目次
うちの子は大丈夫
特定外来生物よりも実は危険?
どうすればネコの狩りを減らせるのか?

放し飼いの「飼いネコ」が在来種を脅かしている事実が報告される
(画像=これは186匹くらい余裕で狩っている目 /Credit:pixabay、『ナゾロジー』より引用)

point

  • オーストラリアでは飼いネコにより年間3億9000万匹の動物が殺されている
  • ペットのネコであっても、地域の在来種減少に寄与するほど動物を殺していると判明
  • ネコが持ち帰る獲物は15%程度で、ほとんどのネコが飼い主の知らないところで狩りをしている

愛らしい見た目とは裏腹に、ネコは非常に残忍な狩猟者です。

オーストラリアの研究で、野良ネコが年間に殺害する動物の数は30億匹を越えていることが報告されています。

1788年以降、オーストラリアでは34種類の哺乳類が絶滅していますが、そのほとんどにネコが関与しており、現在絶滅危機に瀕している123の在来種の減少も、ネコが大きな原因になっているようです。

そして、これは野良猫だけの話ではありません。新しい研究では、ペットのネコに関する66もの研究報告をまとめ、ペットのネコが年平均で186匹の在来種を殺しているという結果を報告しています。

これは合計すると、1平方キロメートルあたりの地域で、ペット猫によって年間4440~8100匹もの動物が殺されていることになります。

これは固有の絶滅危機に瀕する在来種が多いオーストラリアならではの研究です。日本の場合、ネコは害獣駆除に貢献している割合の方が高いと考えられ、そこまで目くじらを立てる問題ではないかもしれません。

しかし、この研究はペットのネコが隠れて裏では何をやっているのかを教えてくれるかもしれません。

うちの子は大丈夫

放し飼いの「飼いネコ」が在来種を脅かしている事実が報告される
(画像=Credit:depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

オーストラリアでは約27%の家庭がネコを飼っていて、そのうちの71%(約270万匹)が放し飼いにされています。

残りの家庭では、ネコは家の中で24時間管理して飼われており、そうした飼い主は自分のネコが外で狩りをすることはないと考えています。

しかし、家の中だけで飼われているネコ177匹に対して追跡装置を付けて行動調査を行った結果、69匹(39%)のネコが、夜間に家を抜け出して外出していることがわかりました。

ネコを飼っている人の中には、獲物をお土産に持ち帰られて驚いた経験のある人も多いでしょう。しかし、うちの子はそういうことしない、という飼い主もいるでしょう。

そうした飼い主は、自分のネコは狩りをしないと信じているかもしれませんが、研究ではペットのネコが獲物を家に持ち帰る確率は15%しかありませんでした。

放し飼いの「飼いネコ」が在来種を脅かしている事実が報告される
(画像=Credit:depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

首輪にカメラを仕込んだり、糞便の分析を行った結果では、多くの飼いネコたちが持ち帰ることなく、外で動物を殺していることが確認されたのです。

特定外来生物よりも実は危険?

放し飼いの「飼いネコ」が在来種を脅かしている事実が報告される
(画像=危険な外来生物ワニガメ。/Credit:Wkipedia Commons、『ナゾロジー』より引用)

よくワニガメやアリゲーターガーなど、危険な外来種が池に捨てられていたということがニュースになることがあります。

こうした外来生物は在来種の生態を脅かす危険な存在です。

この手のペットは見た目が凶悪なこともあって捨てられた場合、大きなニュースになりますが、ネコの場合は可愛い話題ばかりで、その危険性について触れられることがほとんどありません。

しかし、ネコは在来種を脅かす非常に危険な存在になりうるのです。

オーストラリアの場合、年間3億9000万匹の動物が飼いネコによって殺されていると試算されています。

これはたった一匹のペットのネコだけでも、地域の在来種の減少に寄与する可能性があるといいます。

西オーストラリア州のマンジュラでは、たった一匹の飼いネコと一匹の野良ネコによって、絶滅危惧種のヒメアジサイのコロニーが壊滅させられたという報告も存在しています。

放し飼いの「飼いネコ」が在来種を脅かしている事実が報告される
(画像=絶滅危惧種のヒメアジサイ。/Credit:en.wikipedia、『ナゾロジー』より引用)

大抵の在来種は繁殖率がそれほど高くなく、ネコが行うレベルの狩猟に耐えられません。絶滅危惧種の動物にとっては、ネコは非常にリスクの高い生物なのです。

どうすればネコの狩りを減らせるのか?

放し飼いの「飼いネコ」が在来種を脅かしている事実が報告される
(画像=Credit:depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

絶滅に瀕した在来種の多いオーストラリアではこうしたネコの狩りが問題となっています。

しかし、日本の都市部ではネズミなどの害獣に悩むことが多く、ネコはそうした害獣駆除に一役買っている側面もあります。なので、そこまで積極的にネコの狩りを防ぐ必要はないかもしれません。

とはいっても、自分のネコが外で動物を殺しているという事実は、あまり気分のよいものでもないでしょう。

では、どうすればネコの狩りは防げるのでしょうか?

良質な餌を上げたり、肉を多めに与えてあげればネコは狩りをしなくなるという俗説が存在しますが、これは正しい情報ではありません。ネコは空腹かどうかに関わらず狩りを行います。

ネコジャラシに飛びつく姿を見ていれば分かる通り、ネコは食事のためというよりも、遊びで狩りを楽しみます。餌が十分でもネコの狩りは止められないのです。

童話にある通り、鈴の付いた首輪をつけるというのはネコの狩りを妨害する効果があります。しかしこのアイテムは狩りの成功率を下げるだけで、ネコの狩猟行為自体を防ぐわけではありません。

もっとも有効な唯一の対策は、ネコを24時間家の中にしっかり閉じ込めておくことです。

自由にさせたいという飼い主もいるかもしれませんが、米国動物愛護協会の調べでは、交通事故なども含めると、室内飼いのネコは、放し飼いのネコに比べて4倍長生きすると報告されています。

ネコは室内で飼って外に出ないようにするのが一番のようです。

目の前のネコは、可愛いだけではなく有能なハンターなのだということを忘れないようにしましょう。

放し飼いの「飼いネコ」が在来種を脅かしている事実が報告される
(画像=まあ、そうは言っても難しいこともあるんですけどね… / Credit:depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

この研究は、オーストラリア国立大学のSarah Legge氏を筆頭とした研究チームより発表され、野生動物の生態学や保護を扱う学術雑誌『Wildlife Research』に4月20日付けで掲載されています。

提供元・ナゾロジー

【関連記事】
ウミウシに「セルフ斬首と胴体再生」の新行動を発見 生首から心臓まで再生できる(日本)
人間に必要な「1日の水分量」は、他の霊長類の半分だと判明! 森からの脱出に成功した要因か
深海の微生物は「自然に起こる水分解」からエネルギーを得ていた?! エイリアン発見につながる研究結果
「生体工学網膜」が失明治療に革命を起こす?
人工培養脳を「乳児の脳」まで生育することに成功