投資にリスクはつきものであり、もちろん不動産投資も例外ではない。今回は、「これだけは絶対に回避したい不動産投資特有のリスク」を紹介しよう。また、それらのリスクを回避するための具体的な方法も解説する。

目次
1,不動産投資のリスクの捉え方
2,不動産投資のリスク1 「空室発生」
3,不動産投資のリスク2 「災害被害」
4,不動産投資のリスク3 「金利上昇」
5,不動産投資のリスク4 「賃料滞納」
6,不動産投資のリスク5 「入居者トラブル」
7,リスク回避策を取る前に注意したいこと

1,不動産投資のリスクの捉え方 解説者によってリスクの項目が変わる

不動産投資のリスクについては、不動産投資家や不動産会社が書籍やホームページなどで解説している。しかし、解説者によって挙げるリスクは異なる。

たとえば、不動産コンサルティングの第一人者・浦田健氏は著書「最新アパート・マンション成功投資術」(日本実業出版社)で以下の8項目を挙げている。

  1. 空室リスク
  2. 家賃下落リスク
  3. 金利上昇リスク
  4. 地震や火災などの天災リスク
  5. 老朽化リスク
  6. 管理上のリスク
  7. 不動産価格の低迷リスク
  8. 換金性が悪いリスク 一方、ファィナンシャルアカデミー編著の「不動産投資の学校 実践編」(ダイヤモンド社)で挙げられているリスクは以下のとおりだ。
  9. 空室リスク
  10. 滞納リスク
  11. 金利上昇リスク
  12. 災害リスク
  13. カントリーリスク
  14. 住民トラブル、自殺、孤独死などの人的リスク このように不動産投資のリスク項目は発信者によって異なるが、一般的に不動産投資の5大リスクと言えば以下の内容だろう。

    リクス1,空室発生
    リクス2,災害被害
    リクス3,金利上昇
    リクス4,賃料滞納
    リクス5,入居者トラブル

    これらのリスクが発生したときのダメージと、回避方法を解説していく。

2,不動産投資のリスク1 「空室発生」 ダメージと回避方法を解説

不動産投資のリスクとして最も頻繁に取り上げられるのは、「空室リスク」だろう。最近は全国的な空き家増加や人口減少社会の深刻化が社会問題になっているため、空室リスクに過敏になっているオーナーも多いだろう。

空室が発生したときのダメージ

空室が発生すれば、当然賃料収入は途絶える。金融機関のローンを利用して収益物件を購入した場合、手持ち資金をローン返済に充てなければならなくなる。これが長期化すれば、不動産賃貸経営が破綻してしまうだろう。

空室リスクの回避方法

空室リスクは、サブリース契約で回避できる。サブリースとは、不動産会社が貸主からアパートやマンションを借り受け、それを不動産会社が入居者に転貸する仕組みだ。空室リスクは不動産会社が負うことになるため、貸主にとっては経営が安定するというメリットがある。

空室リスク回避方法の注意点

ただし、サブリースにはデメリットもある。全日本不動産協会は、具体的なデメリットとして「(相場の)賃料収入の減少」と「中途解約や(契約書で設定したはずの)賃料減額」を挙げている。

賃料収入が減少する理由は、貸主が受け取るサブリース賃料は通常の賃料よりも割安だからだ。また同協会によると、仮に貸主と不動産会社の間で結んだ契約書に「賃料減額はない」という特約があっても、減額や中途解約の可能性はゼロではないという。

3,不動産投資のリスク2 「災害被害」 ダメージと回避方法を解説

災害リスクとは、火災・地震・水害などのことだ。不動産投資が盛んな首都圏は大地震が発生する可能性が高いため、首都圏エリアの物件に投資しようとしている人は気になるところだろう。

災害が発生したときのダメージ

投資物件が地震や火事によって入居者が住めないほど損壊してしまえば、当然ながら賃料は入ってこなくなる。修繕すれば住める状態だったとしても、修繕費用を負担する責任は法律上、貸主にある。たとえば区分マンションを所有していて、地震によって室内の壁に大きなひびが生じた場合、一般的な賃貸借契約であれば貸主が修繕することになる。いずれにしても災害による建物の損壊は、オーナーにとって負担が大きい。

災害リスクの回避方法

災害リスクを回避したいなら、損害保険に加入すればいい。火災、地震、水害など、目的に合わせた損害保険が存在する。ただし地震と水害をカバーする損害保険は、火災保険とセットで加入するのが基本だ。

災害リスク回避方法の注意点

地震保険は、火災保険のように実際の損害額が支払われるわけではない。たとえば損保ジャパン日本興亜の地震保険の場合、全損なら保険金額の100%が支払われるが、一部損や大半損であれば保険金額の5~60%しか支払われない。地震の被害を完全にカバーするのは難しいため、ある程度は自己資金をストックしておかなければならない。

