ペン回しや貧乏ゆすり、毛先をいじる手遊びなどは、しばしば集中力を欠く行為として非難されがちです。

こうした落ち着きのないソワソワ行動を、英語で「フィジェッティング(fidgeting)」と呼びます。

フィジェッティングは、人の謎めいた行動の一つでしたが、近年の研究で、その身体的・精神的なプラス効果が認められ始めています。

私たちは何のためにソワソワ行動をし、どんな効果を得ているのでしょうか。

目次

ソワソワするのは「心のバランス」を取るため⁈
貧乏ゆすりは「幸せホルモン」を生み出す?

ソワソワするのは「心のバランス」を取るため⁈

フィジェッティングは、心理学的によく「注意力」と結びつけて捉えられます。

カリフォルニア大学デービス校の精神医学者、ジュリー・シュヴァイツァー氏は「取り組んでいるタスクの難易度が高く、過度に注意力を必要とする時、あるいは簡単すぎて注意力がほとんど必要ない時によく見られる」と言います。

一方で、あまり注意力を必要とせず、それでいて退屈すぎないタスクでは、フィジェッティングが見られません。

このことから、フィジェッティングには、心のバランスを取る「ホメオスタシス」としての効果があると指摘されます。

貧乏ゆすり、ペン回しなどの「ソワソワ行動」には、心のバランスを取る効果があった
(画像=ソワソワすることで心のバランスが取れていた? / Credit: jp.depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

ホメオスタシスは「恒常性」を意味する言葉で、身体を例にとれば、体温が高くなりすぎると、汗を流して冷やす機能などがそれに当たります。

簡単に言えば、シーソーの重心を真ん中(中立の位置)に戻すような働きのことです。

つまり、フィジェッティングには、注意力が高すぎると和らげ、低すぎると引きしめる効果があると言えます。

貧乏ゆすりは「幸せホルモン」を生み出す?

フィジェッティングは、ある時にはストレスを減らし、ある時には集中力を高めるのに役立ちます。

中でも貧乏ゆすりは、最近になってかなり多くのプラス効果を持っていることがわかってきました。

例えば、”幸せホルモン”と呼ばれるセロトニンは、音楽に合わせたストレッチやダンスなどの「リズム運動」で分泌が促進されます。

そして、このリズム運動に、足を規則的に上下させる貧乏ゆすりも含まれるのです。

セロトニンは、気分向上、感情のコントロール、ストレス軽減に深く関係しています。

睡眠不足や不規則な生活でセロトニンが不足すると、気分が落ち込み、ストレス障害や不安症、睡眠障害に陥ることがあります。

また、貧乏ゆすりは、足の血流のめぐりを良くする働きがあり、座る時間が長い人にもオススメです。

貧乏ゆすり、ペン回しなどの「ソワソワ行動」には、心のバランスを取る効果があった
(画像=ハンドスピナーでも効果あり / Credit: pixabay、『ナゾロジー』より引用)

この他にも色々なフィジェッティングがありますが、それぞれの具体的な効果は貧乏ゆすりほど明らかになっていません。

シュヴァイツァー氏は「どのフィジェッティングに最もリラックス効果や、集中力を高める効果を感じるかは、自分で試して模索するしかない」と話します。

中には、指先でつまんでクルクル回転させる「ハンドスピナー」に大きな効果を感じる人も多いようです。

フィジェッティングを日常の中で上手く活用すれば、タスクの効率アップが期待できるでしょう。

参考文献
popsci


提供元・ナゾロジー

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