はげを治せる時代が来るようです。
2月10日に『Scientific Reports』に掲載された論文によれば、自然な毛のようには生え変わり能力を有するマウスの毛組織(毛包)を人工的に培養できたとのこと。
この技術を人間の細胞に応用することで、はげの根本的な治療法になると期待されます。
目次
はえ変わり能力を獲得
周期的な再生をうながす特殊な培養液
再生医療ではげを治す
はえ変わり能力を獲得
はげは治療が困難な難病です。
近年になってミノキシジルなど有用な治療薬が開発されていましたが、これらの薬は主に薄毛の治療のためであり、完全に死滅した毛穴には効果がありませんでした。
しかし近年の再生医療の進歩により、幹細胞から生きた毛包を培養することが可能になってきました。
毛包とは毛の生産をつかさどる器官で、培養した毛包を皮膚に移植することで、頭皮に新たな毛穴を作ることが可能になります。
ただ既存の技術で作られた毛包は、自然な毛の生え変わりまでは再現できていませんでした。
生え変わり能力が欠如したままでは頭髪を維持できず、真のはげ治療に到達することはできません。
しかし今回、日本の理化学研究所の研究者たちは、より自然で周期的な毛の生え変わりが可能な毛包の作成に成功したのです。
いったいどんな手法が使われたのでしょうか?
周期的な再生をうながす特殊な培養液
研究の鍵となったのは、特殊な培養液でした。
研究者たちは220通りにもおよぶ様々な条件を検討することで、周期的な毛の生え変わりに必要な細胞の培養条件(NFFSE培地)を発見します。
またこの新たな培地は増殖力にも優れており、1つの毛包から取り出した細胞で、新たに100個の毛包を作成することが可能です。
ですが、まだこの段階では培養条件が明らかになっただけであり、周期的な毛の生え変わりが何によって引き起こされているかは、わかっていませんでした。
そこで研究者たちは、NFFSE培地で培養した細胞を、他の培地で培養した細胞を比較しました。
結果、生え変わりを起こす毛包細胞では「CD34」「CD49f 」そして「Itgβ5」の3つの因子(細胞マーカー)が存在していることが示されました。
再生医療ではげを治す
今回の研究により、より自然な周期的な生え変わりを行う毛穴の再生方法が示されました。
自然な毛では、上の図のように毛包は再生を退縮を繰り返しすことで、周期的な生え変わりを起こしています。
研究者たちは今後、より効率的な毛包再生手段の確率を目指していくとのこと。
技術が完成すれば、人類はついに、根本的にはげを治すことが可能になります。
また新たに発見された3つの要因(CD34・CD49f ・tgβ5)の存在は、個人の毛の再生能力が事前に測定可能であることを示します。
もしかしたら将来の薬局には、はげるリスクの検査薬が売られているかもしれませんね。
参考文献 A recipe for cyclical regeneration of bioengineered hair
元論文 Expansion and characterization of epithelial stem cells with potential for cyclical hair regeneration
提供元・ナゾロジー
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