歴史の振り返りからみるカワサキのバイクの魅力
日本でもっとも古い歴史を持つバイクメーカー
カワサキこと川崎重工業は日本のバイクメーカーでもっとも歴史が古く、1878年に東京・築地で川崎築地造船所として創業したのが始まりだ。創始者の川崎正蔵は、日本国郵便蒸汽船会社勤務時代に経験した幾多の海難事故から、和船より西洋船の信頼性に興味を持ったことが造船所設立のきっかけである。1902年には必要十分な広さと設備確保のため、新たな工場を兵庫県神戸市に建設した。
商船にとどまらず戦艦、潜水艦、航空機、蒸気機関車、バス・トラック、さらに鉄製橋梁といった大規模建築物も手掛けるようになった1939年、社名を現在まで続く川崎重工業株式会社に変更した。
しかし敗戦によって日本は連合国に航空機製造を禁じられた。そこで川崎重工の航空機開発でもあった川崎航空機工業のエンジニアと技術を活用すべく、1953年には川崎明発工業(メイハツ)として、バイク用の小排気量エンジン・KBを開発。翌年には川崎岐阜製作所から60cc空冷2st単気筒エンジンを搭載するスクーターを発売した。カワサキマークを冠した二輪車としてはこれが初号機だ。
1955年にはドイツ車を模範とした実用車・メイハツ125-5を発売。翌年以降にデラックス、スーパー、エース、ローズ、クラウンといった2st単気筒エンジン搭載モデルを発売し、80~250ccまでモデルラインナップを拡大した。
高性能バイクの源は多彩な分野のテクノロジー開発
1960年には経営悪化に陥っていたメグロ(目黒製作所)が川崎航空機工業と提携。500cc空冷4st並列2気筒エンジンを搭載するKSスタミナスポーツを受注生産し、大排気量スポーツモデルにも乗り出す。そして1965年、メグロを吸収した川崎航空機は、英国車を模範としたメグロの血統を色濃く受け継ぐカワサキ500メグロK2を発売する。さらに翌年、ダブワンの愛称で親しまれた650W1を発売。1969年には川崎航空機は川崎重工と合併し、同年にH1を発売した。そして1972年のZ1によって、世界最速の性能を持つ本格的なスポーツバイクメーカーとしての地位を確立したのである。
現在もバイクのみならず航空宇宙、鉄道車両、船舶、精密機械やロボットなど、重工業製品を多角的に開発・製造している。カワサキの魅力は、徹底した高性能スポーツバイクの開発というだけでなく、日本はもとより世界の科学発展に貢献する多彩なテクノロジーを、高性能バイクへフィードバックできる体制にもある。これは世界に数多あるバイクメーカーで唯一、カワサキだけが持つ特徴なのだ。
2020年最大の話題「Ninja ZX-25R」の魅力に迫る!
今年最大の話題となっている「Ninja ZX-25R」の魅力を探るうえで、カワサキのネイキッドの進化の歴史を抜きには語れない。そこで、ネイキッドに端を発しスーパーネイキッド、スーパーチャージャーなど、最新モデルとともに紹介する。
カワサキの新型モデルで人気・定番の車種はこれ!
カワサキの人気車種といえば、「Z」と「W」、そして「Ninja(ニンジャ)」で、現行ラインナップのほとんどがこの3シリーズだ。
Zシリーズは1972年発売のZ1を元祖とするスポーツバイクで、いわゆるネイキッドだ。125~1000ccの排気量バリエーションがあり、計10車種がそろう。街乗りからツーリングまで使える万能なバイクで、特に人気なのは2018年に発売されたZ900RSだ。Z900をベース車として、Z1のスタイルを踏襲するネオクラシックネイキッドで、発売以降の2年間で国内販売台数ナンバーワンを記録するほどである。
Ninjaシリーズは1984年発売のGPZ900Rが元祖で、エンジンの水冷化をはじめとして当時の最先端テクノロジーを投入することで世界最高速の性能を実現した。Ninjaというペットネームは北米で生まれたもので、これ以降ZZR1100系列のメガスポーツやZX-9Rなどスーパースポーツに冠されるようになり、今や北米のみならず世界中で使用されるようになっている。現行車種では250~1000ccまでのバリエーションがあり、フェアリングを装備した高性能なスポーツバイクであることを特徴とする。エンジンは並列4気筒搭載モデルと並列2気筒搭載モデルがある。
Wシリーズは1966年発売の650W1を祖とするバイクで、シリンダーが直列したバーチカルツインと呼ばれる空冷並列2気筒エンジンを搭載する、クラシカルなデザインが特徴のバイクだ。数度のモデルチェンジを経て1974年に生産終了となったが、1998年にW650として復活。現在ではW800シリーズとして、スタンダード、ストリート、カフェの3車種がラインナップされている。
カワサキの話題・人気のモデルをインプレッション
『ライダースクラブ』編集部が選んだ旬のモデルを試乗レポートする「R/Cインプレッション」。乗り心地はもちろん、注目すべきディテールやスペックなど、多彩なインプレッションライダーによる研ぎ澄まされたレポートをお届けする。
カワサキといえば Zシリーズ
Zシリーズの歴史は、1972年に発売されたZ1からはじまった。正式な車名は900Super4だが、型式であるZ1という呼び名が定着しており、今なお高い人気を誇る。中古車相場は200~300万円前後と非常に高価なことがそれを示している。
当時の日本には最大排気量750ccというメーカー自主規制があったため、国内ではそれに合わせたZ2(750RS)が1973年に発売された。“ゼッツー”の愛称で親しまれ、漫画『あいつとララバイ』などが人気に拍車をかけた。Z1が北米や欧州など世界で販売されたことに対して、Z2は日本国内のみだったため生産台数が少なく、それゆえに現在の中古車相場はZ1よりも100万円ほど高い。
