートナーの行いに対してより寛容的であることが、アンケート調査でも判明します。
この結果は、結婚に満足できるかどうかは、相手の地位や財産、さらには容姿などといったの個人特性を超えた、自分自身の遺伝的な素質が重要であることを示します。
また興味深いことに、上の図からは、遺伝型による影響が、女性よりも男性のほうが大きいことが読み取れます。
「愛の蛇口」は見えざる手からの調節を受けている
今回の研究により、結婚適正の判別が事前におこなえるようになりました。
CC型の遺伝子を持っている人間は他の型(AC・AA)の人間に比べて「愛の蛇口」遺伝子(CD38)のはたらきが異なり、オキシトシンを通して、より大きな愛情を感じられるようになっていたからです。
また他の愛の蛇口遺伝子にかかわる研究では、CC型の遺伝子を持つ若者は、他の型よりも仲間からの人気が高いことが示されているほか、CC型は疎外感を感じにくく自殺願望が低いことが示されています。
これらの結果は、CC型は人間関係において幅広いプラスの影響を与えることを示します。
さらに興味深い点として、CC型が存在する塩基対が、タンパク質の設計図が記されていないイントロン部分にあることがあげられます。
この事実は、愛の蛇口遺伝子のはたらきが他の要因から影響を受けていることを示します。
研究者たちは今後、背後に潜むこの「見えざる手」のメカニズムを解明していくとのこと。
現実と同様に、遺伝子の世界でも愛は複雑な仕組みで動いているようです。
参考文献
Study suggests link between DNA and marriage satisfaction in newlyweds
元論文
CD38 is associated with bonding-relevant cognitions and relationship satisfaction over the first 3 years of marriage
提供元・ナゾロジー
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