人類の最良のパートナーである犬について、新たな知能の高さが明らかになりました。

エトヴェシュ・ロラーンド大学(ハンガリー)の研究によると、犬は知らないモノの名前を4回聞いただけで覚える学習能力を持っていたとのこと。

もし犬を飼っていれば、同じ知能テストを自宅で簡単に行なえます。

ただし、この能力は、特定の犬種や高度に訓練された犬に限定されているため、犬が名前を覚えられなくても、落ち込む必要はないようです。

研究は、1月26日付けで『Scientific Reports』に掲載されました。

目次
名前を4回聞いただけで記憶に成功
学習に向く犬種と、不向きな犬種とは

名前を4回聞いただけで記憶に成功

研究チームは、高度に訓練された2匹の犬、ボーダーコリーの「ウイスキー」と、ヨークシャーテリアの「ビッキー・ニーナ」を対象に実験しました。

ウイスキーは59個のモノの名前を覚えており、ビッキー・ニーナは42個のオモチャを記憶しています。

2匹には最初に、指定したオモチャを持ってこれる能力があるかを確かめられました。

与えられる情報はオモチャの名前だけであり、飼い主と実験者は、目線や身ぶりがヒントとならないようオモチャが見えない位置にいます。

2匹ともにすべてのオモチャの名前を知っていることが確認できた後、実験者は、2つの新しいオモチャを追加し、それを持ってくるよう指示しました。

このテストで、ウイスキーはほぼ100%の確率で、ビッキー・ニーナは52.5%の確率で指定されたオモチャを選ぶことに成功しています。

しかし、この結果は(とくにウイスキーは)、知らない名前のオモチャを見たことのないモノに当てはめた「消去法」で選んでいると考えられました。

記憶力の高さは「犬種」で決まる!? 学習訓練に向く犬、向かない犬とは
(画像=テストに挑戦中のウイスキー / Credit: Scientific Reports、『ナゾロジー』より引用)

記憶力の高さは「犬種」で決まる!? 学習訓練に向く犬、向かない犬とは
(画像=飼い主はオモチャの見えない位置に / Credit: Scientific Reports、『ナゾロジー』より引用)

そこで次のテストでは、選択できるオモチャをすべて知らないモノに変えました。

飼い主はまず、指定したオモチャを犬に見せて、それで遊ぶことを許可します。

そして、オモチャの名前を4回コールした後、それを取ってくるように指示しました。

その結果、2匹ともに高い確率で指定したオモチャを選ぶことに成功したのです。

これは犬がモノの名前を覚えるスピードが予想以上に早いことを示します。

ところが、2匹ともに名前を覚えてから10分後に記憶力が著しく低下し始め、1時間後には完全に忘れていたのです。

名前を保持するには、学習を繰り返して記憶を強くする必要がありました。

一方で、同様のテストをボランティアで募った一般の犬20匹にも実施したところ、どの犬も新しいオモチャの名前を覚られませんでした。

研究チームは、この学習能力の差について、先の2匹はあらかじめ高度に訓練されていたことに加え、名前を覚えやすい(学習に向いた)犬種があることを指摘します。

では、どの犬種が学習に向いているのでしょうか。

学習に向く犬種と、不向きな犬種とは

研究チームは、この種の知能テストで最も頻繁に使用される犬種が「ボーダーコリー」であることを指摘します。

ボーダーコリーはもともと、可聴域が広くなるように交雑された犬種であり、人の声にも敏感で、コミュニケーションが非常に取りやすいのです。

2011年の研究では、チェイサーという名前のボーダーコリーが、1,022種のモノの名前の記憶に成功しています。

また、「ヨークシャーテリア」も人とのコミュニケーション力が高く、学習訓練に向いているとのことです。

記憶力の高さは「犬種」で決まる!? 学習訓練に向く犬、向かない犬とは
(画像=ボーダーコリーの「ウイスキー」 / Credit: Claudia Fugazza、『ナゾロジー』より引用)

記憶力の高さは「犬種」で決まる!? 学習訓練に向く犬、向かない犬とは
(画像=ヨークシャーテリアの「ビッキー・ニーナ」 / Credit: Marco Ojeda、『ナゾロジー』より引用)

反対に、サルーキやグレイハウンドといった犬種は、狩りやレースに長じた犬種であり、そもそも学習訓練には向いていないのです。

日本の柴犬も長い間、猟犬として飼育されてきたため、遺伝的には学習に長けていないかもしれません。

彼らにオモチャの名前を覚えさせようとしても、まず興味を持たせることが難しいでしょう。

本研究で高い知能を示したウイスキーとビッキー・ニーナは、種として学習訓練に向いていたことがプラスに働いたと見られます。

研究チームは「すべての犬種に学習訓練を施すことは可能ですが、飲み込みの早さやモチベーションは、それぞれの犬種に大きく制限されるでしょう」と述べています。

もし犬をペットとして飼うなら、友達にしたいのか、番犬にしたいのかを考えてから、それに合った犬種を選ぶと良いかもしれません。


参考文献

How to tell if your dog is a genius

元論文

Rapid learning of object names in dogs


提供元・ナゾロジー

【関連記事】
ウミウシに「セルフ斬首と胴体再生」の新行動を発見 生首から心臓まで再生できる(日本)
人間に必要な「1日の水分量」は、他の霊長類の半分だと判明! 森からの脱出に成功した要因か
深海の微生物は「自然に起こる水分解」からエネルギーを得ていた?! エイリアン発見につながる研究結果
「生体工学網膜」が失明治療に革命を起こす?
人工培養脳を「乳児の脳」まで生育することに成功