4,不動産投資のリスク3 「金利上昇」 ダメージと回避方法を解説

不動産投資のリスクの中で、金利上昇を気にする人は多い。バブル期の住宅ローン金利は8%を超えていたが、現在のメガバンクの不動産投資のローン金利は1%前後。今のローン金利が、いかに低いかがわかるだろう。ひとたび金利上昇に転じれば、収益に与える影響は大きい。

金利上昇が発生したときのダメージ

不動産投資は、金融機関から借りたローンの金利と不動産の利回りの差を利用して、収益を積み上げていく資産運用だ。そのため、金利がわずかに上昇しただけでも収益は悪化する。場合によっては、金利上昇によって不動産経営が成り立たなくなることもある。

金利上昇リスクの回避方法

金利上昇リスクを回避したいなら、ローン借り入れ時や借り換え時に固定金利を選択すればいい。これによって、金利上昇の影響を受けずに済む。

金利上昇リスク回避方法の注意点

固定金利は、変動金利よりも金利が高い。そのため、「現実的には変動金利を選択するしかない」という人は少なくない。変動金利で金利上昇リスクを軽減するためには、繰り上げ返済によってできるだけ残債を減らしておきたい。リスクを完全に回避できるわけではないが、ダメージを軽減することはできる。

5,不動産投資のリスク4 「賃料滞納」 ダメージと回避方法を解説

賃料滞納は、どのくらいの割合で発生するのだろうか。全国の管理会社を対象にした日管協総合研究所の調査では(※第20回 賃貸住宅市場景況感調査「日管協短観」)、1ヵ月滞納している入居者の割合は3~4%、2ヵ月以上滞納している割合は1~2%。数値自体は低いが、ある程度の戸数を長期的に運用していれば、賃料滞納の発生は十分あり得る。

賃料滞納が発生した時のダメージ

空室、災害、金利上昇などのリスクが一切なくても、賃料滞納が発生すれば不動産投資は立ちいかなくなることがある。賃料滞納が発生すれば、毎月発生する赤字分を穴埋めしなければならない。督促する手間もかかるし、法的な手続きを取って退去してもらう場合は、専門家に依頼する費用もかかる。

賃料滞納リスクの回避方法

家賃(賃貸)保証会社と契約すれば、このリスクは完全に回避できる。賃料滞納が起きた場合、家賃保証会社が貸主に賃料を支払い、家賃保証会社が借主に対して立て替えた賃料を請求する。

賃料滞納リスク回避方法の注意点

デメリットは、家賃保証会社の経営が悪化した場合、立て替え賃料が入ってこないことくらいだろう。

6,不動産投資のリスク5 「入居者トラブル(自殺、孤独死、殺人)」 ダメージと回避方法を解説

この他のリスクとしては入居者の自殺、孤独死、殺人などがある。自殺者は、年間約2万1,000人(警視庁調べ:平成30年度)。孤独死の定義は曖昧だが、朝日新聞の記事には推計2.7万人とある。この数値を見ると、所有物件でこのようなトラブルがいつ発生してもおかしくないことがわかるだろう。

入居者トラブルリスクが発生したときのダメージ

入居者トラブルが発生すると、「物件全体の空室率が上がる」「賃料が相場よりも下がる」といった大きなダメージになりやすい。自殺や孤独死の場合は、部屋の原状回復に相当の手間と費用がかかることもある。原状回復費用を保証人に請求することもできるが、調整が難航するケースもあるだろう。

入居者トラブルリスクの回避方法

いくつかの保険会社から、賃貸オーナー向けの入居者トラブル対応保険商品が発売されており、利用すればリスクを回避できる。アイアル少額短期保険の「無縁社会のお守り」は自殺・孤独死・殺人事件などに対応しており、事故後の原状回復費用(100万円まで)や、事故後の空室・値下げの家賃保証(200万円まで)が支払われる。

入居者トラブルリスク回避方法の注意点

保険なので、入居者トラブルリスクが発生しなければ、保険料の分物件の利回りが低下してしまう。また補償範囲をしっかり確認しておかなければ、無駄な保険料を支払うことになるので注意したい。

7,リスク回避策を取る前に注意したいこと 意識が強すぎるとリターン低下に

不動産投資のリスクを回避する方法は、地道なものが多い。サブリースを利用する、ローン残債を減らす、そのリスクをカバーする保険に加入する……。このようなアクションを積み上げてはじめて、リスクの少ない安定経営が実現するのだ。

その意味で不動産投資は、どちらかというと神経質で細かいことを気にする人に向いていると言える。「リスクなんて起きたときに対応すればいい」という考え方では安定経営ができないどころか、破綻する可能性が高いだろう。

注意したいのは、リスクを回避する意識が強くなりすぎると、各種費用の支払いがかさんで利回りが低くなることだ。5大リスクの中でどのリスクを重視すべきかを考えた上で、リスク回避のための予算を配分したい。

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文・本間貴志(不動産ライター)
 

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