フィンランドの小学校では、10年ほど前から「読書犬」なる教育法が始められました。

これは「子どもが犬に読み聞かせをする」という風変わりなものですが、フィンランドではすでに児童教育の一つとして市民権を得つつあります。

具体的には、どんな試みなのでしょうか?

目次
子どもに読書の自信がつく
最適なのは「バーニーズ・マウンテン・ドッグ」

子どもに読書の自信がつく

「読書犬」は、2011年にフィンランドにある一部の小学校でスタートしました。

犬に読み聞かせをすることで高い報酬経験が得られ、子どもが読書の習慣をつけやすくなるのだという。

発案者であるMaarit Haapasaari氏は次のように説明します。

「難しい内容の本でも声に出して読むことで子どもたちの自信に繋がります。たとえ読み間違えたりしても、犬は満足げに聞いてくれるので子どもの自信を削ぐことはないのです。」

実際、犬に読み聞かせをした児童は充実した達成感を覚え、「もっと本を読んであげたい」と思うようになっている様子。

犬に読み聞かせ。新しい教育法「読書犬」がフィンランドで流行中
(画像=フィンランド・Hovirinta小学校の読書犬「ヒルマ・マリア」 / Credit: Ilari Välimäki、『ナゾロジー』より引用)

それから読書の際は、読み聞かせをする子どもと読書犬、犬の世話人だけの空間をつくるように気をつけています。

他に聞き手がいない方が、子どもと読書犬の間に親密で心地よい空気感が生まれるためです。

氏のアイデアに触発されて、数年前から他の小学校でも「読書犬」の導入が開始されました。

フィンランド小学校教育の公式なカリキュラムとしてはまだ認定されていないものの、上の読書犬「ヒルマ」以外にもすでに数十頭の「読書犬」が誕生しているようです。

Hovirinta小学校の特別支援クラスを受け持つHeidi Puputti氏も「子どもの緊張をほぐして、集中力を高めるのにとても効果的。普段落ち着きがない子どもたちも犬に読み聞かせる際はとても穏やかになるんです」とヒルマを絶賛しています。

また、読書犬に向いている犬種もあるそうです。

最適なのは「バーニーズ・マウンテン・ドッグ」

犬に読み聞かせ。新しい教育法「読書犬」がフィンランドで流行中
(画像=リラックスする読書犬のヒルマ・マリア / Credit: Ilari Välimäki、『ナゾロジー』より引用)

現時点で読書犬として採用されている犬種は、全て「バーニーズ・マウンテン・ドッグ」です。

バーニーズ・マウンテン・ドッグは2000年近く前からアルプス地方で牧畜犬として活躍しており、大柄で温厚、人好きで落ち着きがあるという特徴があります。

Haapasaari氏は「彼らの穏やかな性格と抱きしめたくなるような見た目は子どもに最適です。

それから性格に反して体のサイズがとても大きいので、聞き手としての威厳と風格もしっかり備えています」と指摘します。

犬に読み聞かせ。新しい教育法「読書犬」がフィンランドで流行中
(画像=発案者のHaapasaari氏 / Credit: Ilari Välimäki、『ナゾロジー』より引用)

Hovirinta学校ではヒルマ以外にも同種の「ヴィリヨ」という読書犬も活躍しています。

フィンランドでは「読書犬」ブームが着々と拡がりつつあり、他に老人ホームや障害者施設にも出張しているとのこと。

また、同小学校の近くにある町では犬以外の動物も聞き手として登場し始めています。

その名も「読書ウシ」です。

やや暴走気味ではあるが、子どもたちは学校や図書館ではなく、農場での読書という変わった体験を楽しんでいるという。

どこまでエスカレートするか分かりませんが、「読書インコ」は茶々入れしてきそうなので却下でしょうか…

本記事は、2019年4月30日に掲載された記事を再編集したものです。


参考文献

FINNISH READING DOGS HELP KIDS LEARN AND GROW


提供元・ナゾロジー

【関連記事】
ウミウシに「セルフ斬首と胴体再生」の新行動を発見 生首から心臓まで再生できる(日本)
人間に必要な「1日の水分量」は、他の霊長類の半分だと判明! 森からの脱出に成功した要因か
深海の微生物は「自然に起こる水分解」からエネルギーを得ていた?! エイリアン発見につながる研究結果
「生体工学網膜」が失明治療に革命を起こす?
人工培養脳を「乳児の脳」まで生育することに成功