「長時間の座りっぱなしは死亡リスクを上昇させる」と多くの研究が報告しています。

しかし、いくら死亡リスクが上がると言われても、デスクワークの人は日中のほとんどを座りっぱなしで過ごすことは避けられません。

この問題は適度な運動で解消できると言われていますが、具体的にはどの程度、どんな運動をすれば効果があるのでしょうか?

11月25日に科学雑誌『British Journal of SportsMedicine』で発表された新しい研究では、これまで報告されてきた数々の研究のメタアナリシスを行い、長時間の座りっぱなしによる死亡リスクを帳消しにする運動時間を明らかにしたと報告しています。

この健康リスクは、すぐにでも毎日実行できる程度の運動で解消できるかもしれません。

目次
座りっぱなしの健康リスク
運動でなくてもOK 座りっぱなしの死亡リスクは40分の身体活動で解消できる
もしかしたらすでに解消されているかも?

座りっぱなしの健康リスク

長時間座りっぱなしの死亡リスクを帳消しにする運動量が明らかに
(画像=通勤がなく快適になったテレワーク。でも一日中座りっぱなしになってませんか? / Credit:canva、『ナゾロジー』より引用)

ほとんど一日中座りっぱなしで過ごしている、という人は結構多いのではないでしょうか?

こうした人たちにとって気になる問題が、最近座り続ける時間と死亡リスクには関連性が見られるという研究報告が増えていることでしょう。

これは血管疾患の発病率から、ガンの発生率まで、さまざまな病気のリスクが座りっぱなしの時間と相関していると報告されています。

しかし、座り時間を減らすというのは現実的に考えてかなり難しいの実情。適度に歩きまわりながら仕事をする、という対策も実行するのは難しいでしょう。

こうした問題は運動することで解消できることが同時に報告されていますが、この手の研究報告は最近多くなっており、どの程度の運動が実際信頼できる目安なのかはっきりしませんでした。

運動でなくてもOK 座りっぱなしの死亡リスクは40分の身体活動で解消できる

長時間座りっぱなしの死亡リスクを帳消しにする運動量が明らかに
(画像=複数の研究データを総合的に分析するメタアナリシス。 / Credit:canva、『ナゾロジー』より引用)

そこで今回の研究は、過去に報告された9つの研究に基づいたメタアナリシス(複数の研究結果を統合して、より高い見地から分析を行うこと)を行いました。

この研究には4カ国の合計4万4370人を対象とした調査データが含まれています。

分析の結果、座りがちな生活を送っている人の死亡リスクは、中程度以上の身体活動が減少するほど上昇していることがわかりました。

論文の中では中程度以上の身体活動を、1日約30~40分間行っている人は、座り時間が長い場合と少ない場合で見られる死亡リスクに有意差が見られなくなったと報告しています。

中程度の身体活動とは、なにも運動である必要はありません。

サイクリングなどでも、もちろんOKですが、速歩きやガーデニングなど適度に集中的な活動を行うだけで、早期死亡のリスクは減退するというのです。

メタアナリシスは複数の研究データを元にしているため、被験者、調査期間、調査条件などがバラバラになっており、これらを統合して分析するのは複雑で難しい作業です。

しかし、今回の調査データは自己報告の健康状態などではなく、ウェアラブル(身につけるタイプ)の測定器を使って集められているため、客観的な信頼性のある情報だといいます。

今回の研究と並行して、WHOも同じく科学雑誌『British Journal of SportsMedicine』に「身体活動と座りがちな行動に関するグローバルガイドライン2020」を発表しています。

WHOのガイドラインでも週150分~300分の中程度以上の身体活動や、週75分~150分の激しい有酸素運動が、座りっぱなしによる死亡リスクを解消させ、健康上の利益をもたらすと報告しています。

もしかしたらすでに解消されているかも?

長時間座りっぱなしの死亡リスクを帳消しにする運動量が明らかに
(画像=運動でなくても動いているならOK。 / Credit:canva、『ナゾロジー』より引用)

座りっぱなしの問題は、かなり簡単な方法で解消が可能なようです。

エレベーターの代わりに階段を使う、子供やペットと遊ぶ、歩く、家事をする、たったそれだけのことを1日40分程度こなせば、健康は維持することができます。

あまり難しい方法だと実行する気が起きませんが、この程度ならもしかしたらすでに毎日行っていて、座り仕事などの死亡リスクは普段から解消されていたという人も多いかもしれません。

ただ、まだ座りすぎの基準は各研究でもはっきりと示されてはいません。

これは今後の研究から明らかにされる問題ですが、現在この研究は非常に速いペースで進んでいるため、数年以内には回答が得られるのではないかと、研究者は語っています。


参考文献

sciencealert


提供元・ナゾロジー

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