精神病質(英訳:psychopathy)とは精神障害の一種であり、良心の欠如やエゴイズムといった特徴をもっています。
特に現代では「サイコパス」という名称で多くの人に知られています。
最近、イギリス・ダービー大学に所属する心理学者ディーン・ファイド氏ら研究チームは、自然とのつながりが希薄で都市生活を好む人は、サイコパスレベルが高い傾向にあると発表しました。
研究の詳細は、2020年12月の学術誌『Journal of Environmental Psychology』に掲載されました。
目次
自然と暗い人格特性の関連を調査
サイコパスは自然とのつながりが希薄で都市生活を好む
自然と暗い人格特性の関連を調査
これまでの研究により、人は自然と接することで「精神的に良い影響が得られる」と判明しています。
ファイド氏も次のように述べています。
「自然とのつながりが強い人は健康である場合が多く、自分自身や自分の体のことをよく認識できています」
「また他者への共感度が高く、ストレスや不安、抑うつ症状などが少ないと分かっています」
では、サイコパスを含む「本質的に暗い人格特性」をもつ人は、いわば性格を明るくする「自然」とどんな関係にあるのでしょうか?
この点を調べるため、研究チームはクラウドソーシングサイトを利用してイギリスの成人304人に対する調査を実施。
参加者は「都市、郊外、田舎」の3つの選択肢から、どこに住むのが好きか答えました。
また、自然とのつながりや、暗い人格特性のレベルが評価されました。
加えて、1回目の調査結果を確かめるためにイギリスの235人を対象にした2つ目の調査も実施したとのこと。
サイコパスは自然とのつながりが希薄で都市生活を好む
調査の結果、暗い人格特性レベルの高い人は、郊外や田舎よりも都市生活を好むと判明。
その中でもサイコパスレベルの高い人は、男女ともに自然とのつながりが希薄でした。
逆に自然とのつながりが強い人はサイコパスレベルが低いようです。
そして今回の結果は、「サイコパスレベルの高いアメリカ住民は都市生活を好む」という2018年の研究結果とほぼ一致しています。
ちなみに「精神病質(サイコパシー)」は、一般の人々でもある程度もっている特性です。
サイコパスレベルの高い人が、メディアで強調されているような常軌を逸した性質を常にもっているわけではありません。
さて、今回の調査だけでは「なぜサイコパスレベルの高い人が都市生活を好むのか」という疑問を解消していません。
研究チームは、「サイコパス的特徴が自然とのつながりを減少させるのか」あるいは、「自然とのつながりの欠如がサイコパスレベルを増加させるのか」といった点の調査に関心をもっています。
今後の研究次第では、「自然とのふれあいを増やしてサイコパスレベルを下げる」といったサイコパス調整方法が生まれるかもしれませんね。
参考文献
Psychopathic tendencies linked to reduced connectedness to nature and a preference for city-living
元論文
Examining the connection between nature connectedness and dark personality
提供元・ナゾロジー
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