「人間50年」も遠い昔となり、現在は「人間80年」時代に入っています。
それでも100歳まで生きる人は少なく、不老不死も夢のまた夢の話です。
しかし、この広い地球を見渡してみれば、私たちより遥かに長く生きられる生物はたくさんいます。
それでは、今この星で最も寿命の長い生物は一体何でしょうか。
また、人類の夢である「不老不死」を叶えた生物はいるのでしょうか。
目次
1499年生まれの「アイスランドガイ」
2万年生きる「海綿動物」、不老不死を叶えた「ベニクラゲ」
500年以上生きる「ニシオンデンザメ」
1499年生まれの「アイスランドガイ」
2006年にイギリスの研究チームが、アイスランドの大陸棚である貝を採取しました。
この貝は「アイスランドガイ(Arctica islandica)」という二枚貝で、とても長生きな種であり、1982年にはアメリカで220歳の個体が見つかっています。
本種の年齢は、1年ごとに積み重なる貝殻の年輪を数えることで計測できます。
チームがこの貝の年齢測定をした結果、507歳という驚くべき数値が出たのです。
2006年の時点で507歳ですから、この貝が生まれたのは1499年のこと。
その時、日本は戦国時代であり、イタリアではレオナルド・ダ・ヴィンチが『モナ・リザ』を制作している頃でした。
また、中国では明王朝(1368〜1644)が栄えていたことから、貝は「ミン(Ming)」と命名されています。
ミンは「世界一長生きの貝」として、ギネス世界記録にも認定されました。
アイスランドガイの最大寿命はまだ分かっておらず、探せばミンよりずっと長生きの貝が見つかるかもしれません。
しかし、ミンが世界一長寿の生き物かと問えば、答えはノーです。
海の世界には、まだまだ上がいます。
2万年生きる「海綿動物」、不老不死を叶えた「ベニクラゲ」
「ガラス海綿類(Hexactinellid)」と呼ばれる海綿動物の寿命は、1万年を軽く超えると言われます。
世界中の海で見られ、水深450〜900メートル付近に生息しています。
たいていコップのような形をしており、高さは10〜30センチほど。成長がきわめて遅いことで知られ、これは寿命の長い生き物に共通する特徴です。
正確な年齢の測定は難しいですが、これまでの最高記録として、推定2万3000歳の個体が見つかっています。
どれくらい生きられるかも研究中であり、中には「適切な環境下にあるかぎり不死身ではないか」と主張する専門家もいます。
その一方で、すでに不老不死を叶えてしまったとされるのが「ベニクラゲ(Turritopsis spp.)」です。
ベニクラゲは、若返りのシステムを手に入れており、環境条件が整っているかぎり、永遠に若返り続けることができます。
普通のクラゲは、成熟したオスとメスが交配し、子孫を残すと死んでしまいます。
残された受精卵は「プラヌラ」という幼生期間を経て、「ポリプ」という状態に変化。ポリプから木のように枝がいくつも生えて、そこから実がなり、その実がクラゲの子となるのです。
ところが、ベニクラゲはケガをしたり、環境が変化して生存に危機を覚えると、自らポリプの状態になることができます。
これは子どもでも大人でも可能であり、まったく同じ遺伝子で最初からリスタートできるのです。
ベニクラゲは天敵に食べられないかぎり無限に生きられますから、現時点では、地球一寿命の長い生物と言われます。
ただ、ここまで挙げたのは、私たちとは繋がりが薄い無脊椎動物ばかりです。
では、ヒトと同じ脊椎動物の中で最も長生きなのは何でしょうか。
500年以上生きる「ニシオンデンザメ」
脊椎動物には、160年生きるガラパゴスゾウガメや、226年生きた日本のニシキゴイなどがいますが、その中で最も長寿の生物は「ニシオンデンザメ(Greenland shark)」というサメです。
グリーンランド近海や北大西洋に分布し、基本的に深海性ですが、水温の低い場所であれば浅瀬にも浮上してきます。
ニシオンデンザメの寿命は200年程度とされていますが、2016年の研究で、全長5.02メートルの個体が推定で392±120歳と発表されました。
つまり、最低で272歳、最高で512歳となります。
いずれにしても、脊椎動物の中ではナンバーワンでしょう。
彼らの長寿の秘訣は成長スピードの遅さにあり、1年でわずか1センチしか大きくなりません。
また、交配が可能な成熟年齢は150歳とされており、世代交代も私たちと比べて非常に遅いことが伺えます。
こうして見ると、長寿の生き物は水棲生物にとても多いのが分かります。
長生きの秘密は海の世界に隠されているのかもしれません。
参考文献
The oldest animal (that we know of) — and it’s not what you think
文・ライター:大石航樹 編集者:やまがしゅんいち/提供元・ナゾロジー
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