目次
<1. 諏訪大社とは>
<2. 諏訪大社のご由緒・ご祭神・ご利益、そしてパワースポット>
2.1 ご祭神
2.2 ご由緒
2.3 ご神徳
2.4 パワースポット
<3. 諏訪大社へのアクセス>
<4. 四社まいりその1「下社春宮」>
4.1 手水舎(ちょうずや)
4.2 神楽殿
4.3 筒粥殿(つつがゆでん)
4.4 御柱
4.5 幣拝殿(へいはいでん)と御神木
4.6 結びの杉
<5. 「下社春宮」周辺の見どころ>
5.1 下馬橋(げばばし)
5.2 浮島(うきしま)
5.3 万治の石仏(まんじのせきぶつ)
<6. 四社まいりその2「下社秋宮」>
6.1 温泉手水舎
6.2 根入り(ねいり)の杉
6.3 神楽殿・狛犬
6.4 御柱
6.5 幣拝殿・御神木
<7. 「下社秋宮」周辺の見どころ>
7.1 天覧の白松
7.2 さざれ石
7.3 綿の湯(わたのゆ)
7.4 宿場街道資料館
<8. 四社まいりその3「上社本宮」>
8.1 銅鳥居
8.2 入口御門・布橋(ぬのばし)
8.3 勅使殿(ちょくしでん)・五間廊(ごけんろう)
8.4 神楽殿
8.5 四脚門(しきゃくもん)
8.6 御柱
8.7 拝殿
8.8 宝物殿
8.9 明神湯
8.10 贄掛(にえかけ)の大ケヤキ
8.11 石灯籠
8.12 硯石(すずりいし)
<9. 四社まいりその4「上社前宮」>
9.1 神原(ごうばら)
9.2 本殿
9.3 前宮三の御柱・前宮四の御柱
9.4 十間廊(じゅっけんろう)
<10. 「上社前宮」周辺の見どころ>
10.1 水眼(すいが)の清流
10.2 前宮水眼広場と交流センター前宮
<11. 諏訪大社の七不思議とは>
11.1 諏訪湖の御神渡り(おみわたり)
11.2 元旦の蛙狩り(かわずがり)(上社)
11.3 高野の耳裂け鹿(こうやのみみさけじか)(上社)
11.4 宝殿の点滴(ほうでんのてんてき)(上社)
11.5 五穀の筒粥(ごこくのつつがゆ)(下社)
11.6 御作田の早稲(みさくだのわせ)(下社)
11.7 葛井の清池(くずいのせいち)
<12. 御柱大祭>
<13. 諏訪大社の御朱印>
<14. 諏訪大社の基本情報>
1. 諏訪大社とは
長野県に広がる諏訪湖。そこには南北をはさむように、北に下社(しもしゃ)春宮(はるみや)と秋宮(あきみや)、南に上社(かみしゃ)前宮(まえみや)と本宮(ほんみや)の二社四宮から成る諏訪大社が存在します。
全国1万有余ある諏訪神社の総本社として、地域だけでなく歴代の皇室および武門武将から厚く信仰され敬われる諏訪大社。
その創建は古く、国譲りの神話までさかのぼる日本最古の神社の一つであり、また神社の中でもっとも格式高い社格を与えられた「信濃国(しなののくに)一之宮」でもあります。
諏訪大社は、御祭神を祀る本殿が存在しない、「諏訪造り」というめずらしい構造を特徴としています。
その代わり、上社では神体山(守屋山)を、下社では御神木(春宮は杉の木、秋宮はイチイの木)を御神体として祀っています。
これは、日本古来の自然信仰に由来すると考えられています。
また諏訪大社を語る上で欠かせないのは、社殿の四隅に建てられた木柱の「御柱(おんばしら)」。拝殿に向かって右から一の柱、二の柱、三の柱、四の柱と社殿を取り囲むように時計回りに建てられています。
この御柱は、大の男衆1,000人以上がかりでようやく山から曳き(ひき)出し、建てられたものです。
2. 諏訪大社のご由緒・ご祭神・ご利益、そしてパワースポット
「お諏訪様」「諏訪大明神」の呼び名でも親しまれる諏訪大社。そのご由緒、ご祭神、ご利益、そしてパワースポットの由来について見ていきましょう。
2.1 ご祭神
ご祭神は以下の通りです。
- 建御名方神(たけみなかたのかみ・男神):大国主神(おおくにぬしのかみ、大黒様)の御子神
- 八坂刀売神(やさかとめのかみ・妃神):建御名方神の妃
