ベイラー大学(アメリカ)の最新研究により、短気な人よりも皮肉屋な人の方が、ストレスフルな状況下で心疾患を発症しやすいことが示されました。
ほとんどの人では、ストレス刺激に対し「闘争(fight)」もしくは「逃走(flight)」反応を示しますが、もう一度同じ刺激を与えられると反応が鈍くなります。
しかし、懐疑的で皮肉屋な人は、同じ刺激に対し、常に同等のストレスレベルを受けてしまうようです。
研究は、9月13日付けで『Psychophysiology』に掲載されました。
目次
実験の手順、「トリーアの社会ストレステスト」とは
皮肉屋は短気よりストレスを受けやすい
実験の手順、「トリーアの社会ストレステスト」とは
心的ストレスは、これまでの研究で、心疾患のような身体の病気に繋がることがわかっています。
研究チームは今回、心的ストレスの中でも「敵意(hostility)」が与える悪影響について調査しました(敵意は病気の発症リスクに深くかかわっているため)。
敵意は「感情・行動・認知」という3つに分類され、皮肉は「認知的敵意」にあたります。
調査では、196名の被験者(18〜55歳、男性58%、女性42%)を対象に、約7週間の間隔をあけて2度のテストを実施。「トリーアの社会ストレステスト(TSST)」という、ストレス状態にある人の反応を見る心理実験が行われました。
一度のテストは15〜20分で、被験者は敵意の程度を測るための複数のテストを受けます。
その一つのスピーチテストでは、被験者が万引きや交通違反を犯したと仮定して、5分間の自己弁護を課します。
被験者にはあらかじめ、「その様子はビデオで撮影され、あとで評価される」と伝えてあります。被験者はテスト中、2分ごとに心拍数と血圧を記録されました。
他にも、単純作業の反復(計算など)で心的負荷を与え、テストごとのデータ変化を調べています。
皮肉屋は短気よりストレスを受けやすい
その結果、認知的敵意(皮肉、慢性的な憎悪感情)を示す被験者で、最も心的ストレスを感じていることが判明しました。
データ変化を見ると、感情・行動的敵意(キレやすい、行動に出やすい)を示す被験者は、同じストレス刺激に対し鈍化していましたが、認知的敵意では、2度目のテストも同じ高さのストレスを感じていました。
研究主任のアレクサンドラ・タイラ氏は、こう説明します。
「認知的敵意(皮肉)は、他者の動機や意図、信頼性について常に否定的な考えや態度を示します。この否定的な心理状態が、以前と同じ刺激に対し、同じようにストレスを感じてしまうのでしょう。
「また心的ストレスは、喫煙や高コレステロールと同じくらい身体に悪いものです。認知的敵意は、短期のストレス反応だけでなく、長期的な健康にも害を及ぼす可能性があります。」
皮肉な態度は心血管系に負担をかけ、最終的には病気として自分に返ってくるのかもしれません。
参考文献
Psychophysiology
dailymail
提供元・ナゾロジー
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