世界中の家庭で親しまれている鶏肉ですが、一方で食中毒の危険がともなう食材でもあります。
一般家庭では加熱調理が基本になっていますが、「鶏肉の色がピンクから白に変わったら食べてよし」としている人が多いと思います。
しかし、ノルウェーの研究チーム・Nofimaによる調査によると、それだけでは鶏肉に付着した菌を殺すのに十分ではないということが指摘されました。
さらに一般家庭の多くでは、鶏肉の十分な加熱ができていないことが明らかにされ、その上で安全に鶏肉を食べるために必要な加熱温度が提示されました。いったい私達は何を目安に判断すれば良いのでしょうか。
鶏肉の加熱に必要な温度は?
研究チームは、ヨーロッパ5ヶ国における75世帯の直接調査と4000世帯のオンライン調査を実施。
その結果、鶏肉がパサつくのを懸念し、加熱が足りない世帯が非常に多く発見されました。また、彼らの基本的な判断基準は、「鶏肉のピンク色の部分がなくなっているかどうが」とのこと。
また、「使い方がよく分からない」「時間がかかる」「面倒くさい」といった理由で、調理用温度計を使用しない家庭も多く見られています。
そこで、研究チームは、生の鶏ムネ肉にカンピロバクターおよびサルモネラ菌を注入して加熱実験しました。
これらの菌は鶏肉によく見られるもので、食中毒の主な原因です。アメリカでは年間、数百万人の食中毒患者と数千人の入院患者、そして数百人の死亡者が出ています。
チームは、市販のグリルパンを使って、胸肉の中心温度が50〜70度(WHOが一般に安全としている最低温度)に達するまで加熱調理をしました。
結果、中心部が70度以上に達していれば、鶏肉は食べても安全なレベルまで滅菌されていました。しかし、鶏肉の色がピンクから白に変わる55度付近では、まだプレートに接していない箇所に安全ではないレベルの細菌が付着していたのです。
これを踏まえてチームは、「最低でも中心温度が75度に達していなければ安全は保証できない」と指摘します。
実際の調理の際は、中心部だけでなく表面もしっかり加熱しなければいけません。中心部の温度にばかり気を取られて、表面に加熱されていない部分が残ることもあるでしょう。
菌はたとえ少量でも、食中毒の危険性を高めます。
特に今年のゴールデンウィークは、外出自粛が要請されており、家で食事を楽しむ機会も増えるでしょう。そんな時こそ、鶏肉の取り扱いに注意が必要です。
研究の詳細は、4月29日付けで「PLOS ONE」に掲載されています。
提供元・ナゾロジー
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