近年、母親の肥満や糖尿病が子供の糖尿病リスクを増大させると分かってきました。
対照的に、新しい研究では妊娠中の運動によって子供が将来糖尿病になりにくくなると判明しました。
東北大学学際科学フロンティア研究所に所属する楠山譲二助教ら研究チームは、運動によって生じる特殊なタンパク質が胎盤を通って胎児に伝わることを発見したのです。
研究の詳細は、3月25日付の科学誌『Cell Metabolism』に掲載されました。
妊娠中の運動が胎児の糖代謝能を向上させる
研究では、妊娠中のマウスとヒトに運動させ、その効果と胎児への影響を調べました。
その結果、妊娠中の運動が、胎盤内で「スーパーオキシドジスムターゼ 3(略称:SOD3)」と呼ばれる特殊なタンパク質の発現を増加させると判明。
SOD3は活性酸素を分解するための酵素であり、細胞外空間に存在するものです。
そして発現したSOD3は胎盤を通して、胎児の肝臓に働きかけていました。
これにより胎児は、糖代謝遺伝子の発現が増加し、肝機能を改善。
つまり、妊娠中の運動効果は胎児にも伝わり、将来、肥満や糖尿病になりにくくしていたのです。
この研究結果は、妊娠中の運動が子供の肥満リスクを低減するメカニズムを世界で初めて解明するものとなりました。
今後、次世代の健康を増進する新しい予防医療の開発に役立つでしょう。
生まれてくる子供の健康を願うなら、妊娠中こそ、適度に運動するべきなのです。
参考文献
妊娠中の運動が胎盤を通じて子の肥満を防ぐ 胎盤・運動・栄養を活用した次世代の健康増進
元論文
Placental superoxide dismutase 3 mediates benefits of maternal exercise on offspring health
提供元・ナゾロジー
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