もし自分が組んだ住宅ローンの金利が現在の金利よりも高いということがあれば借り換えたほうがいい。特に超低金利時代の現代では、住宅ローン金利が1%を下回っているから、少し前に借りたという人は検討してもいいかもしれない。
住宅ローン減税制度を利用すればローン残高の1%は控除される。驚くべきことに、住宅ローンを組んだほうが現金で買うよりもお得になるという状況だ。
住宅ローンを借り換えるとはどういうこと?
現在借りている住宅ローンと同額のお金を別の金融機関から借りて住宅ローンを返済。その後は別の金融機関への返済を開始するのが「借り換え」だ。少々分かりづらいので具体的に説明する。
Aさんは「ABC銀行」から3,000万円の住宅ローンを借りている。最近金利が下がってきたのでAさんは「XYZ銀行」に借り換えたい。この場合、借り換えは以下の流れで行われる。
- XYZ銀行からAさんに3,000万円の融資
- 融資された3,000万円でABC銀行の住宅ローンを完済する
- XYZ銀行のローンだけが残る
- 以降はXYZ銀行に返済する このように、形式上はXYZ銀行がAさんの住宅ローンを肩代わりすることで、借り換えは行われる。AさんはXYZ銀行から融資されたローンを返済していくことになるが、XYZ銀行は金利が安いので最終的な返済総額は安く抑えられるということになる。
借り換えのメリット・デメリット
住宅ローンの借り換えにはメリットもあるが、デメリットも存在する。借り換えの特性をよく理解しておこう。
メリット
・毎月の支払額を抑えられる
借り換えによって金利が下がれば毎月の支払額も抑えられる。月あたりで1万円でも2万円でも負担が減るのであれば、その金額を家族に還元することもできるだろう。何か別の目的で貯金をするのも良いだろう。
・支払総額を抑えられる
借り換えによる支払総額の差は想像以上に大きい。仮に1%の利息削減に成功すれば年間で1,000万円なら10万円、2,000万円なら20万円の利息が抑えられることになる。これが10年、20年という単位で続いていくことを考えれば支払総額は数百万円単位で変わってくるだろう。
・金利上昇リスクに備えることができる
これまでは変動金利で借りていた人は、この低金利時代に固定金利に変えてしまうのはおすすめだ。変動金利はその名の通り金利が変動するので、今は安いからといって安心していても、将来は金利が上昇してしまう可能性もある。金利が低い今だからこそ固定金利に切り替えてしまうことで将来の金利上昇の不安から開放されることになる。
デメリット
・諸経費がかかる
住宅ローンを組むときには事務手数料、保証料といった諸経費が掛かかる。借り換えをするということは住宅ローンをまた新しく組むことになるので、再度諸経費が発生することになる。
ローンの諸経費のほかにも登記を更新する必要があるのでその費用などもかかってくる。住宅ローン借り換えによるメリットが諸経費を上回ってしまえば問題無いが、そこまで効果がない借り換えをするときは注意が必要だ。
諸経費にはどのようなものがあって、いくらかかるのだろうか。
借り換えの諸経費
借り換えにかかる諸経費は借り換え時に必要になるので、手持ちで準備がないと借り換えが難しくなる可能性がある。事前に確認して用意しておこう。
- 契約書作成時の印紙税
- 保証料
- 事務手数料
- 抵当権設定費用
- 抵当権抹消費用
契約書作成時の印紙税
印紙税は契約金額によって異なる。
100万円超 500万円以下……2,000円
500万円超 1,000万円以下……1万円
1,000万円超 5,000万円以下……2万円
5,000万円超 1億円以下……6万円
保証料
返済年数によって異なる。金融機関によっては保証料なしのところもある。
・借入金100万円で、保証料を一括で支払う場合
借入期間……元利均等返済(円)/元金均等返済(円)
5年……4,579/4,305
10年……8,544/7,606
15年……1万1,981/1万208
20年……1万4,834/1万2,273
25年……1万7,257/1万3,928
30年……1万9,137/1万5,269
35年……2万612/1万6,366
(三菱UFJ銀行の場合)
事務手数料
事務手数料は金融機関によって異なる。32,400円のところもあれば「融資金額の2%に相当する金額に消費税額を加算した金額」のところもある。
抵当権設定費用
抵当権の設定は司法書士に依頼することになる。そのため、抵当権設定費用とは別に司法書士への報酬(3~10万円)が別途必要。
抵当権抹消費用
抵当権の抹消も同じく司法書士に依頼することになる。そのため、抵当権設定費用とは別に司法書士への報酬(1~2万円)が別途必要。
いつ借り換えるべきか
誰もが最適な借り換えタイミングで利息を抑えたいと考えるだろう。ここで疑問なのが、住宅ローンの借り換えタイミングはいつが最適なのかという点だ。
最高のタイミングを判断するのは難しい
変動金利と固定金利は金利変動のタイミングが異なる。そのため、変動金利が上がり始めたからと言って慌てて借り換えを申し込んだときには固定金利はすでに上昇している。最適なタイミングを図るのは難しく、待っていた結果望ましくない利率で借り換えることになるケースもある。
