私たちはよく、赤ちゃんに話しかける際、声色やピッチを変えてしゃべります。

「ベビートーク」と呼ばれるこの発話法には、乳児の注意を引き、言語能力の発達を促すというれっきとした効果があります。しかし、この行動は言語能力に優れた人間に特有のものと思われていました。

ところが、米・スミソニアン熱帯研究所(STRI)の最新研究により、コウモリも「ベビートーク」を使って乳児に接することが判明したのです。

また調査の結果、母親と父親で、乳児に対する話し方が大きく違っていました。

コウモリに「ベビートーク」が確認されたのはこれが初めてのことです。

目次

  1. 「ベビートーク」を使うのは母コウモリだけだった
  2. 父親は「オトナトーク」を担当していた
ごはんでちゅよ〜。コウモリも赤ちゃんとの会話に「ベビートーク」を使うことが判明(アメリカ)
(画像=オオシマサシオコウモリ、母親(上)にしがみつく子ども(下)/Credit: Michael Stifter、『ナゾロジー』より引用)

「ベビートーク」を使うのは母コウモリだけだった

調査対象となったのは、中南米の熱帯雨林に生息する「オオシマサシオコウモリ(Saccopteryx bilineata)」です。

このコウモリは、幅広い発声レパートリーを持つことで知られ、求愛やテリトリーの防衛など、TPOに応じて決まった発話を使い分けます。

ごはんでちゅよ〜。コウモリも赤ちゃんとの会話に「ベビートーク」を使うことが判明(アメリカ)
(画像=オオシマサシオコウモリの生息域/Credit: en.wikipedia、『ナゾロジー』より引用)

オオシマサシオコウモリの乳児は、生後3ヶ月の間に発声の練習を始めるのですが、今回の調査では、父親と母親で、乳児の発声に対する反応が違うことが明らかになりました。

録音から分析してみると、母親だけが、乳児の発話に対し、普段の会話では使わない音で返答していたのです。

これは、まだ意味をなさない乳児の発話に対し、同じレベルでフィードバックすることで会話の練習相手になっていることを示唆します。

明らかに成熟した仲間と話すときとは違い、声色やピッチを変えた「ベビートーク」を使っていたのです。

父親は「オトナトーク」を担当していた

ごはんでちゅよ〜。コウモリも赤ちゃんとの会話に「ベビートーク」を使うことが判明(アメリカ)
(画像=オオシマサシオコウモリ/Credit: en.wikipedia、『ナゾロジー』より引用)

一方の父親は、乳児の発話に対し、仲間内で使うのと同じ音、いわゆる「オトナトーク」で返答していました。

一見、愛想のない頑固パパにも思えますが、研究主任のMirjam Knörnschild氏によると、「ちゃんと子どもの言語発達を促す役割を持っている」そうです。

というのも、乳児のアイソレーションコーリング(親を呼ぶ時の鳴き声)は、音響的に同じコロニーに属する成熟したオスの声に近似していました。「おそらく、父親の発話を真似することで、集団に共通する社会的な発話を獲得している」と同氏は指摘します。

この発話を獲得するおかげで、仲間と他のコロニーとを識別できるようになるのでしょう。

人間以外の動物でも、親子間のコミュニケーションが発話の成長に大きく関わっているのかもしれません。

研究の詳細は、8月14日付けで「Frontiers in Ecology and Evolution」に掲載されました。

Pup Directed Vocalizations of Adult Females and Males in a Vocal Learning Bat

提供元・ナゾロジー

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