目次
▼シーケンシャルトランスミッションとは?
▼シーケンシャルトランスミッションの仕組み・構造
▼シーケンシャルトランスミッションのメリット・デメリット
▼シーケンシャルトランスミッションではクラッチ操作はどうなる?
▼シーケンシャルトランスミッション搭載の市販車
▼シーケンシャルミッションの代表的なメーカー
▼シーケンシャルミッションに載せ替えたいときはどうする?

シーケンシャルトランスミッションとは?

シーケンシャルミッションとは?構造とメリット・デメリットを解説!市販車はある?
(画像=©Shutterstock.com/Jakub Janele、『MOBY』より引用)

シーケンシャルトランスミッションとは、1速ずつギアを操作するトランスミッションです。sequential=継続的という意味の通り、順番にギアを上げる、または落としていきます。

1速ずつギアを操作できるためシフトミスがないことがメリットで、レースの世界などで使用されています。

シーケンシャルトランスミッションのギア操作映像

一般的なMT車の場合、例えば4速で走行していて信号のために停車した場合、次に発進するときは4速からギアを抜き、1速を選択します。このとき、ギアボックスの中では、4速→N(ニュートラル)→1速とギアが動いています。

一方、シーケンシャルトランスミッションは上記のようなケースで4速から1速にする場合も、1速ずつギアを動かします。ギアボックスの中では4速→3速→2速→1速とギアが動いています。

シーケンシャルトランスミッションの仕組み・構造

シーケンシャルミッションとは?構造とメリット・デメリットを解説!市販車はある?
(画像=見慣れたMTシフトはこちら。いわゆるH型ミッション、『MOBY』より引用)

通常、MT(マニュアルトランスミッション)では「H型ミッション」が使われています。一般的なドライバーが車の走行中にMT操作をする場合、2速→3速→4速…と順番にギアを上げていきますが、間のギアを飛ばせる「ギア飛ばし」も可能な構造です。

対するシーケンシャルミッションは、シフトレバーの前後操作や、パドルシフトの操作で、1速ずつ順番にギアを変更していきます。これは、シーケンシャルミッションのシフトゲートが一列に並んでいるためです。

H型ミッションにおいて停車時に4速→Nに戻す際にギアを飛ばせるのは便利ですが、走行中にギアを入れ間違えてしまい、意図せず「ギア飛ばし」をしてしまうと、思ったように車の操作ができなかったり、エンジンブローやミッション破損などのトラブルに繋がります。

シーケンシャルミッションはギア飛ばしこそできませんが、1速ずつ確実にシフトチェンジできるため、シフトミスを防ぐことができる構造です。

セミオートマやDCTに採用されるミッション構造

シーケンシャルミッションは、AMT(セミオートマ)やDCT(デュアルクラッチトランスミッション)に採用されるミッション構造です。

AMTもDCTも、構造上クラッチを有していますがクラッチペダル操作が不要なため、AT限定免許で乗ることができるトランスミッション形式です。

クラッチ操作とシフトチェンジを自動化したAMT、奇数ギアと偶数ギアそれぞれの操作を自動化したDCTは、電子制御の油圧アクチュエーターを搭載しています。

シーケンシャルミッションによる1速ずつのギア変更と組み合わさることで、キビキビしたスポーティな走りをクラッチ操作なしで気軽に楽しめるようになっています。

シーケンシャルトランスミッションのメリット・デメリット

シーケンシャルミッションとは?構造とメリット・デメリットを解説!市販車はある?
(画像=©phaisarnwong2517/stock.adobe.com、『MOBY』より引用)

メリット①シフトミスがほぼない

シーケンシャルトランスミッションはその構造上、シフトミスを防ぐことができます。1速ずつギアチェンジをしていくことで、例えば5速から4速にシフトダウンするつもりが、誤って5速から2速に入ってしまうようなミスが起こりにくくなります。

これによりエンジンやミッションに過度な負担がかかることを避けられるほか、ハンドル操作に集中できるのがメリットです。

メリット②クラッチ付き車だがAT限定で乗れる

セミATやDCTといった、シーケンシャルミッション採用車は、CVTでは味わえないキビキビしたスポーティーが乗り味が特徴です。AT限定免許でも、こうした車に興味がある人には魅力的でしょう。

クラッチ操作がないため、運転に慣れるまで自信がないという人も安心して走りを楽しめます。

デメリット①街乗りでは不便かも

シーケンシャルミッションは、即座に2つ上のギアを選択するなどの操作ができません。したがって、どのギアからもニュートラルにできるわけではないといった煩雑さがデメリットになります。

そのため、シーケンシャルトランスミッションは発進と停車を繰り返す街乗りでは不便に感じることがあるかもしれません。

デメリット②車によってはシフトチェンジ時の衝撃が大きい

CVTに比べ、MT車はスムーズにギアを繋げなければシフトチェンジ時に「ガクン」というショックがあります。さらに、H型ミッションに比べてシーケンシャルミッションを採用するセミATやDCTは、このショックが大きく感じる場合があります。

