かわいいは「正義」から「キメる」ものになるかもしれません。

『Frontiers in Psychology』に掲載された論文によれば、かわいい画像を見ることで視線が「静かな目」と呼ばれる特殊な状態になることがわかったとのこと。

「静かな目」とは、スポーツ選手などが重要な局面で、視線の動きを停止させる現象として知られており、集中力との関連性が知られています。

もしこの効果を上手くスポーツに取り入れることが可能になれば、合間合間に、かわいい画像を見る「かわいいドーピング」が可能になるかもしれません。

目次
かわいいはドーピング?! かわいい画像を見ると注意力が増し「静かな目」になる
かわいい画像は「静かな目」の持続時間を延ばす
かわいいは薬になるかもしれない

かわいいはドーピング?! かわいい画像を見ると注意力が増し「静かな目」になる

「かわいいは正義」が証明される。かわいい画像を見ると注意力が増すと明らかに
(画像=かわいいは「正義」から「キメる」ものに? かわいい画像を見ると注意力が増し「静かな目」になると判明! / Credit:Canva、『ナゾロジー』より)

近年になって、かわいい画像と注意力の関係が注目されるようになっています。

特に2012年には、日本の広島大学の入戸野広准教授(当時)らによって、かわいい動物の画像を見た人間の注意力が高まることが証明され、70を超える国々の新聞の紙面で「kawaii」という単語と共に紹介されました。

研究グループは、50人ほどの大学生たちに子猫や子犬など、かわいい動物の子供、大人の動物の画像、食べ物の画像の3種類をみせた場合に、注意力に変化が起こるかを調べました。

結果、かわいい動物の子供の画像をみたグループにおいて、瞬間的に表示される文字を認識可能にする「注意力」と「細かな作業に対する正確性」が著しく増加していたことがわかりました。

かわいい動物の画像を見るだけで注意力が増すという結果は非常に驚きであり、また誰もが実践できる方法として非常に優れているため、研究は多くの人々に着目されました。

また2016年に行われた研究では、かわいい画像を見ると、脳の中に特徴的な素早い神経反応が生じ、報酬系(快楽回路)が活性化することが示されました。

この結果は、人間の脳にはかわいいものに反応を示す「かわいい回路」が存在し、回路の刺激が脳に対して快楽をうみだすことを示します。

一方、スポーツの世界では神秘的な「静かな目」と呼ばれる現象が、選手たちの成績を上げることが知られていました。

「静かな目」とはスポーツ選手などが試合の重要な局面において視線の動きを固定化させる不思議な現象として知られおり、「静かな目」の持続時間が長いほど、ボールのシュートなど、その後の行動の成功率が高くなることもわかっていました。

そこで、早稲田大学の研究者たちは、かわいい画像と「静かな目」と呼ばれる現象の関係に着目しました。

研究者たちは注意力や正確性の向上の背景に、この「静かな目」が存在するのではないかと考えたからです。

かわいい画像は、本当にスポーツ界の神秘と関連していたのでしょうか?

かわいい画像は「静かな目」の持続時間を延ばす

「かわいいは正義」が証明される。かわいい画像を見ると注意力が増すと明らかに
(画像=かわいい動物の子供の画像を見ると「静かな目」の持続時間が伸びる(中央値) / Credit:Frontiers in Psychology、『ナゾロジー』より)

かわいい画像は「静かな目」と関連しているのか?

謎を確かめるために研究者たちは、かわいい子どもの動物の画像を見せた被験者と大人の動物の画像を見せた被験者たちに対して「手術ゲーム」と呼ばれる注意力と動きの正確性を問われるゲームを行ってもらいました。

このゲームでは、ピンセットを使用して、ゲームボードに描かれた患者の体の穴から12個の小さな断片(つまり、内臓の部分)を取り除きます。

ピースを取り外しながら落としたり、ピンセットで穴の端に触れたりすることは、どちらも失敗として分類されました。

また研究者たちは被験者がゲームを行っている間に瞳の動きをモニタリングし、作業中に無意識的に発生する「静かな目」の持続時間(合計12回分)を計測しました。

結果、かわいい子どもの動物の画像をみた被験者たちにおいてゲームの成績が向上すると同時に「静かな目」の持続時間が延長していることがわかりました。

この結果は、かわいい動物の画像が従来のように注意力や動きの正確性を向上させる背景に、スポーツ選手と同じく「静かな目」現象が存在していることを示します。

かわいいは薬になるかもしれない

「かわいいは正義」が証明される。かわいい画像を見ると注意力が増すと明らかに
(画像=かわいいは「正義」から「キメる」ものに? かわいい画像を見ると注意力が増し「静かな目」になると判明! / Credit:Canva、『ナゾロジー』より)

今回の研究で、かわいい画像は「静かな目」の持続時間を増加させることが示されました。

この結果は、かわいい画像を使うことによって、自然発生する「静かな目」の効果(持続時間)をトップダウンで制御できることを示します。

この効果をスポーツに取り入れることができれば選手たちのパフォーマンスを一時的に増幅させることが可能になるでしょう。

競技直前にスマホでかわいい動物をみる「かわいいドーピング」を取り入れる選手が出てくるかもしれませんね。

<参考文献>
The Power of Puppies: Looking at Cute Images Can Improve Focus
Study finds that looking at cute furry kittens increases productivity
Effects of Viewing Cute Pictures on Quiet Eye Duration and Fine Motor Task Performance
The Power of Kawaii: Viewing Cute Images Promotes a Careful Behavior and Narrows Attentional Focus
On Cuteness: Unlocking the Parental Brain and Beyond

提供元・ナゾロジー

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