- 八重事代主神(やえことしろぬしのかみ):建御名方神の御兄神、恵比寿様
2.2 ご由緒
『古事記』によると、国を譲るよう迫った天からの使者・建御雷神(たけみかづちのかみ)に戦いを挑んだ大国主神の次男・建御名方神(諏訪大明神)が戦いに敗れ、逃れた諏訪の地で二度とここから出ないと誓ったとされています。
また延長5年(927年)の『延喜式神名帳(えんぎしきじんみょうちょう)』には「南方刀美神社(みなかたとみのかみのやしろ)」と名神大社(みょうじんたいしゃ、大社の中でも特に霊験あらたかとされる神社)に名を連ね、信濃国一之宮として古代より知れ渡っていたことが伺えます。
2.3 ご神徳
建御名方神は水と風を司る神であり、雨風、水に関係のある農業・産業の守護神として、また航海の守護神としても敬われています。
そして、古くからの龍神信仰とも結びつき、「諏訪の龍神様」としても慕われています。
古くから歴代朝廷をはじめ武門武将から勝負の守護神、東関第一の軍さ神(いくさがみ)としても崇められる一方で、大国主大神の息子、夫婦で祀られていることから、縁結び・子授け安産・家内安全にもご利益があるとされています。
2.4 パワースポット
古墳や古代遺跡、寺社仏閣、巨石群など、聖地化されたランドマークが一直線上に並んでいる状態をレイラインと呼んでいますが、諏訪大社の場合、茨城県鹿島神宮がほぼ真西に位置し、霊峰富士と日本三霊山の立山とも一直線に結ばれています。
またスピリチュアル的に、「龍脈」と呼ばれる大地の気の流れが集まるポイントを「龍穴」と呼びますが、霊峰富士から流れ込む龍穴のひとつが諏訪大社にあるといわれています。
加えて、上社前宮周辺は、2つの大断層、東北日本と西南日本を分断するフォッサマグナの糸魚川―静岡構造線と、九州まで延伸する中央構造線が交わる場所に位置し、断層が衝突し合う場所には莫大なエネルギーが生まれるとされています。
以上のことから、諏訪大社の底しれぬポテンシャルとパワーがうかがえますね。
3. 諏訪大社へのアクセス
諏訪大社のご利益に最大限にあやかるなら「四社まいり」がおすすめ。回り方には特に決まりはありませんが、今回はおすすめの周遊ルートとして「下社春宮→下社秋宮→上社本宮→上社前宮」の順でご紹介します。
下社からスタートの場合、最寄りの駅はJR下諏訪駅です。
JR下諏訪駅までは、東京新宿駅からJR特急あずさ号、上諏訪駅経由で2時間半前後、高速バスの場合は、バスターミナル「バスタ新宿」から上諏訪・下諏訪方面へおよそ4時間で訪れることができます。
駅から下社春宮までは約1.3km、秋宮までは約850mほどであり、街歩きも楽しみたいなら徒歩移動がおすすめです。
もしもバスを利用する場合は、下諏訪駅前から下諏訪町循環バス「あざみ号」が発着しています。
また、下社参拝後に上社へ移動する場合、バスで移動されたい方はJR上諏訪駅へ向かいましょう。上諏訪駅からアルピコ交通にて上社本宮まで約30分です。
しかし、1日の本数が限られ、効率的とはいえないため、タクシー利用がおすすめ。その場合はJR茅野駅が便利で、茅野駅から上社本宮までは約3.4km、上社前宮までは約2.5kmです。
なお、四社は駐車場を完備しています。正月三が日は有料となる場合もありますが、基本的には24時間無料です。
4. 四社まいりその1「下社春宮」
それでは、下社春宮からスタートしましょう。
四社の中ではもっとも北に位置する下社春宮。静かな鎮守の杜に囲まれた春宮の社殿は、大隅流宮大工・柴宮(伊藤)長左衛門らによって手がけられ、幣拝殿の獅子や鶏、竹、竜などの彫刻は大隈流の傑作とされています。
春宮と秋宮は同じ社殿構造をしていますが、手掛けた宮大工が異なるため、その違いは彫刻に表れています。ぜひ注意してご覧くださいね。
4.1 手水舎(ちょうずや)
鳥居の手前にある手水舎。まずはここで手を清めましょう。鳥居をくぐったら、左周りが正式な参拝ルートです。
