目次

  1. カラスは「危険人物」の顔を記憶できる
  2. カラスは危険人物の情報を仲間に拡散する
カラスは「危険人物」の顔を覚えて、仲間に拡散できるという研究
(画像=Credit: jp.depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

新型コロナウイルスの影響で繁華街のゴミが減り、人間の居住区にも野生動物が出没し始めています。国によっては、キツネやヤギが都会をうろついている地域もあるようです。

日本でも、ひと気のなくなった市街地にカラスが押し寄せつつあります。知能が高いカラスは、他の動物と違って厄介です。

コロナの終息後、人が街に戻り始めたら、多くの動物たちは大人しく元の場所に帰ってくれるでしょうが、カラスはそうはいきません。

米・ワシントン大学が2011年に発表した研究によると、カラスは攻撃をしてきた人の顔を記憶して、仲間に伝え広げることができるのです。

さらに同研究では、カラスの恐るべき執念深さが明らかにされています。

カラスは「危険人物」の顔を記憶できる

この研究は、野生のカラスを5年間にわたり追跡調査したものです。

研究チームは、シアトル近郊の5ヶ所でそれぞれ、野生のカラスを7〜15羽ほど捕獲し、一時的に檻に入れてバンドで縛り、それから野生に帰しました。カラスを捕獲する際、研究員は人の顔をかたどったゴムマスクを装着しています。

カラスが檻の中で捕獲されている間、仲間はその周囲を飛び回って、警戒音のような鳴き声を発していました。

カラスは「危険人物」の顔を覚えて、仲間に拡散できるという研究
(画像=実験のイメージ/Credit: John Marzluff、『ナゾロジー』より引用)

その後、ゴムマスクに対するカラスの反応をテストした結果、最初の2週間、マスクをつけた研究員は、5ヶ所で遭遇した約26%のカラスに敵意を抱かれ、攻撃対象にされたのです。

マスクを別の顔に取り替えると、カラスの攻撃は急に止み、まったく反応しなくなりました。

これはカラスが、捕獲した人の顔を覚えていることを証明しています。

カラスは危険人物の情報を仲間に拡散する

調査期間が長くなるにつれて、マスクに攻撃を仕掛けるカラスの数は増えていきました。

実験開始から1年後には約30%、3年後には約66%のカラスが攻撃に参加したのです。その割合は、時間が経つごとに増え続けています。

また興味深いことに、カラスの敵意は、マスクを定期的に見なくても持続していました。実験では、マスクを1年ほど見せていなかったにもかかわらず、そのマスクに遭遇した途端、カラスたちは即座に攻撃を開始したのです。

これはカラスが、危険人物の情報を仲間に拡散できること、および驚異的な長期記憶を持つことを意味します。

カラスは「危険人物」の顔を覚えて、仲間に拡散できるという研究
(画像=Credit: jp.depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

さらにチームは、捕獲時の後に生まれたカラスたちが、マスクにどう反応するかも調べました。

結果、若いカラスたちは、親や仲間たちがマスクに攻撃するのを見て、自らもマスクに敵意を抱くようになったのです。その傾向は、親鳥と離れて自立した後でも継続していました。

一族の恨みは後の世代に綿々と受け継がれていたのです。

どうやら市街地のカラス対策は、穏便に行ったほうが良さそうです。

研究は、2011年6月29日付けで「Proceedings of the Royal Society B」に発表されたものです。

提供元・ナゾロジー

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