エジプトにある「ギザの大ピラミッド」は世界7不思議の中で唯一現存する建築物です。
建造年代は諸説ありますが、一般に紀元前2560年頃から建設が始まったとされています。
しかしそのあまりの巨大さに、どうやって人の手で造られたのか、いまだに分かっていません。
そこでカナダ人木工師のジョン・ハインツ氏は、「ギザの大ピラミッド」を木製ミニチュア版で忠実に再現することで建造の秘密に迫りました。
ミニチュア・ピラミッドの作り方
ハインツ氏はまず、実物と同じように、長方形型の小さな木片を切り出しました。
木片のサイズ比は、高さ1:縦1:横2としています。
ハインツ氏いわく「正確なサイズの切り出しと長方形型が石を積み上げるときの鍵になる」とのこと。
ドライサンドで木片の研磨を行なった後、いよいよ組み立て開始です。
ピラミッド建設に適当な場所として、正方形の土台を削り出します(ここでは板を用いている)。
ハインツ氏は「建設は正方形の4隅から同時に始められただろう」と考えています。
土台にズレがあると上部のバランスが崩れてしまうため、慎重な作業と精密なスキルが必要です。
1段目を並べ置いたら、2段目の積み上げ作業に移ります。
ハインツ氏によれば「石の積み上げがピラミッド建設の肝であり、その他の作業はそこまで難解ではない」とのこと。
氏のアイデアは、石の横長の形を利用するというもの。以下がそのやり方です。
まず2本の棒をレールのように敷いて石をセット。その下に短い棒をかませ、それを別の棒で押し込むようにして転がし、石を前進させます。
今度は石の上面に棒を2本置き、そこにロープをくくりつけて上から引っ張り上げます。
こうすれば石が前転するように一段ずつ上がるので、そこまで力を必要としません。
この作業を繰り返して段数を重ねていきます。
気になるのが、ピラミッドの四方の段中央に隙間が設けられていることです。
これはハインツ氏が勝手に設けたものではなく、実際のピラミッドにもあったもの。
実際のピラミッド(下)を見ても、面の中央に不規則な直線があるのが分かるでしょう。
これは最初に隙間を設けていて、後から石を埋めたと考えられます。
ハインツ氏は、隙間の周辺に予備の石片を置くため、それからピラミッドの内部に通ずる道を開けておくためというもの。
オレンジ色になっている石片が予備です。
隙間を埋めても、まだ完成ではありません。
今度は切りそろえた石を使い、頂上から下に向かって表面の段差を埋めていきます。
こうすることで平らで滑らかなピラミッドができるというわけです。
ここまで完璧なミニチュアを作ってもハインツ氏は「私の考える可能性でしかない」と話します。
確かにミニチュアならまだしも、実物は高さ140m、底辺230mと途方もない大きさで、同じやり方が通用するか分かりません。
とくに、高度な技術がなかったはずの当時を考えるとなおさらです。
それでもハインツ氏は、数多くの人間が協力して作り上げたものだと信じて疑いません。
氏は最後に「結局のところ、タイムトラベルでもしない限り建造の真相は不明です。ただ1つ言えることは、ピラミッドの建設に宇宙人の力は借りてないということでしょう」と話しました。
本記事は、2019年5月11日に掲載された記事を再編集したものです。
参考文献
Craftsman Builds a Miniature Great Pyramid of Giza Out of Wood to Understand Its Structural Engineering
元論文
Blog: How I Would Build The Great Pyramids
提供元・ナゾロジー
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