借り換えによってメリットがあると考えたのであれば、そのタイミングで検討した方が無難だろう。
毎月の支出を抑えたいとき
支出を切り詰めたい場合には、借り換えを検討してみると良いだろう。タイミングによっては金利を下げられて、毎月の返済金額を抑えられるだろう。
転職予定があるとき
近い将来転職する予定があるのであれば、早めに検討を始めたほうが良い。なぜなら、借り換えには金融機関からの審査が入り、収入状況や勤続年数などを見られるためだ。転職してしまって勤続年数がリセットされてしまうと、審査で不利になることもある。
将来金利の上昇が予想されるとき
経済の状況によって金利は変動する。今後、ニュースなどをチェックして金利の上昇が予想される時、変動金利の場合は固定金利へスイッチしてしまった方が良い場合がある。ただし、固定金利は変動金利よりも利率が高く設定されているので、その時点での返済額が上がってしまうことにも注意が必要だ。
住宅ローン借り換えの流れ
借り換えの流れをあらかじめ把握しておこう。
- 借り換え先の金融機関の比較・検討
- 金融機関へ借り換えの申し込み
- 金融機関による審査
- 審査通過後、現在の借入先の金融機関に残金返済の手続き申し込み
- 借り換え先の金融機関と契約
- 住宅ローンの借り換え実行
- 借り換え前の金融機関の抵当権を抹消、同時に借り換え後の金融機関の抵当権を設定
借り換えに必要な書類
最初に住宅ローンの契約をしたときと同様に、借り換えにも書類が必要になる。入手先はさまざまで、中には役所に行かないと入手できないものもある。借り入れ予定の金融機関に必要書類を確認して事前にリストを作成しておいたほうが確実だ。
必要書類の例
書類 / 入手先
住宅ローン申込書 / 金融機関
団体信用生命保険申込書兼告知書 / 保険会社など
身分証明書(健康保険証、運転免許証など) / 各行政機関
住民票 / 市区町村
印鑑証明書 / 市区町村
・給与所得者
源泉徴収票 / 勤務先
住民税課税証明書 / 市区町村
住民税決定通知書 / 勤務先
・自営業者
確定申告書(直近3年分) / 自前
納税証明書(直近3年分) / 税務署
・会社経営者
上述に加えて法人決算書 / 自社
登記簿謄本 / 法務局
売買契約書・重要事項説明書・工事請負契約書 / 工務店、ハウスメーカー、不動産会社
住宅ローン返済予定表 / 自前
返済口座の通帳の写し / 自前
住宅ローン借り換えの注意点
借り換えには多くのメリットがあるが、安易に借り換えた結果あまり得しなかった、逆に損してしまうというケースもある。注意点を確認して確実に借り換えを行いたい。
金利だけで借り換えのはNG
借り換えには各種手数料が発生する。そのため、単純に金利が低いからという理由だけで借り換えを行ってしまうとあまり意味がなかったということもある。
借り換えするときは契約書のチェックを
借り換え時には金利ばかりに目が行きがちだ。しかし、検討するときには現在借り入れている金融機関の契約書を確認しておこう。「借り換えをする場合は残金の何%を支払う」などという契約が記載されていることもあるので注意が必要だ。
転職や収入が減るときは注意
転職や会社の業績悪化で収入減が見込まれる場合は審査で不利に働く可能性がある。近い将来でそのような予定があるのであれば、早急に借り換えの検討を進めたほうが良いだろう。
国債の金利は要チェック
住宅ローンの金利は国債の金利に連動している。そのため、国債の金利が動くときは要注意。金利に上昇気配があれば、変動金利で借りている人は固定金利への借り換えを検討するべきだろう。
短期固定で借りている場合は長期固定に借り換えるという手も
固定金利だからといって安心するのは早い。短期固定で借り入れているのであれば、現在の超低金利のうちに長期固定に切り替えてしまうことで金利変動の心配をする必要がなくなる。
そのほかにも、借り換えは固定期間が終わってから考えようなどと悠長なことを考えていると、固定期間終了時には金利が上昇してしまっているという可能性もある。
借り換えは先延ばしにしないこと
現在は稀に見る超低金利時代だ。金利的には「底」についていて、あとは上昇することしか考えられない。そのため、住宅ローンを借り換えるには絶好のタイミングと考えて良いだろう。
住宅ローンは少なくとも数千万円の金額になるため、1%の変動でも将来の返済総額は数百万円単位で変わってくる。「いまは忙しいから」「もう少しで固定期間が終わるから」など先延ばしにするのではなく、メリットがあるのであれば、積極的に借り換えを検討したほうが将来的に大きな節約になる可能性が高いのだ。
借り換えに興味が無かった人も、これから借り換えを検討する人も、どのような流れで借り換えを行うか、必要書類、経費はどのくらいかかるのかを確認して、返済負担を軽減してほしい。
文・ZUU online編集部
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