カフェインで眠気を払った後でも、難しい仕事は避けたほうがいいでしょう。

5月20日に『Journal of Experimental Psychology : Learning, Memory, and Cognition』に掲載された論文によれば、寝不足の状態でカフェインをとっても、上げられるのは単純作業の効率のみであるとのこと。

カフェインをとって元気になったと錯覚していると、大事な場面で思わぬ大失敗をしてしまうかもしれません。

目次

  1. 眠気を吹き飛ばすカフェインの効果
  2. カフェインは脳機能の一部だけを活性化する

眠気を吹き飛ばすカフェインの効果

カフェインで眠気を吹き飛ばしても単純作業の効率しか上がらない!
(画像=カフェインの効果が及ぶタスクには限りがある / Credit:Canva、『ナゾロジー』より 引用)

睡眠不足は仕事の大敵です。

これまでの研究では、人間はたった1晩寝ないだけで不注意ミスが3倍に増えることが示されています。

また、複数の手順が必要な作業が強制中断された場合の、その後のエラー率(プレイス・キーピング・エラー)も2倍に増えてしまうとのこと。

カフェインで眠気を吹き飛ばしても単純作業の効率しか上がらない!
(画像=アデノシンがアデノシン受容体に結合すると眠気が生じる / Credit:AsspSCIENCE、『ナゾロジー』より 引用)

一方で、古くからカフェインは睡眠不足に立ち向かう、心強い味方だと考えられてきました。

カフェインには脳内の眠気スイッチ(アデノシン受容体)を塞いで眠気を遮断するだけでなく、アドレナリンやドーパミンを増加させ、覚せい感や多幸感を引き起こす効果があるからです。

カフェインで眠気を吹き飛ばしても単純作業の効率しか上がらない!
(画像=カフェインはアデノシンの代わりにアデノシン受容体に結合して眠気を防ぐ / Credit:AsspSCIENCE、『ナゾロジー』より 引用)

ですが、寝不足な脳に加えられたカフェインが、現実の仕事のパフォーマンスに与える影響は詳しく調べられていませんでした。

そこでミシガン州立大学の心理学准教授キンバリー・フェン(Kimberly Fenn)氏が率いる研究チームは、1晩徹夜してもらった被験者たちにカフェインを与えて、難易度の異なる2種類の作業テストを実施しました。

もしカフェインの覚せい効果が脳機能の全方位に働くなら、作業難易度にかかわらずカフェインの効果が現れるはずです。

しかし実際に実験を行ってみると、予想とは異なる結果が出ました。

カフェインは脳機能の一部だけを活性化する

カフェインで眠気を吹き飛ばしても単純作業の効率しか上がらない!
(画像=カフェインは覚せい効果があるものの脳機能全てを回復させるわけではない / Credit:Canva、『ナゾロジー』より 引用)

寝不足な脳に対するカフェインの効果は万能なのか?

答えを探るために研究者たちは1晩徹夜してもらった被験者たちを2つのグループに別けて、一方のグループのみにカフェインを与え、作業テストの成績を比較しました。

テストは「単純作業」と、複数の手順を要する「複雑な作業」の2種類に対して行われました。

なお、複雑な作業については、途中で作業を「強制中断」された後、再び戻って完遂できるかという持続能力(プレイス・キーピング能力)も測定されました。

結果、カフェインは単純な作業の効率を上げる一方で、持続力(プレイス・キーピング)が必要な複雑な作業の効率には効果がありませんでした。

この結果は、カフェインの脳に対する効果は全方位的なものではなく、単純作業などの分野に限られることを示します。

どうやらカフェインは覚せいさせてくれるだけで、脳の働きの「質」までは手が回らないようです。

研究者たちは、カフェインで回復した気になり、心臓の手術や飛行機の操縦など複雑な作業を行うことは避けるべきだと結論しています。

参考文献
Study: Don’t count on caffeine to fight sleep deprivation

元論文
Caffeine selectively mitigates cognitive deficits caused by sleep deprivation.

提供元・ナゾロジー

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