日本は四季の豊かな国ですが、世界を見わたすと、一年中暑かったり、雪に覆われているところがあります。
なぜ同じ地球の中で、これほど大きな気候の差があるのでしょう?
また、どうして地球に風は吹き、その動きはとても複雑なのでしょうか?
こうしたボンヤリとはわかっていながらもハッキリと答えられない疑問について解決していきましょう。
その中で、「世界一天気の退屈な場所」もご紹介します。
目次
なぜ風は吹くのか?
地球の気候は「風の循環」で決まる
世界一天気が退屈な場所とは?
なぜ風は吹くのか?
地球に風が吹く原因は、1億5000万キロかなたの「太陽」にあります。
太陽が放つ光により大気が熱せられ、動きが変化するのです。
太陽光を最も強く受ける赤道では、大気が急激に熱せられて上昇します。
ぐんぐん上って限界まで達すると、上昇気流は北と南の二手に分かれます。
(一言メモ)
ちなみに、この「限界」とは圏界面のことで、対流圏と成層圏の間を指します。
温かい大気はどんどん空に上っていきますが、成層圏には紫外線を吸収する「オゾン層」があるので温度が高く、大気もそれ以上は上れません。
ですから、気象現象というのはすべて対流圏の内側で起こることです。
話を戻しましょう。
二手に分かれた風は移動するにつれて冷やされ、北南の緯度30度あたりで今度は吹き下ろしの下降気流となります。
下降気流は地上にぶつかることで再び南北に分かれますが、このうちの一方が赤道に戻ることで一つの循環ができます。
これが「ハドレー循環」です。
一方、太陽光をあまり受けない極地では、大気が冷えて強い下降気流が起きます。
風は高気圧(下降気流)から低気圧(上昇気流)の場所へと移動するので、極地の風は赤道方向に向かって吹き下ります。
すると、先ほどハドレー循環の下降気流で極地方向に上がってきた風と北南の緯度60度あたりでぶつかります。
地表付近でぶつかった風は上昇気流に転じ、また上空で二手に分かれます。
その結果、ハドレー循環とは別に2つの循環が生じます。
緯度30〜60度の範囲が「フェレル循環」、緯度60〜極地までが「極循環」です。
風の起こる仕組みは比較的シンプルですが、風の動きはもう少し複雑です。
その原因は地球の自転にあります。
地球は(地軸の北方向を正にして)右回転になっているので、南北に吹く風の向きも変わってしまいます。
この働きを「コリオリの力(転向力)」と呼びます。
下の図を見てください。
矢印はそれぞれ風の向きを表しており、赤線はハドレー循環で赤道方向に帰ってくる風を示します。
地球が自転していなければ南北方向にまっすぐ吹くのですが、コリオリの力によって北東の風に変わります。
これが「貿易風」です。
また、フェレル循環で極地方向に吹き上がる風も南西の風に変化します。
こちらが「偏西風」です。
他方で、極地の高圧域から吹き下す風は常に向きが変わりません(=恒常風)。
極地から吹く風は「極東風」と呼びます。
このように、地球上を吹く風はおもに、貿易風・偏西風・極東風の3つ(南北に分けると6つ)の組み合わせで成り立っています。
しかし、これらの風も地上の山や森、砂漠、そして海によって向きがさらに複雑に変わるのです。
それでは、こうした風の循環で気候はどのように変化するのでしょうか?
地球の気候は「風の循環」で決まる
天気の要素として、風の他に水があり、それは雲と雨として現れます。
雲を作るには、大気中の水蒸気と、それを上空に吹き上げる動きの2つが必要です。
水蒸気は、地表の水の蒸発と、植物による蒸散(土から吸い上げた水を葉っぱから放出する働き)によって大気の一部となります。
そして、水蒸気を上空に吹き上げる仕組みは以下の3つです。
・暖められた大気のかたまりが上昇するサーマル現象
・密度のちがう大気のかたまりがぶつかり合い、その衝突面で大気が上方向に押しやられる
・山脈にぶつかった大気が上向きに吹き上がる
大気は上昇するにつれ、周囲の気圧が低くなっていくのでどんどん膨張しはじめます。
さらに、膨張には熱エネルギーが使われるので、大気の温度が低下。
あるところ(露点)まで冷えると、大気中の水蒸気は気体の状態でいられなくなり、水粒として凝結します。
これが雲です。
水粒が気流によって雲の中で上昇し大きくなると、重さに耐えきれなくなって地上に落下しはじめます。
これが雨や雪、ひょうです。
雨が一年を通してどれだけ降るかで気候は決まりますが、それは先ほど紹介した「大気循環」によって左右されます。
例えば、赤道付近では大気が急激に上昇して大きな雲ができ、一年中よく雨が降るので熱帯雨林が育ちます。
ハドレー循環の下降気流にあたる場所は、雲ができずに乾燥するので、砂漠地帯となります。
ところが、フェレル循環で再び上昇気流になり、受光量もほどよい場所では、温暖湿潤な気候となります。
そこからさらに極地に近づくと、強い下降気流および受光量の少なさで、寒冷地帯となるのです。
こうした風と大気の流れで地球の天気はさまざまに変わっていきます。
それでは地球上で天気が最も退屈な場所はどこでしょうか?
世界一天気が退屈な場所とは?
イギリスは「1日の中に四季がある」といわれるほど、天気の移り変わりが激しく、これは多くの人が知るところです。
では、天気の変化が最も少ないのはどこでしょう?
それはチリ中部のバルパライソ州にある「ビニャ・デル・マール」という海辺の町です。
日中の気温は一年を通して15〜25度、空はいつも薄く曇っており、小雨の日がとても多くあります。
強風というほどの風が吹くことはほとんどありません。
氷点下になったり雪が降ったりすることも絶対にないです。
ごくまれに雷雨がやってくるのですが、住民たちは「逆に退屈が紛れていい」と思っているとか。
それでも、天候が穏やかなので安心して住むことはできそうです。
参考文献
『NewScientist 起源図鑑』
『自然のしくみがわかる地理学入門』
提供元・ナゾロジー
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