妊娠中に大豆を食べると、生まれた子の将来的なコミュニケーション能力が高まるかもしれません。

愛媛大学を中心とした研究グループは、その最新調査により、妊娠中の大豆およびイソフラボンの摂取が、子どもの多動性や対人関係の問題に予防的な効果をもつことを発表しました。

大豆・イソフラボンの摂取と子どもの行動との関連性を示した疫学研究は、世界で初めてです。

研究は、4月1日付けで『International Journal of Food Sciences and Nutrition』に掲載されています。

目次

  1. 大豆イソフラボン摂取が「子の社会性」を高める

大豆イソフラボン摂取が「子の社会性」を高める

大豆に含まれるイソフラボンには、女性らしい体づくりや妊娠の準備を促す「エストロゲン作用」があります。

一方で、妊娠中のイソフラボン摂取が子どもの行動問題に与える影響は分かっておらず、それを調べた研究もありませんでした。

そこで研究チームは、妊娠中から数年にわたり母子を追跡調査した「九州・沖縄母子保健研究」のデータを利用し、胎児期の大豆、イソフラボン摂取と5歳時における子の行動問題の関連性を調べました。

本データは、2007年に九州・沖縄在住の妊婦さん1757名を対象にしたもので、生まれた子が5歳になった時点では計1199組の母子が協力しています。

調査では、食事アンケートによって妊娠中の栄養データを採取し、大豆、イソフラボンの摂取量の統計解析を行いました。

5歳時の調査では、世界中で採用されている「子どもの強さと困難さアンケート(SDQ: Strengths and Difficulties Questionnaire)」を保護者に実施。

SDQでは、子どもの情緒や多動性、向社会性、対人関係などが評価されます。

この際、非栄養ファクターである「母親の年齢、妊娠期間、居住地、両親の学歴・年収、妊婦時のうつ症状・アルコール摂取量・喫煙」などは、統計学的に調整されました。

妊娠中の大豆イソフラボン摂取が「子の社会性」を高めるという研究結果
(画像=※オッズ比は関連の強さを表す指標。オッズ比が1の場合、関連が全くない / Credit: 三宅吉博/愛媛大学、『ナゾロジー』より引用)

その結果、妊娠中の大豆摂取量は、子の多動性と対人関係のリスク低下に関連し、納豆・イソフラボン摂取量は、多動性のリスク低下と強く関連していることが示されたのです。

1199名の5歳児において、情緒問題は12.9%、行為問題は19.4%、多動問題は13.1%、対人関係の問題は8.6%、向社会性の問題は29.2%認められましたが、妊娠中の大豆・イソフラボンの摂取量が多いほど、各問題のリスクは低下していました。

品目ごとで見ると、納豆とイソフラボンは多動性・対人問題のリスク低下につながっていましたが、豆腐、大豆の煮物、みそ汁には、どの問題とも関連がありませんでした。

ちなみに、同チームの先行研究では、以下の栄養が生まれた子の発達に関わりがあると指摘されています。

妊娠中の大豆イソフラボン摂取が「子の社会性」を高めるという研究結果
(画像=妊娠中栄養摂取と子の行動的問題との関連 / Credit: 三宅吉博/愛媛大学、『ナゾロジー』より引用)

今回の研究では、大豆、納豆、イソフラボンに予防的な効果が確認されましたが、諸外国からの同様の報告がなく、さらなるデータの蓄積が必要となります。

それでも、妊娠中の食習慣が、子の将来的な行動にポジティブな結果をもたらす可能性が指摘されたのはとても興味深いことです。

妊婦さんは大豆やイソフラボンを積極的に摂取すると良いかもしれません。


参考文献

世界初の研究成果! 妊娠中の大豆、イソフラボン摂取が幼児の多動問題等に 予防的論文発表(愛媛大学)

元論文

Maternal consumption of soy and isoflavones during pregnancy and risk of childhood behavioural problems: the Kyushu Okinawa Maternal and Child Health Study


提供元・ナゾロジー

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