アイコンタクトによるコミュニケーションは人間同士だけでなく、人間と犬でも成立します。

実際、飼い主と犬がアイコンタクトをとると両者の愛情ホルモン「オキシトシン」のレベルが上昇し、絆を深めるのに役立つと言われています。

ハンガリーのエトヴェシュ・ロラーンド大学動物行動学部に所属するゾフィア・ボグナール氏ら研究チームは、アイコンタクトをとりやすい犬とそうでない犬の違いを明らかにしました。

研究によると、マズル(目から鼻)の長さや品種、年齢などが素早いアイコンタクトと関係しているとのこと。

研究の詳細は、4月29日付けの科学誌『Scientific Reports』に掲載されました。

目次
短頭種はアイコンタクトをとりやすい
犬種や年齢もアイコンタクトのとりやすさに影響を与える

短頭種はアイコンタクトをとりやすい

研究チームは、アイコンタクトの頻度や素早さに関係する要素を見つけるために、130頭の飼い犬でテストしました。

テストでは、犬が人とアイコンタクトをとるまでの時間を測定。また5分間でアイコンタクトをとった回数も数えました。

アイコンタクトは視覚によるコミュニケーションなので、犬の視覚に関係するいくつかの要素が調査項目として挙げられました。

アイコンタクトする犬としない犬の違いって…
(画像=マズルの長さによってアイコンタクトをとる早さが異なる / Credit:Zsófia Bognár, Scientific Reports(2021)、『ナゾロジー』より引用)

最初の項目は、マズルの長さです。

犬は鼻や口、アゴが前方に突き出しており、犬種によってその長さが異なります。

テストの結果、犬のマズルが短いほど、人とのアイコンタクトが素早くなると判明。

ボグナー氏によると、「ブルドッグやパグなどの短頭種は、網膜の中心領域の発達が顕著なため、その刺激にうまく反応でき、アイコンタクトをとりやすいかもしれない」とのこと。

一方、「グレイハウンドのようなマズルの長い犬は、視覚情報を処理する神経細胞が網膜に均等に分布しているため、広いパノラマ映像を見ることができる。ただし結果的には、視野の中心部以外に気をとられやすくなるのかもしれない」と付け加えています。

犬種や年齢もアイコンタクトのとりやすさに影響を与える

研究チームは、犬種による違いにも焦点を当てました。

例えば、牧羊犬は家畜を世話する際に飼い主の手やスティックの指示に従うため、視覚情報に敏感でなければいけません。

他には北極圏でそりを引っ張って走る「そり犬」や、アナグマを狩るために改良されたダックスフントなどの犬種があります。

彼らは飼い主のために働きますが、仕事の性質上、飼い主の姿は見えず、声による合図やにおいを頼りにします。

このように飼い主から得る視覚情報の重要性は、犬種によって大きく異なるのです。

研究チームの予想どおり、テストの結果は、「視覚情報を役立てて働く犬は、他の犬種に比べて素早くアイコンタクトした」というものでした。

アイコンタクトする犬としない犬の違いって…
(画像=アイコンタクトが得意な犬が選ばれやすいのかも / Credit:FamilyDogProject, Youtube、『ナゾロジー』より引用)

また、別の調査項目には「年齢」が挙げられました。

テストの結果、こちらも研究チームの予想通り、高齢の犬はアイコンタクトをとるのが遅いと判明。

これは高齢化により注意力のコントロールが難しくなったことが原因だと考えらえます。

今回の研究から、アイコンタクトが得意な犬とそうでない犬がいると分かりました。

特に短頭種の犬はアイコンタクトが得意なため、ペットショップでも飼い主さんの心を刺激して選ばれる可能性が高いのかもしれません。


参考文献

Shorter headed dogs, visually cooperative breeds, younger and playful dogs form eye contact faster

元論文

Shorter headed dogs, visually cooperative breeds, younger and playful dogs form eye contact faster with an unfamiliar human


提供元・ナゾロジー

【関連記事】
ウミウシに「セルフ斬首と胴体再生」の新行動を発見 生首から心臓まで再生できる(日本)
人間に必要な「1日の水分量」は、他の霊長類の半分だと判明! 森からの脱出に成功した要因か
深海の微生物は「自然に起こる水分解」からエネルギーを得ていた?! エイリアン発見につながる研究結果
「生体工学網膜」が失明治療に革命を起こす?
人工培養脳を「乳児の脳」まで生育することに成功