寝不足が脳に良くないことは、自覚している人も多いでしょうが、実はそのダメージは想像以上に深刻かもしれません。
1月11日に科学雑誌『Sports Medicine』で発表された新しい研究は、3万人以上の健康なアスリートを使った調査の結果、睡眠不足やストレスは脳震盪(のうしんとう)に似た症状を引き起こしている可能性があると報告しています。
脳震盪を経験したことのある人は少ないでしょうが、多くの人はそれと同等の症状を脳が受けている可能性があるようです。
気づかないうちに脳がダメージを受けている
アメリカ・オハイオ州立大学の研究チームは、大学生アスリートと米陸軍士官学校の候補生、約3万人を対象に大規模な健康調査を実施しました。
この調査の目的は、脳震盪の影響と、そこからの回復に関する知識のギャップを埋めることでした。
脳震盪は、スポーツ選手が経験することの多い怪我ですが、これはどのように起きたのかによって症状が分化しており、脳震盪後のケアを万全にするためには、怪我の内容と、引き起こされた症状の関係を理解することが重要です。
ところが、そこからは意外な結果が見つかりました。
最近脳震盪を経験していないと答えた健康なアスリートの約27%近くが、国際的に定義されている脳震盪後症候群(PCS)の基準を満たす症状を起こしていたのです。
研究チームは、この原因が主に睡眠不足、ストレス、精神的健康問題の3つの要因から起きている可能性が高いと考えています。
睡眠不足と脳震盪後の症状に関連性があるという指摘は、この分野の研究では以前から示されていました。そのため、今回の報告は、さほど驚くべき発見ではありません。
しかし、実際大規模な調査の結果、データとして確認されたのは今回が初めてです。
研究の筆頭著者であるオハイオ州立大学健康リハビリテーション科学部のジャクリーン・カッチェス助教授は「結果は非常に衝撃的です」と述べています。
「今回調査されたのは身体的に健康なエリートアスリートであり、これが一般の人々を対象に考えた場合、もっと多くの人に症状が見られる可能性があります」
主に見られる症状は、倦怠感、めまい、頭部の圧迫感、光や騒音への過敏症、眠気、偏頭痛などでこれらは脳震盪と密接に関連している症状です。
症状が見つかる可能性の高かった参加者は、士官候補生の1年生でテストが近いなど学業上の問題で、睡眠不足になっている場合でした。
大学生のアスリートなどでは、ADHDやうつ病の病歴とも関連している可能性が高いと考えられています。
脳震盪と言えば、かなりのダメージが脳に与えられた状態をイメージしますが、睡眠不足やストレスが脳震盪後と同様の症状を引き起こしているとなると、これらはかなり脳に負担を与えるものだと考えなければなりません。
やはり睡眠をしっかりとりストレスを溜め込まないということは、健康にとって非常に重要な問題となるようです。
参考文献
OHIO STATE NEWS
提供元・ナゾロジー
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