また、レース車両などで多く使われるシーケンシャルミッションの1つ「ドグミッション」は、ギアチェンジの際にギア同士をスムーズに繋ぎ合わせる機構「シンクロメッシュ」がないため、ギアチェンジのショックや音が大きいうえ、ギアが固くて操作が大変というデメリットもあるようです。

街乗りを想定して採用されるセミAT車やDCT車では問題ありませんが、社外品のドグミッションに載せ替える際は、そういった点にも注意しましょう。

(ちなみにシンクロメッシュがないと、回転が合っていなくても無理矢理ギアが入ってしまいます。そのため、ドグミッションにおいてはシフトミスする可能性があります)

シーケンシャルトランスミッションではクラッチ操作はどうなる?

シーケンシャルミッションとは?構造とメリット・デメリットを解説!市販車はある?
(画像=©Shutterstock.com/loraks、『MOBY』より引用)

通常のMT車のトランスミッションを、オーナーの意向でシーケンシャルトランスミッションに交換している場合は、従来どおり発進時やギアチェンジの際にクラッチ操作は必要です。(→シーケンシャルシフターと言います。後述します)

しかし、市販車でシーケンシャルトランスミッションを搭載しているトヨタ MR-Sなどは、クラッチをコンピュータ制御で動かしているのでクラッチペダルはなく、ドライバーのクラッチ操作は不要です。

トヨタ MR-Sのシーケンシャルトランスミッション搭載モデルは、セミATともよばれ、ギアチェンジをドライバーの任意で行いますが、クラッチ操作は自動化されています。そのためアクセルとブレーキの2つのペダルしかなく、クラッチはありません。

ドライバーがギアチェンジのためにシフトレバーを動かすと、コンピュータ制御により自動的にクラッチが切れます。ギアチェンジが行われると、再びクラッチが自動的につながる仕組みになっています。

AT車:オートマチック・トランスミッションその他のクラッチの操作を要しない機構がとられており、クラッチの操作装置を有しない自動車等

道路交通法施行規則 第19条 別表第二

この場合、操作はドライバーがギアチェンジを行い変速しているのでMT車に思われますが、発進時などにドライバーによるクラッチ操作の必要のない車はAT車と同じカテゴリーに入るため、AT限定免許でも運転が可能というわけです。

シーケンシャルトランスミッション搭載の市販車

レースカーに主に使われているシーケンシャルトランスミッションですが、市販車でも搭載された車があります。

シーケンシャルトランスミッション搭載車 トヨタ MR-S

シーケンシャルミッションとは?構造とメリット・デメリットを解説!市販車はある?
(画像=『MOBY』より引用)

1999年、トヨタはMR-2(SW20)の後継モデルとなる、MR-Sを発売しました。後継モデルとはなっていますが、先代のMR2とは大きく主旨が異なります。

運転席・助手席のみの2シーターであること、エンジンが座席背面にあるミッドシップレイアウトであることは変わりませんが、オープンカーになり、エンジンも1.8L NAエンジンだけのラインナップという、MR2よりもライトなスポーツカーとして生まれました。

シーケンシャルトランスミッションが搭載ミッションとして選べる

MR-Sは新車販売時、前期型では5速MTか5速セミATを、後期型では6速MTか6速セミATを選択できました。

このうち、セミATは正確にはシーケンシャルマニュアルトランスミッションとなっており、ギアがドライバーの任意で変速できます。これにより、法律上AT免許でも乗れる、国産車初のシーケンシャルトランスミッション搭載車となりました。

Iパターンシフトでギアチェンジ

MR-SのSMTでは、通常のATのシフトノブとは異なり、レンジも「R」(バック)・「N」(ニュートラル)と、「S」(シーケンシャル)モードの3つ。

「S」は前方に「-」、後方に「+」となっている合計4つのレンジとなっています。AT車が発進するときに使用する「D」レンジはありません。

この「+」「-」のパターンは、加速時は後方にG(重力)がかかるため、シフトアップしやすい後方に「+」を、反対に減速時には前方にGがかかるのでシフトダウンしやすいように前方に「-」を配置しています。

何速のギアが選択されているかは、常時メーター内に数字で表示されます。

コンピュータ制御による運転のしやすさ

MR-Sのシーケンシャルトランスミッション搭載モデルは、先述の通りクラッチがコンピュータ制御されているためクラッチ操作をドライバーがすることはありません。

また、停車時はAT車と同様にシフトノブをNレンジに入れることでニュートラルになります。

停車直前に何速にギアが入っていてもニュートラルにすることができますが、Nレンジから再び「+」レンジにレバーを入れて発進するときは、ギアは1速となります。

コンピュータのサポートによって運転に集中できる車であると言えます。

シーケンシャルミッションの代表的なメーカー

シーケンシャルミッションとは?構造とメリット・デメリットを解説!市販車はある?
(画像=『MOBY』より引用)

