住宅ローンを組むと住宅ローン控除を受けられるが、控除期間中の借り換え後も引き続き控除を受けるには条件を満たさなければならない。借り換え後も住宅ローン控除を受けることは難しくないが、借り換えを計画しているなら、あらかじめ知っておきたい。
住宅ローン控除は条件を満たせば借り換え後の借入金も対象になる
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)とは、住宅ローンを借りてマイホームを新築または購入した場合に、要件を満たすと最長で10年間住宅ローン年末残高の1%を所得税から控除できる制度だ。2019年10月の消費税増税に伴い、時限措置として最長13年間まで控除できるようになった。
住宅ローンを借りてから10年間(増税後は13年間)は住宅ローン年末残高の1%が控除されるため、この期間中に借り換えをするケースは少ないだろう。ただし、借り換えによって金利が下がり、総返済額を大幅に軽減できる場合などは、住宅ローン控除の期間中でも借り換えをすることがある。
この場合、借り換え後の住宅ローンは控除対象にならないのが原則だが、一定の条件を満たせば控除を受けられる。
住宅ローン借り換え後も控除を受けるための2つの条件
借り換え後の住宅ローンで控除を受けるためには2つの条件を満たす必要があるが、難しい条件ではないので基本的には誰でもクリアできるだろう。
借り換え後の住宅ローンが当初の住宅ローンを返済するためであること
住宅ローン控除の対象になる借入金は、住宅を取得するために直接必要なローンでなければならない。厳密に言えば、借り換えのローンは現在のローンを一括返済するためのものである必要がある。原則として、借り換え後のローンが住宅ローン控除の対象外なのはこのためだ。とはいえ、借り換え後の住宅ローンも実質的にはマイホーム取得に必要なものであるため、ローンの目的が同じなら引き続き住宅ローン控除が適用される。
借り換え後の住宅ローンが住宅ローン控除の要件に当てはまること
借り換え後の借入金が住宅ローン控除の対象になるとはいえ、元々の要件を満たしていなければ控除は受けられない。住宅ローン控除の主な要件は、以下のとおりだ。
- 住宅ローン控除を受ける各年の12月31日まで居住していること
- 住宅ローン控除を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下
住宅ローンの返済期間が10年以上
増税後(住宅ローン控除期間が13年間)も基本的な要件は変わらないが、2020年12月31日までに入居が必要であることは覚えておきたい。期限を過ぎて入居すると、住宅ローン控除の期間はこれまでと同じ10年間になる。
気をつけなければならないのは、借り換え後の住宅ローンの借入期間だ。借り換え後の住宅ローンも、10年以上返済する契約である必要がある。
たとえば、当初の住宅ローン借入期間が20年で、5年後に借入期間13年の住宅ローンに借り換えたとする。この場合は借り換え後の借入期間が10年以上あるため条件を満たしている。当初の住宅ローンで5年間控除を受けているため、残りの控除期間は5年間だ。仮に借り換え後の住宅ローンの借入期間が9年の場合は、条件を満たしていないため住宅ローン控除は適用されない。
押さえておきたいのは、借り換えをしたとしても住宅ローン控除ができるのは通算で10年までであることだ。ただし、増税後に購入した場合の住宅ローン控除期間は13年間なので、借り換え後に控除できる期間も通算13年となる。このように、借り換えをしても住宅ローン控除期間が延長されないことは覚えておこう。
借り換え後の住宅ローンが増える場合は控除対象額が調整される
上記2つの条件を満たせば借り換え後も住宅ローン控除を受けられるが、控除対象額は借り換え前後の借入金残高によって決まる。ポイントは、借り換え前と比べて借り換え後の住宅ローン残高が多いかどうか。
借り換え後の住宅ローンが借り換え前よりも少ない場合は、借り換え後の住宅ローン年末残高が控除対象になる。一方、諸費用などを含めて借り換えると住宅ローンが借り換え前よりも増えることがあり、その場合の住宅ローン控除対象額は以下の計算式で調整される。
借り換え後の住宅ローン控除対象額=借り換え後の住宅ローン年末残高×借り換え直前の住宅ローン残高÷借り換え後の住宅ローン借入時の金額
