犬を散歩させる機会があれば、一緒にコンパスを持っていってください。

犬がウンチを始めたら、東西南北のどこを向いているか確認してみましょう。

ほとんどの場合、犬はからだを南北の線に合わせて、頭を北へ向けているのです。

これは何のためでしょうか?

また、犬はコンパスなしでどうやって方角を理解しているのでしょうか。

意外と知られていない不思議な犬の生態を紹介していきます!

目次
犬が感じている地球をとりまく「磁場」とは?
犬の磁場センサーは「帰巣能力」のため

犬が感じている地球をとりまく「磁場」とは?

地球は、大きな磁石です。

「磁極」という場所から磁力が放出されており、それが地球全体をとりまいています。

コンパスが北を向くのは、北側の磁極(磁北極)に引かれているからです。

ちなみに、磁極の軸線は、北極と南極をむすぶ地軸と11.2度ほどズレています。

犬は「地球の磁気」を感知する。うんちのときに北を向くって知ってた?
(画像=磁場(左)と地球の中身(右) / Credit: 国立科学博物館、『ナゾロジー』より引用)

磁力が生じる原因は、地球内部の外核(地殻の3000キロ下)にうずまく液体金属です。

これによって生まれる地球の磁場は定期的に変動しており、日中の約20%の時間だけ穏やかになります。

基本的には、磁極付近で最も強く、赤道で最も弱いです。

犬は「地球の磁気」を感知する。うんちのときに北を向くって知ってた?
(画像=磁場は地球のバリア / Credit: web.ua.es、『ナゾロジー』より引用)

また、磁場は地球上の生命を守るためにたいせつな仕事をしています。

最大の役割は、太陽風が地球表面に侵入するのを防ぐ「バリア」です。

磁場がなければ、ヒトも動植物も生きていけません。

火星や金星に水や大気がないのは、磁場が消失したからだと言われています。

では、犬はこの磁場をどのように感じ取っているのでしょう?

犬の磁場センサーは「帰巣能力」のため

犬は、トイレや寝る前にからだをぐるぐる回転させて、何かを確かめています。

これは体内に内蔵されたGPSのような機能を使って、磁場を検出しているのです。

スマホのコンパスアプリを使うとき、最初は方角が安定しなくても、ぐるぐる回転させれば安定するのと同じようなものでしょう。

犬は「地球の磁気」を感知する。うんちのときに北を向くって知ってた?
(画像=磁場を読んで帰り道を探す / Credit: pixabay、『ナゾロジー』より引用)

犬が磁場を読む理由は「帰巣能力」のためです。

チェコ大学のある実験によると、犬は帰巣するとき、来た道と別の道を探して帰る「スカウティング」をよく使うことがわかっています。

これと反対に、来た道を覚えて引き返す方法が「トラッキング」です。私たち人間はこちらのタイプでしょう。

犬はスカウティングで帰り道を探す前に、まず南北方向に20メートルほど走ります(専門用語でコンパスランという)。

これは磁場をもとに帰巣する生物によく見られる行動です。

ここから犬は、コンパスランによって一度混乱した磁場センサーを修正しなおし、帰りのルートを検出していると考えられます。

犬は「地球の磁気」を感知する。うんちのときに北を向くって知ってた?
(画像=南北ラインは生理的に安心? / Credit: jp.depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

しかし、排泄をする際に南北を向く理由はまだ解明されていません。

南北のラインが生理的に快適なのかもしれませんし、なわばりを主張するマーキングに役立つのかもしれません。

犬の他にも、渡り鳥やミツバチ、ウシ、シカ、クジラ、ウミガメなど、磁場センサーを持つ生物がたくさんいます。

グーグルマップを使わなくても、常に正しい目的にたどり着けるなんてスゴいですね。


参考文献

scienceabc


提供元・ナゾロジー

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