お金持ちの多くは「自分が100歳まで生きる」と考えている。
UBS Financial Servicesが100万ドル以上の投資可能な資産を保有する5000人のお金持ち(投資家)を対象に実施した健康に対する意識調査から明らかになった。

対象国は、米国、英国、ドイツ、イタリア、スイス、香港、シンガポール、台湾、メキシコ、アラブ首長国連邦。国・地域によって差は見られるものの、ドイツ、スイス、メキシコ、イタリアでは7~8割のお金持ちが自分は100歳まで生きると予測している。

「自分が100歳まで生きると思うか」という質問に対し、ドイツの投資家の76%、スイスの68%、メキシコの67%、イタリアの66%が「生きる」と答えた。一方、米国では30%、英国では32%、アラブ首長国連邦では45%と、国・地域によって差はあるようだ。

「お金持ちは長生きする」は本当だった

裕福な層と貧しい層では平均寿命に約10~15歳の差が出るという調査報告もある。調査ではその要因として「健康習慣の差」が挙げられているが、所得による生活スタイルや医療ケア、「健康で長生きしたい」という意識の差も大きいのではないだろうか。

多くの国・地域で平均寿命の伸びが見られている。OECDの調査によると、米国、中国、東欧州では平均余命が70代、日本や西欧州では80代まで延びている。

保有資産と寿命・余命の関連性はないように思えるが、実は貧富による寿命・余命格差は本当に存在するという。米国医師会(AMA)が2016年に発表した報告書によると、お金持ちは貧しい人よりはるかに長生きしている。これは納税記録や社会保障局から収集した1999~2014年のデータに基づき、その期間に死亡した40 ~76 歳の男性411万人、女性269万人の所得と死亡率の関連性を分析したものだ。対象者の年齢の中央値は53歳、所得の中央値は6.1万ドルだった。

その結果、最も裕福な層1%と最も貧しい層1%の寿命の差は、男性で14.6歳、女性で10.1歳も開いていることが分かった。2001~04年にかけて最も裕福な層5%の平均余命は、男性が2.34歳、女性が2.91歳延びているのに対し、最も貧しい層5%の平均余命は、男性が0.32歳、女性が0.04%しか伸びていない。低所得層の中でも、所得が低くなればなるほど、その差は開くという。

「健康に暮らせる期間が10年延びるなら、資産の48%を失ってもいい」

何が要因でこのような差が見られるのか。AMAは寿命・余命格差の要因を、健康習慣を結びつけている。喫煙や過度の飲酒との関連性は見られたが、医療サービスや物理的環境要因、所得格差、労働需給などとの関連性は見られなかったという。

一方、ワシントン大学は2017年、住んでいる地域によって米国の平均余命に差が出ると指摘している。こちらの調査は1980 ~2014年にかけて、米保健医療統計センターや米国国勢調査局などから収集したデータから、米国3110地域における平均余命を分析したものだ。平均余命が最も高いのはコロラド州の高級住宅地で87歳、最も低いのはサウスダコタ州の一部で66歳という結果が報告されている。

2つの調査結果を比較すると、物理的環境要因や所得格差などが、間接的に健康習慣の差を生みだしているのではないか――と考えられる。お金持ちの方が健康への意識が高いこと、また医療費にお金をかける余裕があることは、複数の調査から明らかになっている。

資産1000万ドル以上の投資家の年間医療費は、それ以下の投資家の4倍にのぼるという。また資産5000万ドル以上の投資家は「健康に暮らせる期間が10年延びるなら、資産の48%を失ってもいい」と答えた。健康のために犠牲にする資産の割合は資産額とともに減り、資産1000万以上5000万ドル以下は38%、200万ドル以上5000万ドル以下は36%、100万ドル以上200万ドル以下は32%だった。

お金持ちにとって健康維持は仕事のひとつ

UBSの調査では、回答者の90%が「富よりも健康が大事」、92%が「富のおかげでより健康な生活が送れる」と答えている。これらのお金持ちは医療費だけではなく、予防対策への投資も惜しまない。健康的な生活を心がけると同時に、定期的に医者の診察を受け、悪いところがあれば早期に治療する。

意外かも知れないが、健康維持は仕事のひとつと受けとめているお金持ちが多く、77%が「年をとっても出来るだけ長く働き続けることは健康によい」、63%が「健康のために出来るだけ働き続けるべき」と考えている。この傾向は特に香港やスイス、台湾、シンガポールで強い。

しかし闇雲に働き続けるのではなく、ライフワークバランスを重視している。仕事を続けながら労働時間を減らすというアプローチを好むお金持ちが過半数だ。66%は「休暇中は働かない」、62%は「週末は働かない」、50%は「仕事以外の時間は仕事関連の電話やメールを受けない」、37%は「休暇をとる」など、積極的にライフワークバランスをとっている。

こうした生活スタイルは全て、ある程度経済的に余裕があって初めて成り立つ。経済的な余裕がなければ、何歳になっても、例え体調が悪くても生活のために働かざるを得ない。病院に行くお金も時間もない高齢者もいる。ストレスは万病のもとというが、お金の心配は深刻なストレスの種になりかねない。そう考えると、所得格差は寿命・余命格差も生みだしているのではないだろうか。

文・アレン・琴子(英国在住フリーランスライター)/ZUU online
 

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