近年の研究により、コーヒーを飲むことで多くの健康効果を得られることが示されています。

コーヒーを飲むことで脳卒中・心臓病による死亡リスクを低減させるだけでなく、肥満の解消、糖尿病の予防、胆石のリスク低下など多くの健康効果が得られると知られています。

そして今回、オーストラリアの研究者たちによって、コーヒーと肝臓病の関係が調べられました。

結果はコーヒーの健康効果をさらに増やすものになったとのこと。

かつてデカフェの名のもとにコーヒーを飲まないほうが健康にいいと言われていた時代は過ぎ去ろうとしているのかもしれません。

目次

  1. 1日4杯のコーヒーが肝がんでの死亡リスクを下げる
  2. コーヒーは脂肪肝から肝硬変への変化を妨害する
  3. 肝臓に自信がないならコーヒーを飲もう

1日4杯のコーヒーが肝がんでの死亡リスクを下げる

「1日4杯のコーヒー」は肝がんによる死亡リスクを70%少なくすると判明
4杯のコーヒーが肝がんの死亡リスクを大幅に下げる/Credit:depositphotos(画像=『ナゾロジー』より引用)

コーヒーが肝がんに効くかもしれないという報告は、日本の研究をはじめいくつかなされていました。

そこでオースティン病院に勤めるPaul Gow氏らをはじめとした研究者たちは、コーヒーの摂取と肝がんにかかわる16万人のコホートデータ(白人25%、アフリカ系アメリカ人16%、アジア人30%、先住民7%、ヒスパニック系22%)を分析しました。

その結果、1日に2〜3杯のコーヒーを飲むと、人が病気を発症するリスクを38%、病気で亡くなるリスクを46%減らすことができると判明。

さらに1日あたりの消費量を4杯以上にすると、リスクが41%減少し、死亡する可能性が71%少なくなることがわかりました。

しかし、いったいどのようにして、コーヒーは肝がんによる死者を減らしていたのでしょうか?

コーヒーは脂肪肝から肝硬変への変化を妨害する

「1日4杯のコーヒー」は肝がんによる死亡リスクを70%少なくすると判明
正常肝➡脂肪肝➡脂肪肝炎➡肝硬変➡肝がん➡死亡と変化していくなかで、コーヒーは脂肪肝と脂肪肝炎になりにくくする/Credit:しもやま内科(画像=『ナゾロジー』より引用)

コーヒーが肝がんを減らす第一の理由として考えられるのは、コーヒーに多く含まれている、クロロゲン酸をはじめとする多数の抗酸化物質です。

マウスを用いた実験では、これらの抗酸化物質が肝臓のがん化を抑制する方向に働いていることが示されました。

第二の理由としては、コーヒーの持つ抗肥満作用と糖尿病中和作用があげられます。

コーヒーにはインスリンに対する細胞の感受性を高められることが知られており、コーヒーを多く摂取することで、脂肪肝が解消され、肝臓の再生能力が回復し、肝硬変になりにくくなります。

第三の理由としては、コーヒーには炎症をやわらげる効果があり、肝臓の炎症(損傷)を抑制し、肝硬変を予防することで、結果的に肝がんにかかりにくくなるとするものです。

つまりコーヒーは、上の図において、脂肪肝や脂肪肝炎になりにくくしたり、肝がんに進むのを妨害することで効果を発揮していたと考えられます。

そして肝がんの起こりにくさは、最終的な死亡率の低下に直結するでしょう。

「1日4杯のコーヒー」は肝がんによる死亡リスクを70%少なくすると判明
日本の研究では1日5杯のコーヒーが肝がん発生率を4分の1にするとの結果が出た/Credit:国立がん研究センター(画像=『ナゾロジー』より引用)

日本で行われた別の研究(こちらは日本人が対象)でも、1日5杯のコーヒー摂取が肝がんによる死亡リスクを4分の1にするとの結果が出されています。

ただし、5杯より多く飲めば飲むほど死亡リスクが減るかどうかは現状では分からないとのこと。カフェインの取り過ぎによる影響も考えなくてはならないでしょう。

またこちらの研究では、緑茶では効果がなくコーヒーだけで効果がみとめられることが述べられています。

死亡リスクを下げている原因はカフェインではなく、コーヒーだけに含まれているフェノールや抗酸化物質であるようです。

肝臓に自信がないならコーヒーを飲もう

「1日4杯のコーヒー」は肝がんによる死亡リスクを70%少なくすると判明
ヨーロッパでは既にコーヒーを1日4杯飲んでいるために効果が薄いが、日本ではコーヒー効果は大きくなると考えられる/Credit:Alimentary Pharmacology and Therapeutics(画像=『ナゾロジー』より引用)

以上の結果から、コーヒーの摂取には肝がんになりくくなる効果があると示唆されました。

そのため研究では、コーヒーは簡単かつ安全にアクセス可能な公衆衛生を向上させる要因になると結論づけています。

また今回の研究では、2016年に肝がんで亡くなった120万人が毎日コーヒーを飲んでいた場合に起こる変化も示されました。

120万人が毎日2杯飲んだ場合、死者は45万人減少し、1日に4杯飲んでいた場合、72万人の死者を減らす効果があったとのこと。

さらに改善効果は特に、コーヒーを飲む習慣が少ないアジアやアフリカで特に大きくなると可能性があります。

これから毎日4,5杯のコーヒーを飲んでみるのもいいかもしれませんね。


参考文献

medicalxpress

この研究はオーストラリア、オースティン病院のPaul Gow氏らによってまとめられ、8月14日にジャーナル「Alimentary Pharmacology and Therapeutics」に掲載されています。 Estimates of the global reduction in liver disease‐related mortality with increased coffee consumption: an analysis of the Global Burden of Disease Dataset


提供元・ナゾロジー

【関連記事】
ウミウシに「セルフ斬首と胴体再生」の新行動を発見 生首から心臓まで再生できる(日本)
人間に必要な「1日の水分量」は、他の霊長類の半分だと判明! 森からの脱出に成功した要因か
深海の微生物は「自然に起こる水分解」からエネルギーを得ていた?! エイリアン発見につながる研究結果
「生体工学網膜」が失明治療に革命を起こす?
人工培養脳を「乳児の脳」まで生育することに成功