人間の脳が別の生物に操られることなんてあるんでしょうか。

チェコの進化生物学者ヤロスラフ・フレグル氏が、過去に「トキソプラズマ」と呼ばれる寄生虫が私たちの脳を「コントロール」していると主張しています。

トキソプラズマは主にネコを宿主とする寄生虫。

基本人間には無害とされていますが、「人の起業志向を強める」といった驚きの作用があると発表されました。

研究内容は2018年7月25日付けで『PROCEEDINGS OF THE ROYAL SOCIETY B』に掲載されています。

目次
驚き「トキソプラズマに起業志向を強める」効果あり?

驚き「トキソプラズマに起業志向を強める」効果あり?

10人に1人のイギリス人が感染しているとされる寄生虫「トキソプラズマ」。基本的には無害なこの寄生虫が、人の「起業志向を強めている」との驚くべき研究が発表されました。

トキソプラズマは通常ネコに寄生しています。しかし、違う宿主に引っ越すときの戦略はおぞましいもの。

なんと媒介とするネズミの行動を、ネコに「食べられやすい」ように変えてしまうのです。

ネズミはこの寄生虫に感染すると恐怖を感じにくくなるため、リスクの高い行動をとるようになり、結果としてネコに捕獲されやすくなると考えられています。

そして同じ傾向が、トキソプラズマに感染した人間においてもみられることは、以前から指摘されていました。

ネコの寄生虫が「人間を起業させる」という驚くべき研究結果
(画像=ネコ / pixabay、『ナゾロジー』より引用)

その点につき、新しい研究が興味深い結果を示しています。

社会人約200人を対象とした唾液検査の結果、トキソプラズマ感染者は、非感染者よりも1.8倍多く「起業経験」があることが分かりました。

さらに、約1500人の大学生を対象とした検査においては、感染者は非感染者よりも1.4倍多く「ビジネス」を専攻していることが分かり、専攻の中でも1.7倍「起業関連」に特化した科目を選択していることが判明したのです。

イギリスでのトキソプラズマ感染率は8.7%とされています。研究者によると、この他国と比べて低い数字が、5.5%といったイギリスの比較的低い「起業率」を示しているとのこと。

人間がトキソプラズマに感染する主な原因は、ネコの糞との接触や、生肉の摂取などが挙げられます。

感染してしまうとインフルエンザのような症状が表れますが、症状が出るまで数週間から数ヶ月の間が空くこともあるため、多くの人は感染に気がつきません。

ネコの寄生虫が「人間を起業させる」という驚くべき研究結果
(画像=緑色部分がトキソプラズマ / Credit: Moredun Scientific Ltd.、『ナゾロジー』より引用)

前述したように、トキソプラズマは基本的には「無害」ですが、妊婦の場合は気をつける必要があります。

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)が、トキソプラズマが原因による流産リスクの上昇や、母子感染の恐れを明かしています。

最近恐怖を感じにくくなり、リスクの高い行動をとるようになったと感じているのであれば、もしかしたらあなたの脳はすでにトキソプラズマの支配下に置かれているのかもしれません…。

この記事は2018年7月25日に公開されたものを再編集したものです。

【編集注 2021.04.27 14:45】
記事内容に一部誤りがあったため、修正して再送しております。


参考文献

Why a common parasite could turn you into a business mover and shaker

元論文

Risky business: linking Toxoplasma gondii infection and entrepreneurship behaviours across individuals and countries


提供元・ナゾロジー

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