4.2 神楽殿
鳥居正面に位置する神楽殿。神様へ雅楽や神楽の舞を奉納する神聖な場です。
創建は江戸時代前期とされていますが、諏訪大社の中でももっとも改築が多く、最近では昭和11年(1936年)に大改修がなされています。
4.3 筒粥殿(つつがゆでん)
その年の作物の豊凶を筒粥で占う下社特有の御神事の一つ「筒粥神事」。その神事はここで執り行われます。筒粥については、後述の「諏訪大社の七不思議」の章をご覧ください。
4.4 御柱
7年に一度の「御柱祭」で山から曳き出される16本のモミの巨木の一柱です。社殿に護るように四隅に建てられています。
4.5 幣拝殿(へいはいでん)と御神木
御幣(ごへい、祭祀で用いる道具の一種)を奉ずる幣殿と拝殿が一体となった建物。見事な彫刻を施した中央の幣拝殿は二重楼門造りで、両翼は片拝殿といわれます。1780年に完成、国の重要文化財に指定されています。
春宮では幣拝殿の向こうに本殿に相当する宝殿(ほうでん)が東西2つ建てられ、その後方に御神木の杉の木を祀っています。
4.6 結びの杉
神楽殿の右側に立つ「結びの杉」。木の先で二股に分かれながらも根元で1つになっていることから縁結びの杉としても親しまれています。
5. 「下社春宮」周辺の見どころ
春宮周辺の見どころもおさえていきましょう。
5.1 下馬橋(げばばし)
鳥居正面にまっすぐにのびる春宮大門通りを遮るように建っているのが下馬橋(通称、太鼓橋)です。
神様の通り道として神事以外では通ることが許されず、かつてはどんなに偉い身分の方でもこの前で下乗下馬をしたことからこの名がついたとされています。
現在でも、年に二度(2月・8月)行われる「遷座祭(せんざさい)」で、神輿だけがこの橋を渡ることができます。
5.2 浮島(うきしま)
境内の西側を流れる清流・砥川(とがわ)。その川の中央にある小島が浮島と呼ばれ、浮島社が祀られています。浮島は、どんなに川が氾濫しても島が流されないという「下社の七不思議」の一つに数えられています。
5.3 万治の石仏(まんじのせきぶつ)
砥川に沿って浮島左手を5分ほど進むとふしぎな「万治の石仏」が鎮座しています。石像の大きさは高さ約2.6m、幅3.8m、奥行き3.7mにもなり、かの巨匠・岡本太郎氏も絶賛したとか。
万治の石仏には「物事を丸く収める」というご利益があるとされ、願い事を心で唱えながら石仏の周りを時計回りに3周し、最後に正面に戻って「よろずおさめました」と唱え一礼すると願いが叶うとされています。
6. 四社まいりその2「下社秋宮」
下社秋宮は春宮から南東へおよそ1.2km、徒歩16分程のところに位置しています。
下社秋宮周辺は、旧中山道と甲州街道が交わる交通の要衝であり、旅人を癒す温泉のある宿場町として栄えました。
境内マップは以下のとおりです。確かに、幣拝殿や神楽殿など構造が春宮と同じですね。
6.1 温泉手水舎
鳥居をくぐった右手には、温泉手水として有名な「御神湯(ごしんとう)」があります。龍神伝説にちなんだ龍の口から流れ出るのは天然温泉です。かなり熱めなので触れる際はご注意を。
6.2 根入り(ねいり)の杉
鳥居正面にそびえ立つのは、樹齢600年以上ともされる杉の巨木。杉の挿し木に根が生えたものなので「根入りの杉」とも、また、枝が垂れ、眠っているようにも見えるので「寝入りの杉」とも呼ばれています。
言い伝えでは、丑三つ時になると枝を下げて眠り、時に寝入りいびきすら聞こえてくることから、夜泣きをする子どもに木の小枝を煎じて飲ませるとよく眠れるといわれています。
6.3 神楽殿・狛犬
境内中央に建つのは、両脇に狛犬をしたがえた神楽殿です。天保6年(1835 年)、立川流宮大工二代目棟梁、立川和四郎冨昌により建てられました。
