スマホには独自の細菌世界が存在するようです。
2月26日に公開された論文、および先行する研究によると、スマートフォンをはじめとした携帯電話には、持ち主の生活場所や仕事を反映する、独自の細菌叢(さいきんそう、細菌の集合のこと)が存在すると明らかになっています。
人によって腸内に住む細菌が異なることは以前から知られていましたが、スマホでも持ち主にごとの違いが認められるとは驚きです。
私たちのスマホの上には、いったいどんな世界が築かれているのでしょうか?
目次
スマホに潜む細菌たちは独自の細菌叢を築いていたと判明!
スマホ上の細菌叢は持ち主を写す鏡となる
スマホに潜む細菌たちは独自の細菌叢を築いていたと判明!
かつて人類が最も手にした道具は石器や動物の骨でした。
しかし技術の発達とともに手にする道具も変化し、現在の人類が最も手にするのはスマホをはじめとする携帯電話です。
一方、近年の遺伝子解析技術の進歩により、様々な環境に住む細菌たちの世界が調べられるようになってきました。
そこで今回、研究者たちは、携帯電話に潜むであろう細菌たちに着目しました。
携帯電話の表面には手の油や皮膚の断片(垢)といった豊富な「栄養素」が継続的に供給されているため、細菌たちの世界が出現している可能性があったのです。
研究者たちはさっそく、携帯電話の表面から汚れを収集し、どのような細菌が潜んでいるかを調べました。
結果、携帯電話の表面には、人間の皮膚に類似する、細菌叢が存在していると判明します。
しかも興味深いことに、その多様性は一様ではありませんでした。
携帯電話の持ち主の生活環境や仕事によって、かなりの変動があったのです。
例えば、持ち主が医療従事者である場合、携帯電話の表面には薬剤耐性菌が他の職の人に比べて多く存在していました。
病院では抗生物質を用いた頻繁な殺菌が行われているため、皮肉なことに薬剤耐性菌が最も生じやすい環境になっています。
そしてこれら薬剤耐性菌は医療従事者の指先を通して携帯電話の上に運ばれ、細菌世界を構成する一員になっていたのです。
さらに、持ち主の生活場所の違いも、細菌世界の大きな変動要因でした。
上の図ではカリフォルニア、ワシントンDC、バンクーバなど、持ち主の居場所の違いが、細菌たちの構成比率を大きく変えていることを視覚的に示しています。
これらの結果は、携帯電話上の細菌たちは持ち主ごとに独自の世界を築いていることを示します。
スマホ上の細菌叢は持ち主を写す鏡となる
関連する3つの研究により、携帯電話上には独自の細菌世界が存在することが示されました。
細菌たちは情報技術の進歩によって出現した携帯電話という新たな環境にも順応し、生活圏を築いていたのです。
この事実から「他人の携帯に触れる」ということが、決して推奨されないことがわかります。
免疫力が衰えた人が、医療従事者の持つ携帯に触ってしまい、薬剤耐性菌を持つ病原体に感染してしまうということが十分に起こりうるでしょう。
一方で、持ち主ごとに携帯電話の細菌叢が異なるという結果は、犯罪捜査や法医学において、携帯電話から持ち主の職業や生活環境を類推する手がかりにもなります。
研究者たちは将来的に、携帯電話以外に靴や服などの細菌叢のデータを体系立てることで「細菌捜査」が可能になると考えているようです。
参考文献
Our phones have their own microbial communities, just like us
元論文
Microbes on the Mobile Phones of Healthcare Workers in Palestine: Identification, Characterization, and Comparison
Forensic analysis of the microbiome of phones and shoes
Bacterial communities associated with cell phones and shoes
提供元・ナゾロジー
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