チーターは地上で最も速い動物として有名であり、体を大きく曲げ伸ばして走るのが特徴です。

しかし、これまでチーターの走行に関する力学メカニズムは不明確なままでした。

そこで名古屋工業大学大学院工学研究科の上村 知也助教ら研究チームは、チーターの力学モデルと計測データの解析を用いて高速走行のメカニズムを明らかにしました。

研究の詳細は、5月6日付けの学術誌『Scientific Reports』に掲載されています。

目次
チーターの高速走行のカギは床反力だった

チーターの高速走行のカギは床反力だった


チーターの走行を分析するうえで、研究チームはチーターがもつ独特な「飛翔期」に注目しました。

飛翔期とは、走行中にすべての足が地面から離れた状態を指します。

チーターはなぜ最も速く走れるのか? 高速走行を実現するメカニズムを解明
(画像=チーターの飛翔期 / Credit:名古屋工業大学、『ナゾロジー』より)

例えば、ウマなどの動物は、一連の走行動作のなかでも体を曲げたときが飛翔期となります。

ところがチーターの場合は体を曲げたときだけでなく、体を伸ばしたときも飛翔期となり、合計2種類の飛翔期をもっているのです。

そこで研究チームは、チーターの飛翔期を構成する重要な2つの要素「曲げ伸ばし運動」と「上下運動」だけを抜き出したシンプルな力学モデルを構築。

チーターはなぜ最も速く走れるのか? 高速走行を実現するメカニズムを解明
(画像=(左)飛翔期の違いとその運動, (右)チーターの運動から床反力の作用点を算出 / Credit:名古屋工業大学、『ナゾロジー』より)

そして、このモデルを解析することで、2種類の飛翔期を生み出す条件が、床反力(脚が床から受ける力)によって決定されると分かりました。

また2種類の飛翔期をもつことで、運動の周期が短くなると判明。

つまり、2種類の飛翔期を生み出す足り方や体の仕組みこそが、チーターの高速走行を可能にしていたのです。

今回の結果は、動物の運動メカニズムを明らかにするだけでなく、運動能力の優れたロボット開発にも役立つでしょう。

床反力に注目してロボット脚の動かし方をプログラムしたり設計したりするなら、ロボットにも2種類の飛翔期をもたせ、高速走行させられるかもしれませんね。

参考文献
チーターはなぜ地上で最も速く走れるのか? ―体幹の曲げ伸ばしによって高速走行を実現するメカニズムを数理モデルで解明―
元論文
Dynamical determinants enabling two different types of flight in cheetah gallop to enhance speed through spine movement

提供元・ナゾロジー

【関連記事】
ウミウシに「セルフ斬首と胴体再生」の新行動を発見 生首から心臓まで再生できる(日本)
人間に必要な「1日の水分量」は、他の霊長類の半分だと判明! 森からの脱出に成功した要因か
深海の微生物は「自然に起こる水分解」からエネルギーを得ていた?! エイリアン発見につながる研究結果
「生体工学網膜」が失明治療に革命を起こす?
人工培養脳を「乳児の脳」まで生育することに成功