古くからダイエット界では、セロリ信仰が存在します。

その主要な内容は

「セロリは含まれるカロリーよりも消化に使うエネルギーのほうが多いために、食べれば食べるだけ痩せていくマイナスカロリー食材だから」

というものです。

特に極端な情報では、セロリ1本が5カロリーである一方で、消化に要するカロリーは数十kcalに及ぶとの主張も存在します。

しかし科学的に本当なのでしょうか?

目次

  1. セロリは本当に「マイナスカロリー」食品なのか?
  2. セロリはマイナスカロリーではないが「ダイエットの魔法」がかかっている

セロリは本当に「マイナスカロリー」食品なのか?

2.セロリは本当に「マイナスカロリー」食品なのか?
セロリは本当に「マイナスカロリー」食品なのか? / Credit:Canva
(画像=『ナゾロジー』より引用)

結論から言えば、セロリはマイナスカロリー食品ではありません。

『Functional Food Centre』に掲載された論文によれば、吐きだした二酸化炭素の量を元に消費カロリーを詳細に計算した結果、セロリ100gあたり2 kcal「プラス」になることが示されました。

セロリのカロリーは100gあたり15 kcalと言われており、計算が正しければ85%(13 kcal)が消化のために使われたものの、残りの15%(2 kcal)は体の中に脂肪として貯蓄されることになります。

一方『Journal of the Academy of Nutrition and Dietetics』に掲載された論文によれば、セロリが多めに含まれている食事は、1食あたりの摂取カロリーが平均して100 kcalも減少することが示されました。

2つめの論文の結果だけを聞くと、結局セロリはやせる野菜なの? と思うかもしれません。

いったい、どうしてこのような相反する結果が提示されたのでしょうか?

その原因は、人間の本能にありました。

セロリはマイナスカロリーではないが「ダイエットの魔法」がかかっている

3.セロリは本当に「マイナスカロリー」食品なのか?
セロリはマイナスカロリーではないが「ダイエットの魔法」がかかっている / Credit:Canva
(画像=『ナゾロジー』より引用)

私たち人間にはどうにかして飢えを防ごうとする本能が存在します。

ですがこの本能は厳密に言えば2つの願望の集合体です。

1つは、とにかくたくさん食べるという「量の願望」

そしてもう1つは、栄養価の高いものを食べたいと思う「質の願望」です。

しかし『Nutrition Reviews』に掲載された論文によれば、どうやら2つの願望の強さには若干の偏りがあり、日常生活では「量の願望」に大きく偏ることが示されました。

つまり現代的な生活において人間の本能が重要視するのは、同じ重量の食べ物を食べ続けることだったのです。

そのため、セロリのようなカロリーの少ない食べ物を重量に含めることで、極めて効果的なダイエットが可能になるようです。

セロリを食べるとやせる(少ないカロリーで食べ物のかさ増しができる)というのは、このような人間の本能のちょっとした不均衡を上手く利用した手だと言えるでしょう。

そういう意味では、セロリは魔法の食べ物なのかもしれません。


元論文
Exploring the myth: Does eating celery result in a negative energy balance?

Salad and satiety: Energy density and portion size of a first-course salad affect energy intake at lunch

What Can Intervention Studies Tell Us about the Relationship between Fruit and Vegetable Consumption and Weight Management?


提供元・ナゾロジー

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