正面の大注連縄は御柱祭ごとに新しく奉製され、長さは約13mと、出雲大社型の注連縄では日本一を誇り、重量は約1トンもあります。また、両脇の狛犬は高さ1.7mで青銅製では日本一とされています。
6.4 御柱
春宮同様、社殿四隅に建つ御柱。一の柱とニの柱のみ拝むことができます。
6.5 幣拝殿・御神木
秋宮の幣拝殿もまた二重楼門造りで、左右に片拝殿を配しています。秋宮は、立川流宮大工初代棟梁 立川和四郎富棟によって安永10 年(1781 年)に建立されました。春宮とは異なるすばらしい意匠を眼にすることができます。こちらも神楽殿、片拝殿ともに国指定重要文化財です。
なお、秋宮の御神木はイチイの木となっています。
7. 「下社秋宮」周辺の見どころ
それでは下社秋宮にまつわるそのほかの見どころをご紹介します。
7.1 天覧の白松
幣拝殿右側に立つ松は中国原産のめずらしい三葉の白松で、日本に現存するのは30数本とか。
昭和39年(1964年)に天皇皇后両陛下が行幸の折にご覧になったことから「天覧の白松」と呼ばれています。
白松の下に落ちた3本につながった松の葉はラッキーアイテム。財布にしまうとお金が増えるといわれています。ぜひ気合いを入れて探してみてください。
7.2 さざれ石
境内右手の授与所近くにひっそり鎮座するのは、国歌「君が代」にも登場する「さざれ石」。さざれ石とは、元は小さな石の核が長い年月をかけて周囲の小石などを取り込み大きく成長した岩のこと。なかなかの貫禄です。
7.3 綿の湯(わたのゆ)
大断層の上にある諏訪地方は温泉の名所。中でも「綿の湯」は、神話にゆかりのある湯の一つ。
建御名方神とケンカをした妃の八坂刀売神が上社から下社へ移り住む際、化粧用にと真綿に浸した湯玉を持ち運んだところ、道中雫がこぼれ、そこに湧いたのが上諏訪温泉、さらに下社に着いて湯玉を置いた場所が「綿の湯」といわれています。
神聖な綿の湯は不浄の者が入ると湯口が濁ったとされ、下社七不思議の一つに数えられています。
7.4 宿場街道資料館
綿の湯正面の路地裏に入ると、江戸の商家の面影を残す「宿場街道資料館」があります。
当館はかつて宿場町として栄えた江戸後期の下ノ諏訪宿の歴史資料や当時をしのばせる浮世絵のレプリカ、幕末に起こった三大事件(皇女和宮降嫁、和田嶺合戦、赤報隊)に関する資料も展示しています。
入場は無料で、1階は無料休憩所として、2階がメインの展示室となっています。1階は秋宮まで通り抜けできますが、中庭の日本式庭園も見事なのでぜひ足休めにお立ち寄りくださいね。
■宿場街道資料館
- 住所:長野県諏訪郡下諏訪町3530-1
- 営業時間:9:00~17:00(最終入館16:30)
- 定休日:月曜日(祝日の場合は、翌日休み)
- 電話:0266-27-8827
8. 四社まいりその3「上社本宮」
いよいよ諏訪湖をまたいで上社に移動します。まずは本宮を参拝しましょう。
神体山(守屋山)を御神体とする上社では、下社とは社殿構造が大きく異なり、中部地方唯一といわれる原生林による鎮守の杜に囲まれています。
上社本宮の境内マップは次の通り。北参道側が比較的にぎわっているため正門のようにとらえられがちですが、正しくはマップでいうところの東参道側が正門となります。
ただし、2021年2月現在、東参道側を中心に保存修理事業が行われ境内半分が立入禁止となっています。ご注意ください。
※保存修理事業は2019年11月から2025年12月末まで予定されています
8.1 銅鳥居
東参道に設置された銅製の明神鳥居「銅鳥居」。高さは約8.8m、幅約7.3mで明治25年(1892年)に建立されました。2021年2月現在は修復作業中のため通行止めです。
8.2 入口御門・布橋(ぬのばし)
上社本宮でもっとも目を引く屋根付き回廊が「布橋」。約70mもの長い廊下は現人神(あらひとがみ)である「上社大祝(おおほうり、神職の中で最高職位の者)」だけが通った道とされ、その際、布を敷いたことから「布橋」と呼ばれています。