仮に、借り換え直前の住宅ローン残高が2,500万円、借り換えた住宅ローン金額が2,700万円、借り換え後の年末残高が2,600万円だとすると、住宅ローン控除の対象額は以下のようになる。
借り換え後の住宅ローン控除対象額2,407万円=2,600万円×2,500万円÷2,700万円
借入金額が借り換え前よりも増えた場合は、住宅ローン控除の対象額が調整されると覚えておこう。
住宅ローン借り換えに伴う控除が年末調整に間に合わない時は確定申告
住宅ローンの借り換えを11月や12月など年末近くに行った場合、会社での年末調整に間に合わないこともある。その場合は確定申告で住宅ローン控除を申請しよう。
住宅ローン借り換えに伴う控除の確定申告に必要な書類は3種類
住宅ローン控除の申請が年末調整に間に合わず確定申告をする場合、確定申告書以外に必要になる書類は以下の3つだ。
- 源泉徴収票
- 住宅ローンの年末残高証明書
住宅借入金等特別控除額の計算明細書
源泉徴収票は会社から、住宅ローンの年末残高証明書は借入先の金融機関から受け取り、住宅借入金等特別控除額の計算明細書は税務署でもらうか国税庁のホームページから入手する。計算明細書の書き方は国税庁のホームページに掲載されているので、参照しながら記入しよう。
わかりにくいのは、借入額が借り換え前よりも多くなった場合だ。計算明細書に記入する数字は住宅ローンの年末残高証明書に記載されている残高と異なるため、前述の計算式で調整した金額を記入しなければならない。わからない場合は税務署で聞けば教えてくれるため、必要書類を持参して確認しに行くのが確実だろう。
会社が年末調整をやり直してくれる可能性もある
住宅ローン控除が年末調整に間に合わない時は確定申告をすることになるが、実は年末調整のやり直しを会社がやってくれることもある。申告期限は、年末調整をする年の翌年1月末だからだ。その期限までであれば、会社に依頼すれば年末調整をやり直してくれるかもしれない。
ただし年末調整をやり直すのは担当者の手間もかかり、やり直しの人数が多いと他の業務にも支障が出る可能性があるため、引き受けてもらえるかどうかは会社によるだろう。頼みにくいかもしれないが、依頼してみてはいかがだろうか。
住宅ローン控除の手続きを忘れて後から申告すると過去の住民税は還付されない
もし住宅ローン控除の手続きを忘れてしまった場合は、5年以内ならさかのぼって申告できる。
申告することで過去の分まで税金還付を受けられるが、後から申告した場合は所得税しか還付されない。住宅ローン控除では所得税だけでなく住民税も還付されることがあるが、確定申告の期限である3月15日までに申告しないと過去の住民税は還付の対象にならないので注意したい。
住宅ローンは借り換えせず金利を下げてもらう選択肢もある
住宅ローン控除はメリットが大きい制度なので、借り換え後も引き続き受けられるように、適用条件を逸脱したり申告を忘れたりしないようにしたい。借り換えには手数料など諸費用もかかり、トータルでメリットがあるかは綿密にシミュレーションしてから決めたほうがいいだろう。借り換えではなく、金融機関に相談して金利を引き下げてもらったほうが手間もかからず得なこともあるため、慎重に検討しよう。
住宅ローンの借り入れを検討する
◇変動金利の低さは業界トップクラス、無料で全疾病保障付き
>>「住信SBIネット銀行」の住宅ローンはこちら
◇住宅ローン取り扱い残高民間NO.1!7大疾病保障など団信の特約が充実
>>「三菱UFJ銀行」の住宅ローンはこちら
◇8大疾病保障付で安心、独自のサービス「クロスサポート」も魅力
>>「三井住友銀行」の住宅ローンはこちら
◇フラット35実行件数シェア1位!保証料・繰上返済手数料も無料
>>「ARUHI」の住宅ローンはこちら
◇保証料・一部繰上げ返済手数料が無料、イオンでの買い物も毎日5%
>>「イオン銀行」の住宅ローンはこちら
◇70金融機関から比較・申し込みができる
>>「住宅本舗」で住宅ローンを探す
文・國村功志(資産形成FP)
【関連記事 PR】
・住宅ローン控除は2年目以降も確定申告が必要か?忘れた場合はどうなる?
・住宅ローンをこれから組むなら変動金利と固定金利のどっちが得か
・40代で家を買うのは遅過ぎるのか?住宅ローンを組むときのポイントは?
・住宅ローンは年収800万円でいくらまで組めるのか
・iDeCo(イデコ)と住宅ローン控除の併用がデメリットとなるパターンとは