日中の退屈は、夜ふかしと睡眠の質の低下を起こしている
(画像=『ナゾロジー』より 引用)

満足できない日々は、就寝時間の先延ばしにつながるようです。

3月に『Personality and Individual Differences』のVolume 171に掲載された論文によれば、日中の退屈や注意力の欠如が「就寝時間の先延ばし」と呼ばれる現象を引き起こしていたとのこと。

どうやら起きている時に、ある程度の達成感や満足を感じるか集中力を発揮しないと、人間の体は睡眠に対して拒否感が生じるようです。

しかし、何もせずに注意散漫なままボーっと過ごすことは生物にとって本来は至福のハズ。

なぜ人間の体はそれを許さないようにできているのでしょうか?

目次

退屈と注意散漫は就寝時間の先延ばしと睡眠の質の低下を起こすと判明

日中の退屈は、夜ふかしと睡眠の質の低下を起こしている
(画像=退屈と注意散漫は就寝時間の先延ばしと睡眠の質の低下を起こすと判明 / Credit:Canva、『ナゾロジー』より 引用)

近年、特に若い成人の間で「就寝時間の先延ばし」現象が生じていることがわかってきました。

多くの人々が、興奮して眠れないわけでもないのに、むしろ何も予定がないにもかかわらず、望んだ時間に眠ることができないようです。

安穏として生きることは動物にとって快楽であり、望むべき姿の1つですが、どうやら人間の体にとっては違うかもしれません。

そこで今回、シンガポールのジェームズクック大学の研究者たちは、むしろ「退屈」や「注意散漫」こそが人の眠りを妨げているのではないかと考えました。

仮説を証明するにあたっては270人の被験者を対象に、起きている時の「退屈」と「注意散漫」の度合いを記録し「就寝時間の先延ばし」現象が、その後に起きていたかどうかを調べました。

結果、起きている間の「退屈」と「注意散漫」な状態が、「就寝時間の先延ばし」現象の発生と強く関連していることを発見します。

さらに統計的な分析により、起きている間の「退屈」や「注意散漫」な状態は、睡眠の質を低下させ、体に対して慢性的なストレスになることも発見されました。

この結果は、脳の報酬系(快楽を感じる回路)の刺激や意識の活性化が行われないと、人間の体は睡眠に対する拒否感を覚えると共に睡眠の質の低下を起こし、あたかもペナルティーのように、人間を苦しませることを示します。

退屈するもの眠るべからず?

日中の退屈は、夜ふかしと睡眠の質の低下を起こしている
(画像=何もしないでいると、人間は眠れなくなる / Credit:Canva、『ナゾロジー』より 引用)

今回の研究により、何もせずボーっと過ごすことが、睡眠不足の形で体に対する大きなストレスを生むことが判明しました。

現在、就寝時間の先延ばしと睡眠の質の低下は多くの若者を苦しめています。

研究を行ったシューデル博士らは最後に、眠りの拒否が起きない程度に、日中の活動を行うことの重要性を強調しました。


参考文献
New study sheds light on how boredom affects bedtime procrastination and sleep quality

元論文
Boredom affects sleep quality: The serial mediation effect of inattention and bedtime procrastination


提供元・ナゾロジー

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