個人年金の保険金を受け取ると雑所得となり所得税の対象になる。契約者と受取人の関係によっては贈与税になることもあるが、どのようなケースで税金の種類が変わるのだろうか。税金の計算方法についてもあわせて紹介したい。
個人年金保険にかかる税金は雑所得になる
個人年金保険で年金を受け取った場合に発生する税金は2種類だ。
個人年金保険が雑所得になるのは契約者と受取人が同一の場合
個人年金保険の年金を受け取ったときにかかる税金は、契約者と受取人の関係で異なる。契約者とは個人年金保険の保険料を支払う人のことだ。
個人年金保険の保険料を自分で支払い、自分が将来受け取る場合は、契約者と受取人が同一のパターンであり、受け取った年金は所得税の対象になる。
一方、夫が保険料を支払い妻が年金を受け取る場合など、契約者と受取人が異なるパターンでは、妻の受け取る年金資産は贈与税の対象となる。
契約者 | 年金受取人 | 課税される税金 | 例 |
---|---|---|---|
A | A | 所得税 | 契約者=夫 受取人=夫 |
A | B | 贈与税 | 契約者=夫 受取人=妻 |
所得税は毎年の年金額に少しずつ課税されるのに対し、贈与税は年金の受け取り開始時点の年金資産全部が課税対象になる。
贈与税がかかっても翌年以降の年金は雑所得として課税対象
個人年金保険の年金受取にかかる税金は契約者と年金受取人の関係で異なるが、贈与税は年金の受け取り開始初年度のみにかかる税金である。贈与税を支払っても翌年以降に受け取る年金は、雑所得として所得税の対象になることは知っておきたい。
2年目以降の年金が所得税の対象になるといっても、すでに贈与税として課税された年金資産は課税対象外である。年金資産は受取期間中も運用され少しずつ増えていくため、その増加分が所得税の対象になるのだ。
そのため2重で課税されることはないが、贈与税の税率は高く税金のことを考えれば契約者と受取人は同一にしておくほうがいいだろう。
個人年金保険の雑所得は他の所得と合算して総合課税される
所得の種類は全部で10種類あり、雑所得とは所得の一種だ。一般的なのは勤務先から得る収入である給与所得、事業運営から得る事業所得、賃貸不動産から得る不動産所得など。それぞれの所得は何から得た所得か明確に決まっており、どれにも当てはまらない所得は雑所得に分類され、個人年金保険の年金は雑所得に該当する。
雑所得には所得税がかかるが、給与所得など他の所得と合算されて税金が計算される総合課税の対象であり、個人年金保険以外からの所得もあわせて計算する。
個人年金保険の雑所得で所得税はいくらかかるのか
個人年金保険は契約者と年金受取人が同一の場合に雑所得として所得税がかかると説明したが、税金がどのくらいかかるのか計算方法を紹介しよう。
個人年金保険の雑所得と所得税の計算方法
個人年金保険の年金受け取りでどのくらい所得税がかかるのか、以下の条件をもとに具体的に計算した。計算の手順は基本的に2つだ。
手順1……個人年金保険の雑所得+その他の所得−所得控除
手順2……手順1の金額を所得税の速算表に当てはめる
<条件>
- 年金受取期間……10年確定
- 年金年額……93万円
- 年金以外の年間所得……300万円
- 保険料払込期間……25年
- 払込保険料総額……900万円(月々3万円)
総支給年金額……930万円
まず個人年金保険の雑所得を求めるには、以下の計算式が使われる。
(1)雑所得=総収入金額−必要経費
(2)必要経費=年金年額×払込保険料の合計額/年金の総支給見込額条件を計算式に当てはめてみよう。
(1)雑所得……3万円=93万円−90万円
(2)必要経費……90万円=93万円×900万円/930万円計算結果を手順1に当てはめるが、今回の所得控除は全員一律で適用される基礎控除38万円(2020年以降は最高48万円)のみを使用する。
手順1……3万円+300万円−38万円=265万円
手順2……手順1の金額を以下の所得税の速算表に当てはめる(2019年10月時点)。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
330万円以下 | 10% | 9万7,500円 |
695万円以下 | 20% | 42万7,500円 |
900万円以下 | 23% | 63万6,000円 |
1,800万円以下 | 33% | 153万6,000円 |
4,000万円以下 | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円超 | 45% | 479万6,000円 |
(※国税庁のホームページより筆者作成)
計算すると所得税は16万7,500円になるはずだ。利用できる所得控除や収入によって所得税額は異なるものの、手順は変わらないため自分の状況に合わせて計算してみてほしい。
個人年金保険を雑所得でなく一時所得として受け取る方法もある
個人年金保険の年金の受け取りは雑所得になるが、一括で受け取る場合は一時所得になる。一時所得も総合課税であり、課税対象になる金額は以下の計算式で算出される。
課税対象の一時所得=(一時所得の総額−払込保険料総額−特別控除額50万円)×1/2
一時所得には特別控除があり所得税が発生しないことがあるが、年金の受け取りと比べて総額の受取金額は少なくなる可能性もある。どちらが節税対策になるのかはその時の収入状況などにもよるため、気になる場合は専門家に相談してみよう。
文・國村功志(資産形成FP)
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