Zシリーズはその後、排気量を拡大しながらZ1000、Z1-R、Z1000GPと進化していき、空冷エンジン搭載車としては1983年発売のGPZ1100が最終モデルとなる。
厳密にいえばZシリーズではないものの、1989年発売のゼファーは、Z1のスタイリングとコンセプトを強く意識しており、Zシリーズを語るうえで欠かせない。Zシリーズの空白を埋める重要なバイクだ。全盛を誇ったレプリカブームにピリオドを打ち、ネイキッドという新たなカテゴリーを生み出した功績は大きく、カワサキだけでなく日本のバイク史に残る名車でもある。
排ガス規制に対応するべくエンジンが水冷化された新生Zシリーズは、2003年発売のZ1000で誕生した。これはスーパースポーツであるZX-9Rをベース車とするストリートファイターで、サーキット直系の過激な走行性能が特徴だ。翌年にはミドルクラスとなるZ750も登場する。
Zシリーズは現代的なネイキッドあるいはストリートファイターとして進化していく。特に2014年に発売された、4代目となるZ1000は「凄み」をコンセプトとした大胆で迫力あるエクステリアも話題を呼んだ。そして2018年、Z900をベース車としてレトロデザインを採り入れたネオクラシック、Z900RSを発売。Zシリーズの力強さに加えて親しみやすさをプラスし、Zという名車の懐の広さを見せつけたのだ。
幅広いユーザーに愛されるNinja(ニンジャ)シリーズ
Ninja(ニンジャ)は1984年発売のGPZ900Rにつけられたペットネームだ。当初は予定になかったが、主たる市場である北米カワサキの強い要望によって実現したものである。初代NinjaことGPZ900Rは、映画『トップガン』でトム・クルーズが走らせたことで大人気モデルとなった。
しかし当時の日本では750ccというメーカー自主規制があったため、GPZ900Rは日本で生産されて北米などに輸出したものを日本へ送り返す“逆輸入車”という形態で国内販売された。
「NinjaといえばGPZ900Rだ」というカワサキファンの認識は今も根強いが、北米仕様では1986年のNinja400R(日本仕様はGPZ400S)やNinja ZX-11(日本での車名はZZR1100)のようにペットネームではなく車名として冠されるようになり、アメリカではカワサキ=Ninjaのイメージが定着していった。現在の北米カワサキやタイやマレーシアなどASEAN諸国のウェブサイトでは、Ninjaシリーズが筆頭となり最新ラインナップがカテゴライズされているほどである。
そして2008年、Ninja250Rの登場によって、Ninjaというペットネームは世界各国に展開するグローバルなフルフェアリングスポーツバイクの車名として採用される。これ以降、Ninjaを車名とするシリーズが構成され、並列2気筒の250cc、400cc、650cc、並列4気筒の600cc、1000ccのエンジンバリエーションを持つほか、Z1000をベース車とするスポーツツアラーのNinja1000やスーパーチャージドエンジンを採用するH2も加わった。また、2020年5月時点で開発中の250cc並列4気筒エンジンを搭載するZX-25RもNinjaシリーズに加わる予定で、ますますその魅力を高める。
Zシリーズ同様、Ninjaシリーズもモデルバリエーションの豊富さが特徴であり魅力だ。エンジン型式と排気量の選択肢の多さに加えて、それぞれに異なる走行特性が与えられ、サーキット走行を存分に楽しめるスーパースポーツ、高速巡航からワインディングまでエキサイティングに走れるスポーツツアラー、街乗りからツーリングまでバイクの面白さを全身で味わえる小~中排気量モデルと幅広い。上位モデルには電子制御技術も惜しみなく投入され、カワサキの最新テクノロジーによる安全性と快適性も体感できる。
カワサキの中古車市場の状況は?
中古車市場には幅広い年代のカワサキがそろっている。ゼファーやバリオスといった90年代ネイキッド、ニンジャ250を中心としたNinjaシリーズ、Wシリーズやエストレヤのネオクラシック、クルーザーのバルカンシリーズ、大人気のZシリーズなど、豊富なカテゴリーと排気量から選ぶことができる。
とはいえゼファーやバリオスは90年代に生産された車両だけあってタマ数は減少傾向なうえ、経年劣化も進んでいる。交換用部品の有無も含め、近隣で信頼できるショップを探すところから始めたい。
Ninjaシリーズのなかではタマ数も多く、比較的高年式が多いNinja205Rはビギナーにも最適。ビッグネイキッドならZRX1200ダエグは高年式かつタマ数も豊富で、価格相場の中心は100万円前後となっている。
Z900RSはカスタム業界でもアツい!
今もっともアツいカワサキといえばZ900RSで、ネオクラシックなネイキッドだけにカスタムの幅は広い。
Z系カスタムの定番といえるドレミコレクションには、Zらしいスタイルを強調する外装パーツが豊富にそろっている。カーボンや切削アルミパーツをふんだんに使うことで、これまでの国産マルチカスタムとは一線を画すモトコルセのパーツ群も魅力だ。足周りの軽量化を図れるマグタンホイールを使いつつ、Z系のハンドリングを再現する18インチ化などで走行性能と機能美を追求する、ビトーR&Dも要チェックである。ドレミ、モトコルセ、ビトーは、Z900RSが国内初公開となった際に、カスタム車両を先行開発することで同時発表された実績を持っている。
※この記事は2020年5月現在の情報を元に作成をしております。モデルや価格、中古車相場価格など変更となる場合がございますのでご了承ください。
提供・FUNQ/RIDERS CLUB
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