また、入口御門は江戸後期の作で欄間の彫刻の美しさとともに歴史的価値から平成28年(2016年)2月、国指定重要文化財となりました。
ただし、前述のとおり、現在は保存修復工事のため見ることはできません。
8.3 勅使殿(ちょくしでん)・五間廊(ごけんろう)
布橋のお隣、高い位置にあるのが勅使殿で低い方が五間廊です。勅使殿は古くは帝屋とも呼ばれ、朝廷からの使い(勅使)が着座し、五間廊は諏訪大社の神職が着座した場所とされています。
こちらも平成28年(2016年)2月に国指定重要文化財に含まれました。
8.4 神楽殿
北参道から入って左手にある建物が神楽殿で江戸後期の作です。かつては大々神楽や湯立神事が連日執り行われていたとされています。
中に安置された江戸時代の大太鼓は直径約1.8mで、今では年に一度、元旦の朝のみに打ち鳴らすものとされています。こちらも平成28年に国指定文化財に含まれています。
8.5 四脚門(しきゃくもん)
東西2つの御宝殿の中間に位置する四脚門は、天正10年(1582年)織田信長の兵火により一度消失していますが、慶長13年(1608年)に徳川家康が寄進したとされています。上社本宮の中ではもっとも古い建物といわれています。
8.6 御柱
本宮の御柱は、東参道正面から右手に二の柱、北参道正面から左手に一の柱があり、三の柱と四の柱は社殿奥の社叢内にあるため拝むことはできません。
8.7 拝殿
本宮では、参拝所から向かって左手に御宝殿が2つ、正面に拝殿、その後方に幣殿と続き、左右には片拝殿が配されています。
天正10年(1582年)に一度兵火で焼失しましたが、その後再興され、現在の社殿は立川流宮大工二代目棟梁 立川和四郎冨昌によって天保9年(1838年)に建立されたものです。
片拝殿にあしらわれた「笹に鶏」「粟穂(あわほ)に鶉(うずら)」の彫刻は立川流の最高傑作とされますが、あいにく、一般の参拝客は参拝所から内側へは立入り禁止となっています。
8.8 宝物殿
守屋山を背にして建っているのは宝物殿。奈良の正倉院を模して作られ、諏訪大社に代々伝わる貴重な宝物を保管、展示しています。
館内には、名刀「梨割の太刀(なしわりのたち)」や武田信玄が戦の折に鳴らし、また神事のみに使用された宝鈴の「鉄鐸(てったく、別名「佐奈伎(さなぎ)の鈴」)」、江戸時代の御柱祭の様子を描いた全長32mにもなる絵巻物などが展示されています。
8.9 明神湯
北参道鳥居のそばの手水舎から湧き出ている「明神湯」は結構熱めの天然温泉。諏訪明神ゆかりの温泉とされ、諏訪の温泉の源泉とも伝えられています。
8.10 贄掛(にえかけ)の大ケヤキ
東参道入口付近、二の御柱のそばに立つのが、推定樹齢1,000年ともいわれる大ケヤキ、通称「贄掛の大ケヤキ」。幹周り約8.7m、樹高約35mで諏訪市天然記念物に指定されています。
8.11 石灯籠
見つけたら恋が叶うかもとひそかに人気の隠れアイテム、石灯籠。側面のハートの意味は、古くから伝わる魔除けを表す猪目(いのめ)型です。
残念ながら、この石灯籠のある周辺もまた現在、立入禁止となっています。
8.12 硯石(すずりいし)
四脚門から遥拝する脇片拝殿の屋根上に見えるのが硯石。この石の凹面は常に水を湛え、また古い文献によると諏訪明神はこの石の上に降臨したとされています。
もっとも神聖視される石の一つですが、こちらも四脚門が修復工事中のため遥拝することができません。
9. 四社まいりその4「上社前宮」
いよいよラストの上社前宮です。本宮からは南東の方角へ約1.6km移動します。
上社前宮は、諏訪明神がはじめて諏訪の地に降り立った場所とされ、信仰発祥の地といわれています。もとは上社大祝代々の居館があった場所で、大祝の儀式を行う場所であると同時に諏訪地域の祭政の中心地でもありました。