憧れのシーケンシャルミッションは、レースで多く使われはしますが、レース専用のミッションではありません。専用で製造しているメーカーが存在しますので、購入して愛車に乗せることも可能です。

HKS(株式会社エッチ・ケー・エス)

日本を代表する、自動車部品の製造、販売を行うメーカーです。モータースポーツのみならず、自動車を趣味とする人々の憧れともいえるアフターパーツを数多く製造、販売しています。

日産 シルビア(S15~S15)、180SXやマツダ・RX-7(FD3S)専用のシーケンシャルトランスミッションを製造、販売を行っていました。

ホリンジャーエンジニアリング

オーストラリアに本社を構えるミッションメーカーです。母国の他、アメリカやヨーロッパなどモータースポーツの盛んな多くの国に輸出され、世界中から非常に信頼の厚いメーカーです。

日本では、有名チューニングショップのタイムアタック用デモカーや、織戸学選手などのトップドライバーが自身の乗るD1車両にこの会社のシーケンシャルミッションを搭載するなど、非常にメジャーになっています。

ヒューランドレーシング

イギリスに本社を置く、レーシングミッションやモータースポーツ用のギアボクス等を開発しているメーカーです。50年以上の歴史を誇る、まさに老舗メーカーです。

国内最高峰レースSUPER GTやフォーミュラニッポン、世界的にはル・マン24時間レースに参戦するチームにシーケンシャルトランスミッションをはじめとするパーツを提供し、サポートしています。

クワイフエンジニアリング

イギリスに本社を置く、自動車およびバイクの、レース用駆動部品メーカーです。シーケンシャルミッションの他、デファレンシャルギアやドライブシャフト、強化ステアリングラックなどの製造をしています。

レース活動への協力も積極的で、イギリスで開催されているGINETTA・G50などのレースシリーズにワンメイクギアボックスを供給しています。

シーケンシャルミッションに載せ替えたいときはどうする?

シーケンシャルミッションとは?構造とメリット・デメリットを解説!市販車はある?
(画像=『MOBY』より引用)

社外品のシーケンシャルミッションの価格

シーケンシャルミッションへの載せ替えの際は、社外品のシーケンシャルミッションを入手する必要があります。上で紹介したようなメーカーから購入できるほか、インターネットオークションやフリマサイトでシーケンシャルミッション用の部品が出品されているようです。

載せ替えの場合は、部品ではなくシーケンシャルミッションそのものを購入する必要があります。新品・中古品問わず、予算は40万~70万円ほどと考えましょう。もちろん、適合車種や状態によってはさらに高額になる場合があります。

社外品のシーケンシャルミッションの工賃

載せ替えをDIYで行えるのは一部の人に限られるでしょう。基本的にはカスタムショップや整備工場などに依頼することになります。

シーケンシャルミッションへの載せ替えは、既存のトランスミッションの取り外しとシーケンシャルミッションの搭載と、大掛かりな作業が必要となります。そのため工賃も高額になります。

部品代と工賃が比較的安価な「シーケンシャルシフター」

HパターンのMTミッション車なら、シフトレバーを前後に動かすだけでシフトチェンジが可能になるアイテム「シーケンシャルシフター」を取付けることができます。

シーケンシャルトランスミッションと同じく1速ずつのシフトチェンジが可能になるため、シフトチェンジをなくすことができるうえ、H型ミッションの上にシフターを取り付けるだけなので、シーケンシャルトランスミッションに載せ替えるよりも部品代と工賃を安く抑えることができます。

社外品のミッションに交換したら公認車検が必要

社外品のシーケンシャルトランスミッションへ載せ替えをした場合、車検証情報の変更が必要です。いわゆる、きちんと保安基準を満たした改造車であることを申請する「構造変更申請」で、「公認車検」とも呼ばれます。

公認車検は管轄の陸運局で行います。通常の車検とは異なり、事前に書類審査を受ける必要があるため注意しましょう。

書類審査に合格すれば、通常の車と同じように検査してもらい、問題がなければ新しい車検証が発行されます。新しい車検証の型式欄には「改」という文字が入ります。

カスタムショップや整備工場などが公認車検手続きまでを代行してくれる場合があります。その分、費用はさらにかかりますが、慣れていない人にはおすすめです。

文・MOBY編集部/提供元・MOBY

【関連記事】
【トヨタ ノア/ヴォクシー新型リーク情報】2022年フルモデルチェンジへ?エスクァイアは廃止か
高級車続々!新型デビュー・モデルチェンジを先取り!スクープ最新情報
運転免許証で学科試験の点数がバレる?意外と知らない免許証の見方
トヨタ 新型ヤリスクロスを徹底分析!購入時に失敗しないための情報まとめ
あおり運転を通報するには?通報されたら?厳罰化された罰則や対策方法も