アポロ計画、ケネディの暗殺、タイタニック号の沈没、アメリカ同時多発テロ…

こうした歴史の重大事件に必ずついて回るのが「陰謀論」です。

現在の新型コロナウイルスにしても、「中国が開発した生物兵器だ」とか「5Gが感染拡大を加速させている」といった陰謀論が、世界各地で発生しています。

なぜ人類は陰謀論を好み、信じやすい傾向にあるのでしょうか。

神経科学者のシャノン・オデール氏が、人の脳の構造から答えています。

目次

  1. なぜ人は「陰謀論」に惹かれるのか?

なぜ人は「陰謀論」に惹かれるのか?

陰謀論の中には「政府がエイリアンの存在を隠している」といったような、都市伝説的に楽しめるものもあります。

しかし、現在進行形で加熱する陰謀論は、火に油を注ぐ行為と同じです。

「新型コロナは5Gのせいで加速している」という先の例では、現に信奉者が5Gタワーに放火したり、従業員に暴行を働いたりしています。

またコロナワクチンに関しても、「有害物質が含まれている」とか「遺伝子コードを書き換えてしまう」と根も葉も無いウワサを立てて、研究を妨害しています。

なぜ陰謀論を過剰に支持する人が絶えないのでしょう。

陰謀論者は「無関係な点と点」を繋いでしまう

人類が「陰謀論」に惹かれやすいのは、脳の進化に原因があった!?
(画像=『ナゾロジー』より引用)

オデール氏によると、「人間の脳は、自分が生き残れる道(パターン)を見つけるように配線」されています。

例えば、木登りをしていて、これ以上体重をかけると折れそうな枝は自然に避けますし、黒く厚い雲が空にかかれば、嵐が来そうだと察知します。

私たちの脳は、常に身の回りの危険にアンテナを向けており、「ああすればこうなる」というパターン処理をしているのです。

人類が「陰謀論」に惹かれやすいのは、脳の進化に原因があった!?
(画像=『ナゾロジー』より引用)

しかし、人の脳は進化するにつれて発達し、パターンを見つけるのが上手くなりました。

とくに、大脳皮質や前頭前野など、知覚や画像処理にかかわる領域が高度に発達していったのです。

知能の向上には良いことなのですが、これが過剰に働きすぎることがあります。

オデール氏は「パターン処理が行き過ぎると、まったく関係のない点と点を繋いで線にしてしまいます。

これが陰謀論を信じやすい人の大きな特徴です」と指摘します。

ドーパミンの過剰分泌が原因?

人類はみな高度に発達した脳をもっているのに、なぜ一部の人だけが過剰にパターンを見るのでしょうか。

「これには、ドーパミンの過剰分泌が関係している可能性がある」とオデール氏は言います。

ドーパミンは、感情や認知、報酬にかかわる神経伝達物質で、意思決定(パターン処理)に強く関与します。

実際、過去の研究でも、遺伝的にドーパミンの生産レベルが高い人ほど、陰謀論を信じやすい傾向にあると判明しているのです。

人類が「陰謀論」に惹かれやすいのは、脳の進化に原因があった!?
(画像=『ナゾロジー』より引用)

また、近年の研究で、陰謀論を信じやすい性格特性も明らかになりつつあります。

代表的なのは、疑い深くて、他人をあまり信用せず、根本的に自分が住む世界を危険な場所だと考えている人です。

ドーパミンは、こうした感情や思考の傾向を強めると言われています。

陰謀を強める「確証バイアス」とは

以上のような傾向をもつ人々を陰謀論に走らせる最後の鍵が「確証バイアス」です。

確証バイアスは、社会心理学における用語で、自分の信念や仮説を証明する際に、それを支持する情報ばかりを集め、反対する情報はすべて無視する行動のことを指します。

人類が「陰謀論」に惹かれやすいのは、脳の進化に原因があった!?
(画像=『ナゾロジー』より引用)

とくに現代はSNSやネットの発達で、誤情報があちこちに散乱しており、自分に都合のいい情報だけを集めのが簡単です。

それから信奉者同士が集まってコミュニティを作り、陰謀論をますます加熱させていきます。

それが行き過ぎると、先にあげた放火や暴動といった過激行動に発展してしまうのです。

人類が「陰謀論」に惹かれやすいのは、脳の進化に原因があった!?
(画像=『ナゾロジー』より引用)

さらに、不安定で暗たんとした時代は、人々に「無力感」を与えます。

この無力感が、混沌とした社会や生活の中にデタラメな秩序を無理に見出そう(無関係な点と点と結ぼう)とさせるのです。

歴史の重大事に陰謀論があらわれるのは、人間の脳の働きと、混乱した社会情勢が組み合わさった結果と言えるでしょう。


参考文献

iflscience

sciencedaily


提供元・ナゾロジー

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