前宮は四社の中でもっとも規模が小さく素朴な造りですが、ほかの三社と違って本殿があり、4本の御柱をすべて拝むことができるユニークな構造をもっています。
前宮周辺のガイドマップは以下のとおりです。
9.1 神原(ごうばら)
県道に面した鳥居から一段高くなっている一帯は、かつて上社大祝の居館である「神殿(ごうどの)」とそれに付随する神事を執り行う建物が並んだ「神原」と呼ばれる場でした。
室町時代中期に大祝が居館を他に移したため、以後は祭儀のみが受け継がれています。
9.2 本殿
さらに坂を登った山の中腹に本殿が鎮座します。現在の本殿は、昭和7年(1932年)、伊勢神宮から下賜された御用材で建てられたもので、本殿後方にある小高い場所は諏訪明神の墳墓と伝えられています。
9.3 前宮三の御柱・前宮四の御柱
前宮は四社の中で唯一、三の柱と四の柱を間近で見ることができます。本殿後方左手に二の柱が見えますね。
本殿後方右手には四の柱が建っています。本殿をぐるっと回って4本とも拝めるのは貴重な体験です。
9.4 十間廊(じゅっけんろう)
二の鳥居の左手に建っているのが、かつて「神原廊(ごうばらろう)」と呼ばれ、今でも上社最大の神事「御頭祭(おんとうさい)」が行われる「十間廊」です。
御頭祭は「酉の祭」とも呼ばれ、毎年4月15日には75の鹿の頭と鳥獣魚類等を供えるのがならわしとされていますが、現代では鹿肉と鹿の頭の剥製で代用されています。
10. 「上社前宮」周辺の見どころ
上社前宮」周辺の見どころは以下の通りです。
10.1 水眼(すいが)の清流
本殿脇を脈々と流れる清流は「水眼」と呼ばれ、御神水として古くから親しまれています。その源流はここから1km先の守屋山山中にあるとされています。
10.2 前宮水眼広場と交流センター前宮
前宮本殿へ向かう途中、2020年6月に完成した都市公園「前宮水眼広場」。水眼の清流を引き入れて親水池や水路、水車を設置し、芝生広場が広がる憩いの場となっています。
併せて「交流センター前宮」もオープン。入場無料で、展示スペースには諏訪大社にまつわるパネル展示、多目的スペースでは「茶房すいが」が週末限定でオープン。珈琲や茅野特産の寒天を使った甘味メニューなどが楽しめます。
■交流センター前宮
- 住所:長野県茅野市宮川安国寺2042
- 開館時間:10:00~16:00
- 定休日:無休
- 電話:0266-72-2101 (茅野市都市計画課)
■茶房すいが(交流センター前宮内)
- 営業日:毎週金曜日、土曜日、日曜日
- 営業時間:交流センター前宮に準ずる
11. 諏訪大社の七不思議とは
諏訪大社には、古くからまことしやかな「七不思議」が伝えられています。
厳密には上社下社それぞれに七不思議が存在しますが、今回は全体として語られる「諏訪大社の七不思議」をご紹介します。
11.1 諏訪湖の御神渡り(おみわたり)
厳冬期、諏訪湖が全面結氷した際に現れる氷の自然現象が「御神渡り」とされています。伝説では、上社の建御名方神が下社の八坂刀売神のもとへ通った道筋といわれ、御神渡りの認定は八剱(やつるぎ)神社が毎年行っています。
残念ながら2021年は発生せず、これで3季連続の出現ならずとなりましたが、来年こそは期待したいですね。
11.2 元旦の蛙狩り(かわずがり)(上社)
毎年元旦に行われる「蛙狩り神事」。神前にお供えする二匹のカエルは、上社本宮横を流れる御手洗川の神橋付近で、氷を砕き川底を掘ると、どんなに寒い年でもなぜか捕まえることができるとされています。
11.3 高野の耳裂け鹿(こうやのみみさけじか)(上社)
上社前宮の十間廊で行われる御神事「御頭祭」。かつては75もの鹿の頭が神前に供えられ、その中には必ず耳の裂けた鹿が混じっていたといわれています。
11.4 宝殿の点滴(ほうでんのてんてき)(上社)
上社本宮の御宝殿は、どんなに晴天が続いても屋根から最低三滴は雫が落ちるといわれ、また日照りの際には、その雫を青竹に入れて雨乞いすると必ず雨が降ると伝えられています。
