SFの悪夢が現実に。

国連安全保障理事会はこのほど、昨年のリビア内戦時に、自律型ドローンが史上初めて人を攻撃した可能性がある旨を発表しました。

問題のドローンは、トルコの軍事メーカーであるSTM社製造の「Kargu-2」。

Kargu-2は、大群で上空を旋回し、標的を見つけると自動で特攻をしかけます。

トルコ軍は昨年6月、500機のKargu-2を導入し、一時波紋を呼んでいました。

目次

  1. 国連発表、自律型ドローンが人を攻撃した可能性

国連発表、自律型ドローンが人を攻撃した可能性

Kargu-2は、一度に20機ほどの群れで上空を飛び、搭載されたセンサーとカメラを使って標的を見つけます。

また、顔認識機能も備わっており、ターゲットとする相手を狙うことも可能です。

Kargu-2は通常、遠隔地にいる人間の操作で起動し、攻撃には人間の判断が介入します。

しかし、ドローンが敵を見つけてから、操縦者が攻撃を判断するまでに時間がかかるため、標的を逃したり、逆に撃墜される可能性もあります。

そこでSTMやトルコ軍部は、「自律型殺傷兵器(Lethal Autonomous Weapon Systems:LAWS)」のように、人の判断を介さず、AIが自動で判断するプログラムを搭載したドローンの開発を考案していました。

この考えには、当然ながら「対人攻撃を機械にまかせることは非倫理・道徳的である」とNGOなどから反対の声が上がっています。

ところが、国連による「自律型ドローンが初めて人を襲った」と報告があったのはその矢先でした。

詳細は、今年3月に発表された国連安全保障理事会のリビア専門家パネルによる報告書に記載されていたとのこと。

ドローンによる攻撃は、昨年のリビア内戦時に起きたと見られています。

今回の内戦は、東部拠点のリビア国民軍(LNA)と、国民合意政府(GNA)との紛争で、2019年4月から続いていました。

報告では、LNA側が自律的に動くKargu-2により攻撃を受けたとされています。

報告は機密情報であり、これ以上の詳細は明らかにされておらず、死傷者があったかどうかも未だ不明です。

しかし、この報告が真実であれば、自律型ドローンが実用化される前に禁止する国際的な取り組みが、すでに手遅れであることを示します。

米・メリーランド大学のテロリズム専門家であるザック・カレンボーン氏は「自律型ドローンが人を攻撃したとなれば、これが初の事例となる」と指摘。

その上で、「自動認識システムは完全ではなく、どれほど脆く、どれほどの頻度で誤認してしまうか分かりません。

ドローンの操縦をAIなどの自動システムに依存するのは非常に危険なこと」と続けます。

ましてや、攻撃プログラムが悪意ある人間にコントロールされてしまえば、無差別な対人攻撃が起こりかねません。

SF世界の悪夢はすでに現実のものになろうとしています。


参考文献

Drones may have attacked humans fully autonomously for the first time

Turkey Now Has Swarming Suicide Drones It Could Export


提供元・ナゾロジー

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