絶滅したと思われていたドワーフ・エミューの卵が見つかりました。

卵はオーストラリア・タスマニア州に属するキング島(King Island)で発見され、最後の目撃以来、約200年ぶりのことです。

研究は、5月26日付けで『Biology Letters』されています。

目次

  1. 島固有のエミューの卵を約200年ぶりに発見!

島固有のエミューの卵を約200年ぶりに発見!

エミューは、ヒクイドリ目ヒクイドリ科エミュー属の鳥類で、二足歩行のいわゆる「飛べない鳥」です。

現在は、オーストラリア本土の1種(Dromaius novaehollandiae)のみが現生するとされています。

かつては本土周辺の3つの島、タスマニア島・カンガルー島・キング島のそれぞれに亜種のドワーフ・エミュー(本土より小さなエミュー)がいましたが、19世紀初頭のヨーロッパ人の入植と同時に姿を消しました。

タスマニア島では1850年、カンガルー島では1830年、キング島では1805年を境にドワーフ・エミューが見られなくなっています。

しかし、その後の調査で、タスマニア島とカンガルー島からは数個の卵が発見され、わずかながら生き残っていることが示唆されました。

その一方で、キング島からは今日まで、一切の卵が見つかっていなかったのです。

そこで、ロンドン自然史博物館のジュリアン・ヒューム氏とキング島研究者のクリスチャン・ロバートソン氏が共同で、卵の探索を開始。

その結果、キング島の砂丘の中で、島固有のドワーフ・エミューの卵が約200年ぶりに再発見されたのです。

絶滅したはずの「ドワーフ・エミューの卵」が約200年ぶりに見つかる!(オーストラリア)
一番右端がキング島のエミューの卵 / Credit: Julian P. Hume et al., Biology Letters(2021)(画像=『ナゾロジー』より引用)

今回の調査では他に、本土で38個、タスマニア島で6個の卵が見つかっています。

上の画像の左から、本土、タスマニア島、カンガルー島、キング島の卵です。

殻を採取したところ、キング島の卵はほぼ完全な状態まで復元でき、両氏は非常に貴重な標本を手に入れたと考えています。

分析の結果、キング島のエミューは本土の現生種より44%ほど体長が小さいことが示唆されましたが、卵のサイズ自体はほぼ同じでした。

本土のエミューは体高1.6〜2.0メートル、体重40〜60キロですが、キング島のエミューは成鳥でもその半分くらいと推測されます。

絶滅したはずの「ドワーフ・エミューの卵」が約200年ぶりに見つかる!(オーストラリア)
現生種のエミューの卵 / Credit: Wikimedia(画像=『ナゾロジー』より引用)
絶滅したはずの「ドワーフ・エミューの卵」が約200年ぶりに見つかる!(オーストラリア)
キング島のドワーフ・エミューのイメージ画 / Credit: Julian Hume(画像=『ナゾロジー』より引用)

体長の割に卵が大きい理由について、両氏は「島の厳しい環境に耐えるため」と指摘。

「卵が大きければ、孵化後も自分で食料を調達できるようになるまで、殻の中に閉じこもって入られます。また、島の夜の寒さをしのぐ保温効果もあるでしょう」と説明しました。

実際の姿はまだ見つかっていませんが、今も島のどこかでひっそり暮らしているのかもしれません。


参考文献

An almost complete extinct dwarf emu egg found on King Island

Paleontologists Find First Complete Egg of Extinct King Island Dwarf Emu

元論文

Eggs of extinct dwarf island emus retained large size


提供元・ナゾロジー

【関連記事】
ウミウシに「セルフ斬首と胴体再生」の新行動を発見 生首から心臓まで再生できる(日本)
人間に必要な「1日の水分量」は、他の霊長類の半分だと判明! 森からの脱出に成功した要因か
深海の微生物は「自然に起こる水分解」からエネルギーを得ていた?! エイリアン発見につながる研究結果
「生体工学網膜」が失明治療に革命を起こす?
人工培養脳を「乳児の脳」まで生育することに成功