皆さんは「ヘソのゴマ」がどうやって作られるのかご存知でしょうか?
無理に取るとお腹が痛くなると言われるアレですね。
誰もが一度は見たことがあると思いますが、意外にもその正体は最近まで分かっていませんでした。
「ヘソのゴマは何からどうやってできるのか?」
「ヘソのゴマが溜まりやすい人と溜まりにくい人がいるのはなぜか?」
こうしたナゾに答えていきます。
「ヘソのゴマ」の正体が解明されるまで
ヘソのゴマが本格的に調べられ始めたのは2005年のこと。
当時、ウィーン工科大学の科学者だったジョージ・スタインハウザー氏が、ある本の中で「ヘソのゴマについての疑問は回答不可能」という一文を見たことがきっかけでした。
彼は20代の頃に「自分はヘソのゴマが溜まりやすい方だ」ということに気づき、それ以来、暇つぶし程度に文献を探すなどの調査をしていました。
しかし、ヘソのゴマに関する研究論文はほぼ皆無で、挙げ句の果てにたどり着いた本には「回答不可能」と書かれていたのです。
これを機に、自分のヘソに溜まるゴマを集め、その色や重さを記録する独自の調査を開始しました。
スタインハウザー氏は本来、放射性元素の研究をしている立派な科学者です。
ヘソのゴマの色はその日に着ていた服の色?
2008年までの3年間で集めたヘソのゴマは、全部で503個、計1グラムの重さに達していました。
その中で、一日の終わりに採取したヘソのゴマは、その日に着ていたトップスの色に近いことを発見したのです。
分析の結果、ヘソのゴマの主材料は衣類から発生していることが化学的に証明されました。
綿の白Tシャツを着ていた日は、セルロース(コットン繊維を構成する炭水化物の一種)がたまり、そこに微量の窒素や硫黄の化合物が混じっていたのです。
この化合物は、皮膚や脂肪、タンパク質、汗と判明しています。
次に、ヘソ周りの毛の役割も調べました。
友人や同僚、家族へ聞き取りをした結果、「腹部の毛が服の繊維くずの集積に一役買っていた」ことが示唆されました。
さらに、自らのお腹の毛を除去してみると、再び毛が生え戻るまでゴミがたまりにくくなっていたのです。
また、小さな繊維くずは腹部の毛に絡め取られ、1日の終わり頃にはヘソの中に落ち着くことも発見しています。
ヘソのゴマの「大統一理論」を確立!
こうした結果から、スタインハウザー氏は「ヘソのゴマ」に関する法則をまとめました。
ルール1:腹部の毛に衣類がこすれることで繊維くずが発生し、ヘソの方に集まる
ルール2:腹部の毛が同心円状に生えていると、ゴミが中心のヘソに集まりやすくなる
ルール3:ヘソに入った繊維くずは、圧縮されてフェルト状になり、汗などの化合物と合体する
ヘソに集めるゴミは、まるでブラックホールに吸い込まれるチリやガスのようなものです。
ヘソの「イベント・ホライズン(事象の地平線)」を超えると、繊維くずは二度と元の場所に戻ることはありません。
また同氏の計算では、同じTシャツを100回着ると、重さにして約0.1%の繊維が失われ、ヘソのゴマになることがわかっています。
しかし、以上のことは、体毛の濃い外国人に特有のルールで、毛の薄い日本人では少し違います。
腹部の毛がない(少ない)ため、繊維くずが発生しにくく、衣類の色にはなりにくいです。
皮膚や汗などの化合物だけからなるため自然と茶色い物が多く、ゴマの溜まり具合ももっと緩やかでしょう。
普段は気にも留めない「ヘソのゴマ」にも、これだけの深い成り立ちが隠されていたのです。
参考文献
『NewScientist 起源図鑑』
提供元・ナゾロジー
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