11.5 五穀の筒粥(ごこくのつつがゆ)(下社)
毎年1月14日の夜、五穀(米・麦・粟・キビ・豆)を詰めた葦製の筒を米と小豆と一緒に鉄釜で一晩中炊き上げます。44本の葦筒のうち、43本は農作物の豊凶を占い、残り1本は世の中の吉凶を占うとされていますが、その占いがよく当たるとして、遠方からも結果を聞きに訪れたとか。
11.6 御作田の早稲(みさくだのわせ)(下社)
下社にある御作田社の境内には今でも斎田(さいでん、神に捧げる米を栽培する田)があり、毎年6月30日に田植えが行われます。ふしぎなことに、田植えを行ってわずか1ヶ月で穂が実り、8月1日には神前にお供えできたといわれています。
11.7 葛井の清池(くずいのせいち)
毎年12月31日の大晦日、上社本宮の御神事で使われた道具類などを、茅野市上原にある葛井神社の池に沈めると、翌元旦には遠州(現在の静岡県)佐奈岐(さなぎ)池に浮かび上がるといわれています。
また、葛井の池には片目の鯉が生息しているとも伝えられています。
12. 御柱大祭
天下の大祭、または日本三大奇祭の一つとされる「御柱大祭」について紹介します。
正式名称は「式年造営御柱大祭」。7年毎の寅と申の年に、20万人を上回る諏訪地方の氏子総出で祭りを盛り上げる、勇壮無双の諏訪大社最大の神事です。
その歴史は古く、804年の桓武天皇の時代までさかのぼります。1本が直径約1m、長さ約17m、重さ約10tにもなるもみの巨木を、上社下社それぞれ8本ずつ、計16本を山から切り出して里へ曳き、最後には各社殿を囲むよう四隅に建てられます。
大祭の年の4月に巨木を山から里へ曳く「山出し」、5月に里から各社殿へ曳き建てる「里曳き」が行われ、それが終了すると、今度は諏訪地方の各神社では御柱祭(小宮祭)が行われます。
次回の御柱大祭は令和4年(2022年)となっています。
13. 諏訪大社の御朱印
諏訪大社では四社それぞれが異なる御朱印(500円)を授与しています。四社すべてコンプリートした方にはオリジナルの参拝記念品がもらえます。
2021年2月現在はこのご時世に合わせてオリジナルマスクだとか。これでコロナ除けも安心ですね。
14. 諏訪大社の基本情報
大地のパワーとふしぎが詰まった信州最大のパワースポット・諏訪大社。ちょっと元気が足りないとき、運気を上げたいときにぜひ、四社まいりで運気アップとエナジーを補給しに出かけてみてくださいね。
それでは、諏訪大社に関する基本情報です。
住所:
上社本宮 長野県諏訪市中洲宮山
上社前宮 長野県茅野市宮川2030
下社春宮 長野県諏訪郡下諏訪町193
下社秋宮 長野県諏訪郡下諏訪町5828定休日:年中無休
電話番号:
上社本宮 0266-52-1919
上社前宮 0266-72-1606
下社春宮 0266-27-8316
下社秋宮 0266-27-8035駐車場:無料
上社本宮:東参道駐車場 普通車80台、北参道駐車場 普通車270台/バス10台
上社前宮:前宮前交差点駐車場 普通車30台、社務所前駐車場 普通車20台
下社春宮:春宮駐車場 普通車50台
下社秋宮:秋宮駐車場 普通車130台アクセス:
<車利用の場合>
◎東京高井戸ICから中央自動車道諏訪ICより所要時間約2時間
◎名古屋ICから中央自動車道諏訪ICより所要時間約2時間30分
<鉄道利用の場合>
◎東京新宿駅からJR特急あずさ号で上諏訪駅、下諏訪駅まで約2時間半前後
<高速バス利用の場合>
◎東京新宿から利用の場合、バスタ新宿バスターミナルから高速バスにて下諏訪駅直行で約3時間50分
※本記事は2021年2月に取材した記事です
文・写真 かわいまゆみ/提供元・たびこふれ
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