point
- 家族で初めて大学に行く人は、「自分には勉強を続けるスキルが無い」と感じやすい
- 競争意識の高すぎない環境づくりは、すべての学生が自信をもって学問を楽しむ秘訣である
「自分だけが能力のない偽物だ」「自分は能力が低く、周りについていけない」と感じたことはないでしょうか。
このような気持ちに悩まされることを「インポスター症候群」と呼び、一般的には社会的成功者に多く見られます。
最近の研究によって、第一世代(家族で初めて大学に行く人)は「自分には勉強を続けるスキルがない」と感じやすいことが判明しました。
彼らにとって、競争心を煽るようなクラスはインポスター症候群になりやすい環境のようです。
研究の詳細は、「SAGE jounals」に掲載されました。
Feeling Like an Imposter: The Effect of Perceived Classroom Competition on the Daily Psychological Experiences of First-Generation College Students
自分は偽物?詐欺師?「インポスター症候群」
競争意識の高い環境では、どうしても自分を他の人と比べてしまいがちです。自分自身を認めるための基準が「成功・失敗」のみになってしまうこともあります。
こうした傾向は本人の自信喪失に繋がりやすく、「自分は価値のない人間だ」と感じるようになります。これを「インポスター症候群」と言います。別名「偽物症候群」「詐欺師症候群」とも言い、自分だけが実力のない偽物、実力があるかのように皆をだましているように感じることが由来です。
インポスター症候群には誰しもが陥る可能性がありますが、最新の研究では第一世代の大学生がよりインポスター症候群になりやすいことが分かりました。
第一世代の大学生は競争意識の高いクラスで落ち込みやすい
米国の大規模大学のSTEMコースでインポスター症候群に関する実験が行われました。STEM科目は非常に大切な分野ですが、クラス内で競争意識が生まれやすいと言われています。
競争意識の高いこのコースに在籍する818人の新入生と2年生を対象として、彼らのうち、どんなバックグラウンドを持つ人が影響を受けやすいか調査したのです。
研究者たちの予想どおり、クラスを競争的だと感じている人はインポスター症候群になる可能性が高かったようです。
そして、大学に行った家族を持つ人に対して、第一世代の学生は日常的にインポスター症候群に陥る可能性が高いことも明らかになりました。
この原因は、第一世代の学生の多くが「同僚はライバルではなく共同体」という価値観をもって育つからだとされています。彼らは大学で競争意識が高く個人主義的な世界に出会うと、特に有害な影響を受けてしまいやすいのです。
実験結果は、別の側面も明らかにしています。競争意識の高いクラスでは、第一世代の大学生がインポスター症候群になりやすいようですが、競争意識の高すぎない環境では、どの世代の大学生も等しくインポスター症候群になりにくいようです。
今回の研究によって、人のバックグラウンドがインポスター症候群の影響を受けやすくすることが分かりました。しかし、快適な環境を整えるなら、そうしたバックグラウンドに関係なく、学問に集中できることも判明しました。
バックグラウンドに関係なく気持ちよく学べる環境を整えることは、学問や社会の発展のための重要なステップと言えるでしょう。
提供元・ナゾロジー
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