(経済産業省「商業動態統計」)
今回は、経済産業省の商業動態統計から、コロナ禍における衣料品への影響を見る。同統計は、全国の商業を営む事業所および企業の販売活動などの動向を明らかにするために調査・発表している国の基幹統計だ。同統計で、百貨店およびスーパーにおける衣料品の売上高を見ると、コロナ禍前の2019年においては3兆7,541億円だったのが、20年には2兆7,625億円まで減少している。
今年に入り毎月の売上高は、1月2,240億円(前年同月比33%減)、2月1,887億円(同13%減)、3月2,674億円(同20%増)と回復の兆しを示している。しかし、19年比ではそれぞれ37%減、25%減、22%減となるため、コロナ禍以前の水準にはまったく戻っていない(図表)。4月以降も、大型連休に合わせた3回目の緊急事態宣言によって、対象地域の百貨店は休業や営業フロア縮小などを余儀なくされたことから、衣料品の売上高の大きな減少は必至である。
衣料品の細目を見ていこう。同統計は衣料品を「紳士服・洋品」「婦人・子供服・洋品」「その他衣料品」「身の回り品」の4項目に分類している。構成比は、おおむね「婦人・子供服・洋品」が50%、「身の回り品」が27~28%、「紳士服・洋品」が16~17%、「その他衣料品」が5~6%となっている。
これらのデータの動きで興味深い点は、2度の緊急事態宣言を経て、ほとんど構成比が変わっていないことである。
経済的なショックが発生したとき、商品の種類によって需要の増減が早かったり遅かったりと反応に違いが出ることはよくあるが、感染が拡大した緊急事態宣言前後を中心に、衣料品は一様に減少している。外出自粛で買い物の機会が減少した上、在宅勤務の広がりなどで仕事着や「お出かけ着」の需要も大きく減少したためであろう。アパレル各社の自社通販サイトの売上げが20%以上増加しているとの報道もあり、店頭販売からオンライン販売へのシフトによる影響も考えられる。オフィスワーカーの服装自由化が進み、「スーツ離れ」が本格化するとの指摘もあるなか、まずは構成比の高い「婦人・子供服・洋品」「身の回り品」を、いかに早く19年の売上水準に戻せるかがポイントとなる。
文・データサイエンティスト 博士(経済学) / 久永 忠
提供元・きんざいOnline
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