今年は梅雨入りが例年より早く、カタツムリもそろそろ出てきそうです。
カタツムリは、さまざまな色や形をした殻を背負っていますが、どうやって殻を入手しているのか、気になったことはありませんか?
ヤドカリのようにどこかで貝殻を見つけてくると思う方もいるでしょう。
しかし、カタツムリは生まれた時から殻を持っているのです。
体はあんなに柔らかいのに、彼らは何を材料に、どうやって殻を作っているのでしょうか?
カタツムリの殻の材料は?
カタツムリは、軟体動物門に属する陸棲の巻貝であり、水棲ではカキやハマグリ、オウムガイなどが有名です。
これら巻貝の殻は主に、ミネラルと有機分子からなります。
哺乳類の骨もミネラル(カルシウム)とタンパク質(コラーゲン)で構成されていますが、巻貝の殻とは、ミネラルの種類と割合が違います。
巻貝の殻は、重量比で95〜99%のミネラルが含まれており、残りの1〜5%は有機物です。
つまり、貝殻は「生物学的に作られた岩石」と言えます。
この9割以上を占めるミネラルのうち、主な成分は「炭酸カルシウム」です。
ちなみに、炭酸カルシウムは酢で分解できるので、殻を酢漬けにすると泡状に溶けていきます。
このミネラルの間にはタンパク質が織り込まれています。
タンパク質は、殻に強度や柔軟性を与え、軽量化してくれる重要な成分。炭酸カルシウムだけでできていると、ただの重い石になり、カタツムリは背負って歩けません。
それから、硬いミネラルの殻を有機層が覆っていて、酸性度の高い水で溶けないよう保護しています。
有機層は色素を蓄える場所でもあり、殻のバリエーションを増やすのにも欠かせません。
中には殻に派手な色をつけることで、「マズイので決して食べないでください」と警告するカタツムリもいます。
では、これらの材料をもとに殻はいつ、どうやって作られるのでしょうか?
殻を作る「バイオミネラリゼーション」とは
カタツムリの殻は、卵から生まれる前に作られ始めます。
貝殻腺(shell gland)という部位から殻の材料となる成分が分泌され、先に述べた有機層が最初に作られます。
これをベースにして、ミネラルを積み上げ、硬質化していく「バイオミネラリゼーション」が始まるのです。
バイオミネラリゼーションとは、生物の鉱物形成作用のことで、貝殻やサンゴ、真珠、骨や歯もこれによって作られます。
小さな殻を持って孵化した2ミリほどのカタツムリの赤ちゃんは、成長過程で殻をらせん状にどんどん大きくしていきます。
殻の中には内臓が入っており、体の一部となっているので、無理に殻を取ろうとすればカタツムリは死んでしまいます。
また、殻の材料となる成分は、水や食べ物から摂取しています。
ミネラルは土の中の水に含まれていますし、雨に濡れたコンクリートから溶け出す炭酸カルシウムも貴重な材料源です。
梅雨時期にカタツムリがたくさん出てくるのは、このためと言われています。
ちなみに、カタツムリとよく似たナメクジは、実はカタツムリの進化した姿であり、別の生き物です。
カタツムリの一グループにおいて、移動に不便な殻を失くす方向に進化したのが、ナメクジとされます。
ですから、カタツムリの殻を外したとてナメクジにはなりません。
これからの時期、ナメクジやカタツムリをよく見かけることになりますが、塩をかけたり、殻を外したりする蛮行は控えましょう。
参考文献
How Do Snails (And Other Molluscs) Create Their Shells?
提供元・ナゾロジー
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