国際機関IATA(国際航空運送協会, 通称イアタ)は、安全で確実な航空運送の発展を目的とする航空・旅行会社の団体組織です。

ANAが国際線の一部の便において、デジタル証明書アプリ「IATAトラベルパス」の実証実験を開始したことで、その名は俄かに広まりはじめています。

本記事では、IATAの果たす役割や対応する諸課題について解説します。

目次
IATAとは?どんな仕事をしている?
▶300近くの航空会社が加盟する「国際航空運送協会」
▶IATAの仕事:航空会社を代表してサービスを提供
▶IATAの歴史:設立は1945年
IATAが対応する課題
▶1. 安全
▶2. 環境
▶3. 航空会社への救済措置
▶4. 航空業界の再開、回復
▶5. LCCの台頭への対応
航空業界の方針や統一基準制定に寄与

IATAとは?どんな仕事をしている?

IATA(International Air Transport Association・国際航空運送協会)は、1945年に設立された世界の航空運輸企業の業界団体です(通称イアタ)。

カナダのモントリオールと スイスのジュネーブの2カ所に拠点を置いており、世界各国の航空・旅行に関連する約290の会社が加盟しています。

300近くの航空会社が加盟する「国際航空運送協会」

上述の通り、2021年4月現在、IATAには約290の航空会社が加盟しています。これは、定期国際運送量全体の83%にあたります。日本国内では、日本航空(JAL)、全日本空輸(ANA)、日本貨物航空(NCA)、日本トランスオーシャン航空(JTA)の4社がJATAに加盟しています。

IATAの仕事:航空会社を代表してサービスを提供

IATAは「航空業界を代表し、主導し、サービスを提供」することを組織課題として掲げています。

IATAの主な役割としては航空運賃(IATA-PEX)の設定、発券・運用ルール等の決定などがあり、IATAコードとして知られるスリーレターの発行も行っています。

日本国内のスリーレターの例としては、NRT(成田空港)、HND(羽田空港)、KIX(関西国際空港)などがあります。

IATAの歴史:設立は1945年

IATAは確実で安全な航空運送を目標とし、1945年にキューバのハバナにて設立されました。設立当初は31か国・57社が加盟していましたが、現在の加盟団体数は当時の約5倍の290社にまで上り、航空便の数は100倍以上に拡大しました。

IATA設立から60年余りで世界全体の航空業界が著しい発達を遂げていることがわかります。

IATAが対応する課題

コストカットや効率改善を念頭に置いているのは勿論のこと、IATAの主たる目的は航空便を利用する乗客の利便性向上、手続きの簡素化を推進することです。2021年3月に理事会によって定義されたIATAの優先事項を5つ、以下で紹介します。

1. 安全

IATAが最も重要視する課題が「安全」です。

特に、IOSA(IATA Operational Safety Audit =運航の安全観察)を通じて、継続的に安全基準の向上を目指しています。「5年間の全事故率を下げる(2017-2021と比較して2016-2020)」ことがIATAの最新の目標として掲げられています。

2. 環境

IATAは「環境における持続可能性」についても言及し、航空機から排出されるCO2など、環境に対する負荷を軽減することを目指しています。IATA加盟航空会社は、普段から温室効果ガス排出量削減努力を行い、どうしても排出を免れないCO2を相殺する「カーボンオフセット」が効果的な方法として合意しました。

IATAが掲げるACE(Aviation Carbon Exchange)は2016年に決議されたCORSIA (国際民間航空のためのカーボンオフセット及び削減計画)が認証する航空機の排出量交換市場であり、CO2 の2.2Mトンのオフセットを達成することが目標値として定められています。

3. 航空会社への救済措置

IATAは、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によって打撃を受ける航空業界の再開支援についても明確な目標を示しています。

利益を生み出したり、コストと税金を最大750〜950億米ドル削減した航空会社に対する政府の救済措置を確保すると示しています。このうち500億米ドルは、2021年前半に達成されることが見込まれています。

4. 航空業界の再開、回復

また、実際の航空業界の再開についても目標を設定しています。

IATAは、政府と協力して航空業界の再開までのロードマップを完成させ、世界の乗客の82%を占める33の乗客市場に乗り出すために国境を再開するとしました。

そして、世界の60%が検疫措置なしで開かれていることが不可欠だと述べています。

5. LCCの台頭への対応

21世紀以降、IATAに加盟せず独自に運賃を決めるLCC(Low Cost Carrier・格安航空会社)の台頭などにより、IATAの料金基準の改良が議題に上るようになってきました。

それを受けて航空会社の路線や便数、運賃などの規約を撤廃し、自由化する「オープンスカイ」の機運が高まってきています。

最初こそ日本も慎重姿勢を取っていましたが、成田空港を除く首都圏以外の空港でオープンスカイを実施することになりました。2015年時点で日本は27の国と地域間でオープンスカイ協定を締結しています。

なお国土交通省は2015年のASEAN経済共同体の発足を受け、ASEAN10カ国との地域協定の締結に向けて動きを加速しているところです。

航空業界の方針や統一基準制定に寄与

IATAは、世界中の300近い航空会社が加盟する国際機関です。1945年の設立以降、航空会社を代表する形でサービスの提供やさまざまな課題解決に向かって航空業界を牽引してきました。

昨年からのコロナ禍においても、大打撃を受けた航空会社に向けて迅速に支援体制を構築するなど、IATAが航空業界とって欠かせない重要機関として強い影響力を示しています。

アフターコロナには旅行需要の回復が見込まれることからも、将来的にもIATAの存在が重要であることに変わりはないでしょう。

文・訪日ラボ編集部/提供元・訪日ラボ

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