市販の水を買うと、ペットボトルに「硬水」や「軟水」という表記が見られます。
私たちが飲む水はこの2つに大別されますが、どういう違いがあり、それぞれどんなメリット・デメリットがあるか、ご存知でしょうか?
知らずに飲んでいる方も多いと思いますが、実は用途によって、硬水と軟水は強みがまったく異なります。
以下では、両者にどんな違いがあり、どういう場合にどちらを飲んだ方が良いのか、詳しく見ていきましょう。
目次
硬水と軟水を分けるものとは?
硬水:ミネラル豊富だけど、シャワーには向かない
軟水:肌にやさしく、炊飯にもピッタリ
硬水と軟水を分けるものとは?
硬水と軟水の違いは、「硬度」によって決められます。
硬度とは、水1リットルに含まれるミネラル分(カルシウムやマグネシウム)の量のこと。
ミネラルは体内で作られないため、飲料や食物から摂取しなければなりません。
WHO(世界保健機関)によると、硬度120ミリグラム以上が硬水、以下が軟水とされています。
アメリカの基準はもう少し細かく、0〜60が軟水、61〜120が標準水、121〜180が硬水、180以上が超硬水となっていますが、基本は120ミリグラムを境に硬水と軟水で分かれます。
どちらとも市販で簡単に飲めますが、軟水は日本の水に多く、硬水は主にヨーロッパの水に多いです。
どうしてかと言うと、日本の山地は傾斜が急で、雨や雪はそこを急速に流れ、ミネラル分が溶け込まないまま軟水となります。
逆に、ヨーロッパの山地は石灰岩が多く、傾斜が緩やかなため、雨や雪がゆっくりと石灰岩のミネラル分を吸収しながら流れるので硬水が多くなるのです。
たまにエヴィアンやコントレックスといった外国産の硬水を買って飲むと、口当たりが少し重くて、ほんのり苦味を感じると思います。
これは硬度が高いためです。
では具体的に、硬水と軟水にはどんなメリット、デメリットがあるのでしょうか?
硬水:ミネラル豊富だけど、シャワーには向かない
硬水のメリットは、とにかくミネラル分が豊富なこと。
ミネラルは、骨や筋肉の成長や、血圧の安定化、酵素の働きなどに寄与していますが、体内では生産されません。
そのため、手軽にミネラルを摂取するには、硬水がもってこいです。
一方で、飲みすぎるとお腹を下す恐れもあります。
それから調理用としては、洋風の煮込み料理に最適です。
硬水には、煮込んでいる肉の臭みを消したり、アクを出しやすくする効果があります。
その反面、素材の香りや出汁の風味をジャマしてしまうので、和食には向きません。
香り命のコーヒーや紅茶を淹れるのも軟水の方が適切です。
それから、硬水のデメリットは、過剰なミネラル分に由来します。
例えば、硬水を使ってシャワーを浴びると、ミネラル分のせいで髪がバサバサになったり、敏感肌にも良くありません。
海に入った後、髪がゴワゴワするのもこれと同じ理由です。
また、洗濯では衣類の傷みも原因になり、皿洗いでもミネラル分のコーティングが残ってしまいます。
私たち日本人の口にも合いづらいので、ミネラルを補給する目的でたまに飲むのが良いかもしれません。
軟水:肌にやさしく、炊飯にもピッタリ
軟水には、日本人からするとメリットがとても多いです。
まず、ミネラルが少ないので、髪や肌にやさしく、シャワーには最適です。
それから、先ほど指摘したように、素材の風味を活かした和食に向いています。軟水は無味無臭で、食材の旨味を引き出しつつ、風味のジャマはしません。
お米にも浸透しやすいので、ふっくらとした炊き上がりになります。
ちなみに、硬水はお米がパサパサして固くなるので、パエリアなどには向いています。
また、軟水はお腹にもやさしいので、胃腸が未発達な幼児には軟水を飲ませた方が良いです。ミネラルの豊富な硬水はお腹に大きな負担をかけてしまいます。
一方、軟水のデメリットは「ミネラル分が少ない」という以外、特にありません。
口当たりがやわらかで、苦味もなく、お米を主食とする私たちには軟水がベストでしょう。
ただ、食の欧米化が進む昨今において、硬水を使った方がいい場面も増えてきました。
こうしたメリット、デメリットを踏まえた上で、硬水と軟水を使い分けると生活の質も上がるかもしれません。
参考文献
What’s the difference between hard and soft water
提供元・ナゾロジー
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