2020年は世界中が新型コロナウイルスのパンデミックにさらされた苦難の年でした。

しかし、すべての人が等しく同じ苦しみを感じていたのでしょうか。

人には性格特性というものがあり、それに応じて感じ方も様々です。

ミシシッピ大学(アメリカ)は今回、性格特性の中でも「ダークパーソナリティ」に焦点を当て、その傾向をもつ人々のコロナ禍に対する反応を調査しました。

不安定な社会に対し、彼らはどのような感じ方をしているのでしょうか。

研究は、昨年の11月7日付けで『Personality and Individual Differences』に掲載されました。

目次
ダークな性格特性は「社会の安定性」に依存する?

ダークな性格特性は「社会の安定性」に依存する?

ダークパーソナリティには主に、ナルシズム(自己愛)、サイコパス(精神病質)、マキャベリズム(目的のためには手段を選ばない主義)が挙げられます。

この3つをまとめて、心理学では「ダークトライアド(Dark Triad)」と呼びます。

要は、闇属性の3本柱です。

ダークな性格特性はパンデミックをどう感じているのか? サディスティックな人は社会不安を楽しんでいる
(画像=ダークトライアド / Credit: ja.wikipedia、『ナゾロジー』より引用)

研究チームは、アメリカ在住の被験者402名(18〜78歳、50.2%が女性)を対象に、ダークトライアドの傾向と、現在のパンデミックに対する反応を調査しました。

被験者にはオンライン上で、パンデミック期間の感情や行動についてのアンケートに回答してもらい、同時に、ダークトライアドおよびサディズム傾向を調べる評価テストを受けてもらっています。

その結果、意外にも、ナルシズムとマキャベリズム特性の高い人は、パンデミックに伴う社会不安に対しネガティブ感情を抱いていました。

しかし、サディズム特性の高い人は、ポジティブ感情を示すことが判明しています。

研究チームは「サディスティックな人は、社会不安やそれにより苦しむ人々を見て楽しんでいる可能性がある」と論文内で述べています。

行動面を見てみると、ナルシズム特性の高い人は、パンデミックの煽りを受けた人々を助けるボランティア活動によく参加していました。

予想外の結果に思われますが、研究チームによると「これはナルシストが他者からの承認を得るためにあえて参加した可能性が高く、同じ結果は過去の調査でも示されている」と説明します。

その一方で、マキャベリズム特性の高い人では、コロナへの感染を恐れ、現在推進されるアルコール消毒や手洗いなどの対策行動を取る傾向が高かったとのことです。

ダークな性格特性はパンデミックをどう感じているのか? サディスティックな人は社会不安を楽しんでいる
(画像=社会の安定度で反応が変わる? / Credit: jp.depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

同じダークパーソナリティ内でも、こうした反応の違いがあらわれるのはなぜでしょうか。

現在の社会不安にポジティブ感情を抱いているのはサディズムだけで、ダークトライアドでは基本的に、一般人と同じくネガティブ感情を抱いています。

研究者たちは、一つの仮説として「ダークトライアドの性格特性は、社会の安定性に大きく依存しているのではないか」と推測します。

例えば、ナルシストは自己イメージを作るために社会的フィードバックを必要とし、マキャベリズムは目標達成のために社会システムの中の他者を利用することで知られます。

しかし、パンデミックのように情勢が不安定なときには、自分が思うように行動できない現状を脅威とみなし、ネガティブ感情を受けるのかもしれません。

研究チームは「本調査から、社会の安定性に依存するかしないかという点でも、ダークパーソナリティ内の明確な識別が可能になるかもしれない」と述べています。


参考文献

psychiatryadvisor

techandsciencepost


提供元・ナゾロジー

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