カブトムシは夜行性の昆虫です。

夜中にカブトムシを捕まえに行ったことのある方も多いでしょう。

しかし、外来植物に注目すれば、昼でも簡単に捕まえられるかもしれません。

埼玉県杉戸町の柴田さん(6年生)は、独自の調査で、外来植物のシマトネリコに集まるカブトムシが昼間も活動を続けることを発見しました。

共同で研究を発表した山口大学の小島渉氏は「カブトムシが夜行性であるという常識を覆す重要な発見」と述べています。

研究は、4月13日付けで『Ecology』に掲載されました。

目次
外来植物が日本のカブトムシの活動リズムを変えた

外来植物が日本のカブトムシの活動リズムを変えた

カブトムシは普通、夕方頃にクヌギの樹液に飛来し、深夜0〜2時に数がピークを迎えます。

そして、早朝の5時頃には大部分がクヌギから離れていきます。

しかし近年、東南アジアを原産とする外来植物「シマトネリコ」が日本に入ってくるようになりました。

シマトネリコはクヌギ同様に多くのカブトムシを惹きつけます。

柴田さんは、庭木のシマトネリコに集まるカブトムシの個体数を、2019年と2020年の2シーズンにわたって計測しました。

計測は1日に3〜5回、早朝から深夜まで続けたとのことです。

その結果、カブトムシの数は深夜0時にピークを迎えるものの、完全に夜が明けても多くがシマトネリコに残ることを発見しました。

日本の小学生が大発見!外来植物によりカブトムシが「昼行性」になると明らかに
(画像=シマトネリコに集まるカブトムシ / Credit: 山口大学、『ナゾロジー』より引用)

また2020年には、各個体の詳しい活動パターンを知るため、162匹に番号をつけて追跡調査。

結果、カブトムシの多くが夜間に飛来し、数が最も少なくなる正午頃でも、ピーク時の半分が採餌や交尾を続けていました。

中には24時間以上も同じ場所に留まった個体もいたようです。

こうした活動パターンは、クヌギで見られるものとはまったく違います。

興味深いことに、台湾に自生するシマトネリコに集まるカブトムシはすべて夜行性です。

つまり、日本のカブトムシでは、これまで利用しなかったシマトネリコによって活動パターンが変化したことを意味します。

小島氏は「この発見は、利用する植物種と昆虫の活動リズムの関係を解明する上でも注目すべきもの」と指摘しました。

日本の小学生が大発見!外来植物によりカブトムシが「昼行性」になると明らかに
(画像=観察をする柴田さん / Credit: 山口大学、『ナゾロジー』より引用)

一方で、シマトネリコに集まるカブトムシがなぜ日中まで活動を続けるのかは分かっていません。

可能性としては、シマトネリコの樹液がクヌギより栄養価が低い場合、満腹になるまで時間がかかるという説。

あるいは、シマトネリコの樹液にカブトムシを留まらせる成分が入っているという説があげられています。

それから、柴田さんの観察によると、シマトネリコの周囲ではカラスに食べられたカブトムシの死骸がよく見つかったとのこと。

これは日中に活動することで天敵から狙われるリスクが高まっていると考えられます。

こうしたネガティブな面も含めて、外来植物がカブトムシの生態に与える影響を理解する必要があるでしょう。


参考文献

外来植物がカブトムシの活動リズムを変化させる

元論文

An introduced host plant alters circadian activity patterns of a rhinoceros beetle


提供元・ナゾロジー

【関連記事】
ウミウシに「セルフ斬首と胴体再生」の新行動を発見 生首から心臓まで再生できる(日本)
人間に必要な「1日の水分量」は、他の霊長類の半分だと判明! 森からの脱出に成功した要因か
深海の微生物は「自然に起こる水分解」からエネルギーを得ていた?! エイリアン発見につながる研究結果
「生体工学網膜」が失明治療に革命を起こす?
人工培養脳を「乳児の脳」まで生育することに成功