一卵性双生児の遺伝子的な違いが明らかになりました。
1月7日に『Nature Genetics』に掲載された論文によれば、一卵性の双子の遺伝子は複数の違いがある上に、およそ7組に1組(15%)は、片方が生じたほとんどの突然変異を引き受けていることが示されました。
単一の受精卵からうまれる双子の遺伝子は理論上、同じであるはずなのに、なぜ片方の兄弟だけに変異(コピーエラー)が集中してしまったのでしょうか?
目次
新たな研究は双子の違いを探った
変異細胞のみでつくられた体
環境の影響は思ったよりも少ない
新たな研究は双子の違いを探った
一卵性双生児は、遺伝学の研究において非常に重要な存在でした。
知能や健康、異性の好みや食べ物の好みといった要因が、どれほど遺伝の影響を受けているかを調べるには、違う環境の元で育てられた一卵性の双子を比較するのが最良の方法だったからです。
しかし、より厳密な意味では、双子の遺伝子は同じではありません。
例えば2つに別れた直後の受精卵が、それぞれ双子の元となった場合、細胞が増殖する過程で生じた片方の変異(コピーエラー)は、もう片方に引き継がれることはありません。
そのため、同じ受精卵からうまれた双子でも、理論上、僅かに遺伝子が異なるのです。
ただ、その違いがどの程度になるかは、これまであまり調べられてきませんでした。
しかし今回、アイスランド大学の研究者たちが381組の双子の遺伝子を細部まで調べた結果、一卵性双生児であっても平均して5.2個の遺伝子に違いがあることが判明しました。
特に、一致率が低かった39組では100を超える遺伝的な違いが確認されたとのこと。
一方、完全に同じ遺伝子を持っていると判別されたのは全体の10%である38組のみでした。
この結果は、一卵性の双子であっても少なくない遺伝的な差異があることを示します。
これらの「違い」は当初、先に述べたように、個々の体への細胞の割り当てが済んだ後に、細胞数が増える過程で生じた、変異(コピーエラー)の結果だと考えられてきました。
この考えは概ね正しかったのですが、奇妙な例外があったのです。
驚くべきことに、およそ7組に1組(15%)の双子では、片方の子どもに対して、変異した細胞の集中が起きていたのです。
変異細胞のみでつくられた体
発見の契機となったのは、両親の遺伝子との比較でした。
双子のうち一方が両親の遺伝子をそのまま引き継いでいるのに、もう一方の兄弟の遺伝子に、変異が集中しているケースが全体の15%ほどの頻度で発生していることに研究者たちは気付きました。
はじめは、個々の体に細胞が割り振られた後に起きた変異だと考えていました。
しかし研究者たちが双子の受精卵(14日以内ならば合法)を調べた結果、変異は細胞が個々の体に割り振られる前に発生しており、兄弟の一方が正常な細胞からなり、もう一方の兄弟は正常な細胞に加えて変異した細胞が集中している例を発見したのです。
中には、一方の体のほぼ全てが、変異細胞で構成されているケースもありました。
この事実は、何らかの仕組みが働き、正常な細胞と変異した細胞の選別が働いたことを意味します。
環境の影響は思ったよりも少ない
今回の研究により、一卵性双生児の間での遺伝子の違いが明らかにされました。
同じ受精卵から別れた双子でも、多ければ100カ所も異なる(平均5.2カ所)ことが示されたのです。
しかしこれらの変異は、両方の兄弟に対して常に等しく起きているわけではありませんでした。
受精卵の内部では、変異した細胞に対して、何らかのマーキングがほどこされ、変異した細胞がどちらかの兄弟の体へと集中して集まっていたのです。
変異の起きた時期が早ければ早いほど、集中率は高まり、全体の15%にあたるケースでは、体の100%が変異した細胞からなる兄弟が形成されていました。
また、一卵性双生児にも遺伝的な違いが存在するということは、これまで環境のせいだと考えられていた才能が、再び遺伝の取り分になる可能性を示唆しています。
この遺伝的な違いが、限りなく似ているとされていた双子の間に生まれる個性の差なのかもしれませんね。
参考文献
livescience
提供元・ナゾロジー
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