誰もが気軽にカメラを持ち歩き、即座にネット上に投稿できる現代、新種の生物発見はネットの中で起きることもあるようです。
法政大学の生物学者、島野智之教授は、銚子市で釣りをしていた会社員がTwitterに投稿した写真から、新種の海岸性ダニを発見したと論文で発表しました。
この新種ダニの学名は、Twitterが発見のきっかけとなったことから「Ameronothrus twitter(アメロノトルス・ツイッター)」と名付けられるそうです。
この研究は、日本動物分類学会の国際科学雑誌『Species Diversity』で3月22日に発表されています。
目次
南限を超えて発見されたダニ
Twitterが新種発見の目になるかもしれない
南限を超えて発見されたダニ
今回報告されたのは、ハマベダニ属の新種です。 発見者は、千葉県松戸市に住む会社員の根本崇正氏。 根本氏は当時、休暇を利用して千葉県の銚子外港に釣りに来ていたといいます。 ただ、あまり釣れなかったため、暇を持て余して趣味の節足動物の写真を撮影してツイートしていたとのこと。 そこに写っていたのが、実は新種の生物だったのです。 法政大学の島野教授は、偶然このツイートを発見。 それがハマベダニ属の新種であることに気づいたそうです。 島野教授の研究チームは、2019年に日本で初めてハマベダニ属のダニを北海道から新種記載していますが、この生物は東アジアでは北海道より南では見つかっていませんでした。 つまり北海道が、この生物の地理的分布の南側の限界(南限)と考えられていたのです。 しかし、根本氏が撮影したハマベダニはそれよりさらに南の千葉県銚子で撮影されたものでした。 また画像は、既知種と形態が微妙に異なっており、このことから島野教授はこれが新種ではないかと考えたのです。Twitterが新種発見の目になるかもしれない
島野教授はすぐにTwitter上から根本氏に連絡をとり、数日後に銚子外港にダニの採取に向かったそうです。
お互い面識がなかったので、根本氏はTwitterのメッセージ機能を使いながら撮影場所を伝え、なんとか場所を特定した島野教授は、堤防からハマベダニを採取しました。
採取後、島野教授は共同研究チームのオーストリア・グラーツ大学のトビアス=プフィングスティル博士と、採取したダニを調べこれが新種であると確認されました。
この新種のダニは、国内で使う和名は「チョウシハマベダニ」と名付けられました。
そして学名は、Twitterがきっかけに発見されたことから「Ameronothrus twitter(アメロノトルス・ツイッター)」(「Ameronothrus」は属名としてつけることが決まっている名前)と名付けられたのです。
まんま過ぎてかなりインパクトのある名前です。
しかし、Twitterがきっかけで新種が発見されたのは、これが世界で2例目であり、また動物としての発見は今回が初となります。
(Twitterきっかけとなった新種発見の1例目は、デンマークの生物学者による菌類で、やはり学名はTwitterにちなんでつけられている。)
これは今後の世界においても、記念碑的な発見動物となるでしょう。
論文でもその件については触れられており、ソーシャルメディアの発展により、一般ユーザーの誰もが、新種の発見や生物多様性の解明に協力・参加できるようになったと述べられています。
また、こうしたSNSが時間のかかる新種の発見スピードアップを促し、科学の発展に繋がる可能性や、他にも未知の生物情報がSNSの中に埋もれている可能性などが指摘されています。
今この瞬間にも大量に投稿され続けているSNSの投稿。その中には科学者にとっては驚きの発見が隠れているのかもしれません。
参考文献
法政大学島野教授がTwitterの一般ユーザ投稿写真から偶然新種の海岸性ダニ類を発見.学名はTwitterに由来.(法政大学)
元論文
Ameronothrus twitter sp. nov. (Acari, Oribatida) a New Coastal Species of Oribatid Mite from Japan
提供元・ナゾロジー
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