猫と深い友好関係を築くのは犬と比べて難しいことだと考えられてきました。

ところが10月5日、英国サセックス大学心理学部哺乳類コミュニケーショングループのカレン・マコーム氏ら研究チームは、科学誌『scientific reports』で、人間が猫との親密な関係を築く新しい方法を発見したと報告しました。

彼女らによると、猫にゆっくりとまばたきすることが友好関係を築くのに効果的とのこと。いったいどのような仕組みなのでしょうか。

目次

  1. ゆっくりとまばたきすると猫に好かれる!?
  2. 猫と飼い主の相互コミュニケーションには、ゆっくりとしたまばたきが含まれる
  3. ゆっくりまばたきは猫にとっての「笑顔」だった?

ゆっくりとまばたきすると猫に好かれる!?

ネコに好かれるためには「ゆっくりまばたきをする」ことが重要という研究結果
(画像=ゆっくりとしたまばたきはコミュニケーション手段の1つ / Credit: Karen McComb、『ナゾロジー』より引用)

ペットたちは人間のパートナーとして、同種よりも人間と多くの時間を過ごしています。そのため、人間とコミュニケーションをとる点で優れた能力を持っていると考えられます。

例えば、犬たちは実際に飼い主の身振りから合図を読み取って、飼い主が望む行動を行なったり感情を読み取ったりします。

このようなコミュニケーションに役立つ情報は多くありますが、中でも目の動き(とりわけ目を細める行為)は、感情を伝える上で重要な情報だと考えられてきました。

そして相互コミュニケーションが比較的難しいとされている猫たちも、ゆっくりとまばたきすることで知られています。

しかもこの「ゆっくりまばたき」は、これまで「人間に向けて行なわれる行動かもしれない」と考えられてきたのです。

この点を調査するため、研究チームは2つの実験を行うことにしました。

猫と飼い主の相互コミュニケーションには、ゆっくりとしたまばたきが含まれる

ネコに好かれるためには「ゆっくりまばたきをする」ことが重要という研究結果
(画像=猫は半目状態から目を閉じ、次に目を細める / Credit: Karen McComb、『ナゾロジー』より引用)

最初に研究者たちは「ゆっくりまばたきする」ことを「リラックス時の笑顔のように目を少し細めてから数秒間閉じる」ことと定義。

1つ目の実験では、14世帯から21匹の飼い猫が参加し、それぞれの飼い主にゆっくりとまばたきする方法を教えました。

そして猫たちが落ち着いていることを確認した後、飼い主は猫の正面の約90cm離れたところに座ります。

研究者たちは猫が飼い主に向かってゆっくりまばたきする頻度を記録し、その後、猫がひとりでいる時のまばたきの頻度も記録しました。

その結果、飼い主がゆっくりまばたきした後、猫たちがまばたきし返す可能性が高いと判明したのです。

ゆっくりまばたきは猫にとっての「笑顔」だった?

ネコに好かれるためには「ゆっくりまばたきをする」ことが重要という研究結果
(画像=飼い主以外でもゆっくりまばたきは効果的 / Credit: Karen McComb、『ナゾロジー』より引用)

2つ目の実験では、24匹の異なる猫が採用され、飼い主でなく見知らぬ人(研究者)が猫に手を伸ばしているあいだ、猫たちがどのような反応をするか記録。

これにより猫のゆっくりまばたきが、「見知らぬ人に対しても行う普遍的な行為」なのか、「親しい関係の中で行われる行為」なのか分かります。

結果として、見知らぬ人がゆっくりとまばたきすると、猫が近づいてくる可能性が高いと判明しました。

この2つの実験結果から、ゆっくりとしたまばたきは、猫と人間のポジティブな相互コミュニケーションとして作用していると分かるでしょう。

研究チームによると、猫にとってのゆっくりまばたきは「人間でいう笑顔」に該当するとのこと。

ちなみに研究チームの一員であるサセックス大学のタスミン・ハンスフリー博士は、猫がまばたきでコミュニケーションを取ろうとする理由について、「人間がゆっくりとしたまばたきを肯定的なものとして認識しているため、猫はゆっくりとしたまばたきを発達させた」と主張しています。

さらにこの実験結果は、獣医の診療など猫の福祉を評価するために利用できるかもしれません。

私たちも猫と仲良くなりたいなら、ゆっくりとまばたきしてみるのは良いかもしれませんね。


参考文献

port.ac.uk


提供元・ナゾロジー

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